第267話 お茶会にゴー
アーレー男爵家の領地に行ってから3日経った。
今日は、皇子殿下とお茶を飲む日だ。
「・・・・何処だっけ」
疲れた目を擦りながら呟く。
「確か・・・城だっけ」
若干、靄の掛かった頭を動かし考える。
「はぁ、面倒だ」
思った事を呟き、
「んっく」
欠伸をした。
「はあ、・・・・着替えるか」
学校の制服で行くのは、少しやめた方が良いと思い、ジャケットを適当に投げ捨て、邪魔なほどに大きなリボンを雑にとり投げて、シャツのボタンに指を掛けたところで、
『コンコンコン』
扉が叩かれた。
「・・・鍵閉めたっけ」
閉めたような、閉めていないような気がする。
・・・・記憶が引き出しきれない。
「すいません。少しお待ちを」
声を出しながら、扉に近づき、閉めていた鍵を開き、
「お待たせしました・・・アリアさん」
扉の前に立っていた人に言うと、
「ありがとうございます。お嬢様」
彼女は御礼を言い、
「何故、制服をお脱ぎになっているのですか」
と質問をしてきた。
「失礼かも知れないでしょう。お城にお邪魔させて頂くのですから」
質問の回答をすると、
「そうでしょうか」
若干、答え辛そうに返してきた。
「皇子殿下方に、こちら側がまるで対した準備をしていないように、制服のままでも良い存在だと見くびられていると、勘違いされるかも知れないでしょう」
懐疑的な彼女の声に返し続けた。
「こちらがたいした準備をしていないのは事実ですが」
(今の所、こっちがした準備なんて、ちょっと高いお茶を用意して貰う、ちょっと高いお菓子を読んで貰う程度だしな。流石に服くらいは変えておいた方が良いだろう)
と思いながら。
「そうですか...」
アリアさんは納得しているような、していないようなよく分らない声で返し、
「それではお召し物をお替えになるのをお手伝い致します」
と言いながら部屋の中に入ってきた。
「そうですか、お願いします」
(馴れたもんだな。こう言うのにも)
心中で彼女に言いながら、大人しく彼女の指示に従った。
っで、数十分。
着替えて、化粧も少し直され、アクセサリーも付けられた。
どんな格好かを説明すると、ちょっとだけ装飾が付いた、白いロングドレス。
アクセサリーは、先生から貰った紫色の宝石が、はめられている台座を、銀の鎖で繋いだネックレス。
それと銀の板に薔薇を彫り、紫とも青ともとれる宝石をちりばめた髪飾りをしている。
ちなみにの話だが、髪飾りは小さい頃に皇帝陛下と別れる日に付けていた物だ。
よく残っていたなと感心すると同様に、
「あの、アリアさん。これは少し、恥ずかしいのでやめても良いですか」
と言う言葉が漏れた。
(なんというのか、覚えられてないだろう。だが、流石にちょっとはずい)
と思いながら、髪飾りを指先で触っていると、
「お似合いですよ。それに、お嬢様の専属の方から、これがお気に入りだと言われていますので」
アリアさんはそう言ってきた。
(マリーちゃんのせいか)
と思いながら、
「でも、なんというのか」
言葉を続けようとすると、
「大丈夫ですよ。お嬢様」
妙にしっかりとした声で返された。
「・・・そうですか」
反論をするのが不思議と面倒に感じたので、適当に返事をした。
「そうですよ。本当に可愛らしいです」
アリアさんはそう言ってきた。
何か返事をしなくては、と思い、
「そうですか」
疲れたので、適当な相槌を打った。
…………
色々な準備が終わると、私は馬車に揺られていた。
右に左に、比較的優しく揺らされていると、私は強い眠気に襲われていた。
(辛いな。本当に)
眠りたくない私は、心中で漏らしながら目を擦った。
すると、
「大丈夫ですか、お嬢様」
同じ馬車に乗っているアリアさんは問いかけてきた。
(大丈夫じゃない、辛い)
心中で思いながらも、
「大丈夫です。問題はありません」
落ちそうになる瞼を必死に持ち上げ、彼女に返す。
不思議なことに、未だに心配の視線が降り注ぐ。
はあ、面倒くさい。
「本当に心配しなくても大丈夫ですよ。ちょっと眠い程度なので、安心してください」
心中で嫌気が差しながらも、適当な言葉を並べた。
心配されるのは嫌なんだよ。
(はあ、嫌になる。ただ眠いだけなのに)
と思いながらも、声には出さずにいると、
「お嬢様。少し眠りになられたらどうでしょうか」
当然の事を言ってきた。
(寝るのは・・・嫌だな)
と思った私は、
「大丈夫ですよ。そこまで眠いわけではないので」
結構大丈夫な様に見える表情で言うと、
「万全の状態を作るためにも、お眠りください」
彼女はこちらの目を真っ直ぐと見つめながら言ってきた。
(・・・・・何時まで見てくるんだ。・・・えっ、怖いんだけど。何時まで見てくるん)
何故か何時までも、私の事を見続け、目を逸らそうとしないアリアさんに若干の恐怖を抱き、
「・・・・わっ、分かりましたよ」
だいぶ怖くなり始めたところで、私は折れた。
(目瞑れば、バレないかな)
どうしても寝るのは嫌だったため考え、瞼を下ろし、寝ないように色々な事を考えていると、
「お嬢様。寝たふりではなく、ちゃんとお眠りください」
と声が掛けられてしまった。
(よく気づけたな。はあ)
ちょっと溜息を漏らしながら、頭を回すことをやめて、
(はあ、寝るか)
と小さく呟き、深呼吸をする。
1,2分後。私は深い夢に落ちていった。




