第271話 お願いがあります。・・・くっ、もっとやっておけば。
「頼み。頼みかい。内容によるかな」
お願いを聞いて貰っても良いか、と問いかける私に対し、先生は若干疑問を浮かべたような声で返してきた。
「私のフリをして欲しいのです。明日」
彼の疑問を答えるために言うと、
「嫌だよ。そんな事」
すぐに返答をされてしまった。
(えぇ。酷い)
と心中で思いながら、
「お願いですよ。それに、先生にやって貰わなければならない理由があるのです」
先生に近づきながら言うと、
「なっ、何かな」
後退りしながら返された。
「先生。私は未だに忘れられないことがあるのです」
私が悟ったような声で言うと、
「へぇ、そうなのかい。それがどうしたんだい」
先生は更に後退りをしながら問いかけてきた。
「私、殺されそうになったことあったじゃないですか。実家に居たときに、魔法の練習のために近くの森に入ったとき」
ふざけた口調から何時もの声に戻し言うと、
「・・・そんな事あったっけ」
先生はガチで忘れたような声で返答をしてきた。
「・・・」
数秒間、私達の間には沈黙が走った。
重苦しく、気持ちの悪いタイプの沈黙だ。
「・・・えっ?マジで忘れてます」
雰囲気に耐えきれずに声を出すと、
「・・・・あっ、えっ、そんなわけ無いだろう」
明らかに嘘だと分かる声だった。
(何で嘘吐くんだよ)
と思いつつも、
「そうですか。分かりました」
思い出したと言っているので、説明せずに行くことにした。
「えぇと、ですね。私を殺そうとした奴。私はそいつに報復しようと思うんですよね」
歩きながら喋っていたせいで、服に若干躓く。
(イテテ。バレてないか)
と呟きながら先生の方を見ると、
「うーん」
唸りながら目を閉じていた。
(よし、バレてないな)
と思いながら、
「んじゃ。そう言うことで」
先生に言い残し、部屋から出てきた。
(まあ、返事聞いて無いけど大丈夫だろ。知らんけど)
私はそう思いながら、廊下をぐいぐいと進んでいった。
…………
っで、ご飯を食べて寝て、翌日休みの日が訪れました。
「ふぁあああぁ、ねっむ」
(地味に今日報復する相手に、ちょいと前に作った魔法撃とうかな。特攻技じゃない、前にしか進むことが出来ない火力高すぎる奴)
頭を回しながら、ベッドから滑るように降りて、適当な服を探す。
(あぁ、眠い。頭がー。頭が回らん)
欠伸をかみ殺しながら思い、服を脱ぎ捨てる。
「・・・地味にこの服。ダサいな」
ふと思った事を呟き、適当な服を再度探す。
「..うぅ。サッブ」
最近暑くなることも増えて気はしたが、流石に裸で居るのは寒かった。
結構ちゃんと鳥肌が立ってしまった。
「はあ、もうこれでいっか」
適当な淡い緑色の様な、よく分らないようなドレスを適当に着た。
「はあ、眠い。辛い。辛ーい。つらいよー」
眠気に対して呟きながら、時計をチラッと見る。
(まだもうちょっと時間があるな)
朝ご飯の時間まで結構時間が残っていた。
(何しようかな。隙間時間)
椅子に腰を下ろしながら考える。
あぁ、暇だぁー。やることがねぇー。
他の貴族達は何やってるんだー。
(本当に何やってるんだろう)
適当に考えた事を、ちょっぴり真剣に考えることにした。
暇なのだ。しょうがないだろう。
「うーん。勉強?」
一番ありそうなことを呟いてしまった。
(ちっ、失敗した)
心中で舌打ちしながらも、他にありそうな物を考えていく。
(何だろうなぁー。趣味とか、交友関係を広げたりしてるのかな────────)
…………
そんなこんなで、私は朝ご飯を食べ、
「先生!お願いしますね。逃げたら報復しますからね」
と脅しを掛け、実家の森に来ていた。
(いやあ、ワープの魔法は便利やなぁ)
心中で思いながら、
(アル元気かな)
(そう言えばお母様妊娠したらしいけど、大丈夫なのかな)
等々、弟含め家族のことを考えながら、
「広がれー」
と小さく漏らしながら、色々と改造した索敵魔法を広げていった。
ちなみにだが、どんな改造をしたかを纏めると、
・使用魔力量を10分の1
・相手の魔力を見えるように
・色が分かるように
・正確な位置が分かるように
と色々進化した。
(私も頑張ったんだ。沢山)
気絶したり、頭が割れそうになったり、色々あったことを思い出し、ふと、
(地味に私、だいぶ成長したな)
こんな事を思った。
(ワープの魔法も使いこなせるようになったし、創造魔法も闇魔法も大抵は出来るようになった。・・もしかして、私って天才か)
ふざけたことを呟きながら呟くと、凄く。すっっっごく嫌な予感がした。
「んっ」
ちょっとした予感に従い走る。
すると、さっきまで立っていたところに、なんと驚き魔法が突き刺さった。
(うっわ。ヤベ。これ、当たったら死ぬくね)
ふざけながらも、
(若干、・・かなりヤバい。こっちが相手の位置を特定してないのに、しっかりとバレてるみたい)
焦りの感情が湧いてきた。
(どうする。索敵魔法の範囲を広げるか。それとも、現状維持で避けるか)
頭を回しながら、周囲に防御魔法を張り、目視で索敵してみた。
が、まあ当然、目視をする意味はなかった。
(さて、どうした物かね。難しいな)
心中で思いながら、先程考えていたことの続きを考える。
(現状維持はやめた方が良いな。体力も魔力も有限だ。無限にあるわけではない。相手が未知数の状態なのだから、持久戦をやるのは危険だ)
二つ出した案の中の一つを潰し、
(魔法の範囲を広げるか・・・魔力が惜しい。・・・でも、今の状態でいる方が魔力の消費が高い。はず)
消去法で索敵魔法の範囲を広げることにした。
(くっ、こんな事なら、もっと必要魔力量下げておけば良かった)
若干の後悔を感じながらも、私は半径五百メートル程度の大きさだった範囲を、徐々に大きくしていくのだった。
面白い作品のタイトル思い付いたので、忘れないように+宣伝のために此処に書きます。
まあ、1文字も書いていないのですがね。
『桜前線北上中』
はい。終わり。




