第269話 茶会と、王室って凄いなぁ。
私は今、皇子殿下とお茶を飲んでいた。
面白みがなく、起伏もない、ついでに加えて意味もない。
私達はそんな会話をしながら、お菓子を食べたり、お茶を飲んだりしていた。
(あぁ、面白くねぇ)
心中で呟きながら、若干どもっている目の前の男の子のことを見つめる。
そしてすぐに、
(・・・それにしても、高そうな服着てるな)
どうでも良いことが頭に浮かんできた。
まあ、しょうがないことだろう。
何故ならば、彼の服は質素な感じには見える。
だが、滲み出るような気品やら、なんやらがある。
言い表し方が思い付かないので割愛するが、まあ、兎に角高級そうな服を着ているのだ。
(凄いな。子供にあんな高そうな服をやるなんて、やっぱり王室って儲かるんだな。どれくらい儲けてるんだろう)
私はその事が凄い気になってしまった。
(ブランドー領の何倍の収益出てるんだろ。バカみたいに発展してる帝都からの税収もあるだろうし、多分、帝国の色々な領からの税収もあるよな。一体、どれくらい儲けてるんだ。結構貴族多いはずだから、とんでもないよな)
私はそんな調子で、王室の収益を考え続けながら、適当に皇子殿下から聞かれたことを返したり、こっちからも時折、普通なことを聞いたりした。
(それにしても退屈だ)
収益を適当に予想し終えた後、私はそう考えながらお茶を口にした。
お茶も美味しい、お菓子も美味しい、雰囲気も良い。
強いて問題点を挙げるのならば、私はたいして皇子殿下と仲良くはない。
それに加えて、圧倒的に眠い。不眠気味だから。
「どうだ。最近」
私がゆっくりとお茶を飲み込んでいると、意味の分らない事を言ってきた。
(何がってのを言ってくだせぇ)
心中でふざけながらも、
「申し訳ありません。その、皇子殿下。どのことをお聞きになっているのですか」
無礼にならないように、言葉を沢山選びながら質問をすると、
「あっ、すまない。なんでもない。忘れてくれ」
皇子殿下は謝ってきた。
(何でもないって、何か問題のあることを聞こうとしてたのかな・・・私生活のこととかかな)
適当なことを考えつつも、適当に会話を続け、美味しいお茶とお菓子を食べた。
っで、自分の家に帰ってきた。
泊まっても良いよ、的な事も言われたが、自分の知らないとこで寝るのは嫌だし、それに多分、社交辞令的な奴だろう。知らんけど。
「ふひぃ。ねっむ。あぁ、気持ち悪」
欠伸をしながら呟き、脳裏に浮かぶイヤーな事を忘れるために、
「何かやるか」
と色々な事を考えた。
例えば、絵を描くこととか、遊びのこととか、前世のこととか、貴族のこととか、将来のこととか・・・まあ、色々と考えたわけです。
っで、結局イヤーな事を、脳内から追い出すことは出来たのか、それを聞かれると、私は声を大にして答えるだろう。
イエスと。
だが、まあ、何というのか考えた内容が失敗だった。
「・・・うぅん。なんか心配だな」
という風に、別の心配が湧いてきてしまいました。
(将来とか、前世のこととか考えなければ良かった。・・・いや、まだ前世のことは良いか。別に対した心配は・・・・ない。はず)
考えを改めて、
(将来の事なんて考えなければ良かったなぁ)
私はそう思いながら、適当に足をブラブラと動かした。
(はあ、将来。将来かあ。どうなるんだろう。私、大人になるまで生きてられるのかな。大人になったとして、私はどうなってるんだろう。結婚してるのかな)
と考え、
(嫌だぁ。結婚はしたくないな)
本当に嫌なので、言葉を漏らし、
「まあ、多分どうにかなるだろ。知らんけど」
楽観的な言葉を漏らした。
未だに一抹の不安はあるが、
(何とかなる予感もするし・・・)
私は小さく呟き、適当に積まれている紙を一枚手に取り、
「何かかーこう」
暇つぶしに絵を描くことにした。
(いやあ、久しぶりだなぁ)
と思いながら、適当にペンを走らせる。
今書いているのは、適当に猫だ。
「ふん、ふーん。ふーん」
適当に書いていると、線がぐちゃっとなったりもした。
だが、まあ、構わないだろう。
だって、別にこれは誰かに見せる物ではないし、ただの暇つぶしなのだ。
それに、私は完璧主義なんて病気には罹ってないからな。
そんなこんなで、
「よしっ、出来たー」
私は適当な猫が書かれた紙を手に取りながら呟き、
「・・・この紙、どうしようかな」
絵を見られるのは恥ずかしいので、処理の方法に頭を悩ませた。
(どうした物かな。しまう必要性はないし・・・燃やすか)
と考えたが、前回物を燃やした際に、絨毯に穴を開けた失敗が、頭の中を支配したので、
(どうしようかな・・・)
別の方法を考え始めた。
そんなこんなで3分間。
「よし、決めた」
私はこの紙の処理の方法を決めた。
紙の両端を持ち、千切って、千切って、千切った。
「よし。オーケェー」
元々、一枚の紙であったと言うのが、分からないほどに粉々に千切った紙屑の小さな山の前で呟き、
「えぇと、ぽい」
普通にゴミ箱の中に入れた。
(よし、もうご飯の時間かな)
窓から見える外の景色は、既に暗闇に染まっていた。
「あぁ、もうこんな時間か。早いな」
言葉を漏らすと、丁度よく、
『コンコンコン』
と扉が叩かれた。
「あっ、はい。今行きます」
私は叩く音に声を返し、急ぎ足で向かって行くのだった。




