第259話 不思議な夢。夢であって欲しいな。
・・・・・・・・今、何時だ?
私は眠りから覚めた。
(微妙な時間に眠ったからか)
納得しつつも、瞼をゆっくりと開けた。
私の部屋は真っ暗だった。
多分、未だに夜だったのだろう。
(眠りが浅かったかのか)
心中で呟きながらも、
「はあ」
溜息をついて、無駄にしっかりと目覚めてしまった事に苛つきを覚えた。
「さて、何をした物かな」
小さく呟きながら、ベッドからゆっくりと降りて、近くにあった適当な椅子に腰を下ろした。
(はあ、特にやることがない)
心中で呟きながら、暗い部屋を見渡す。
だが、当然なことに何か新しい発見などするはずもなく、徒労に終わった。
「はあ」
(暇だ。暇すぎる)
と考えながら、学校に持って行っている鞄を手繰り寄せ、適当に蝋燭と、置く台を創り出した。
「えぇと」
小さく漏らしながら、火を創り出し蝋燭を点火させた。
(ハハハ。やっぱりこの創造魔法って奴は良いな)
揺らめく炎を見ながら呟き、手繰り寄せた本から借りた本を取りだし、読んでいたところを開いて、適当に読み進めた。
…………
「ふぁあ、眠い」
本の3分の2ほどを読み終えたところで、流石に眠くなってしまったので呟き、本に集中させていた視線を部屋に向ける。
・・・・部屋は既に明るくなり始めており、蝋燭は殆どが溶けて、あと3分も持つか分からない程度の大きさになっていた。
(案外持ったな。何時間くらいだ)
と思いながら、本に栞を挟み、鞄の中に入れ、
(面倒くさい)
ベッドに移動することにたいして、そう思ってしまった。
その為、私は現在座っている椅子で眠りについた。
浅い眠りになってしまうだろうな。
薄々感じつながらも、明日・・・今日も学校はあるので構わないだろう。
…………
私は不思議な事に森の中に居た。
不思議だ。多分夢だろう。
何たって帝都の周りには、余程の遠方ではなければ森なんてありはしない。帝都は平野にあるからね。
「・・・・」
不思議な夢だ。不思議な感覚になる。
ポワポワするような、押し潰されるような感覚がする。
「意味分かんね」
自分の考えに思いながら、適当に歩を進める。
何故か進めないといけないと思ったから。
進めと命令をされたような気がしたから。
一歩一歩踏みしめるように歩を進める。
その度に何故かは分からないが、辺りの景色は、夜になったり朝になったりと素早く移り変わる。
「ハッハッハ。笑える」
声に出しながら歩いて行くと、よく分らない平野に出た。
そしてその平野にはこれまたよく分らないのだが、私の屋敷。私が過ごしていたブランドー侯爵家の屋敷があった。
「何故だろうか。庭もなければ、柵もない。屋敷だけポツンとあるなんて」
と思いながら、私はその屋敷に歩を進める。
不思議と使命感がしたから。
進めと頭が警鐘を鳴らすように煩いから。
屋敷に近づいていく。
空は暗く染まったり、青く染まったりと賑やかだ。
頭が痛くなる。あぁ、気持ちが悪い。ガンガンする。
屋敷の扉を開く。
内装は私の知らない建物だった。
薄暗く重苦しい雰囲気が満ち満ちており、地面には若干汚れた赤絨毯。
壁紙は若干剥がれ掛け、窓には光を遮るように木の板が張り付けられていた。
「はて、此処は何処だ」
心中で呟きながら、適当にそこら辺にある椅子に腰を下ろす。
すると色鮮やかな埃が、自己主張をするように舞い上がった。
「ケホッ、ゴホッ、クッフ」
咳をしながら、変な色をした埃に驚いて目を見開く。
…………
私の視界には、見覚えのある絨毯、壁紙、ベッド、机、椅子があった。
「変な夢だったな」
心中で思いながら、絨毯に無様に広がる自分の髪の毛を見る。
「いつの間に、机から落ちたのだか」
と思いながら、若干眠いために思い瞼を擦り、
「ふっっん、ふぁあぁ」
欠伸をして、私が寝て、現在は倒れている椅子を立たせ、それに腰を下ろした。
「本当に変な夢だな。病気か?」
ちょっと自分の頭のことを心配したが、
(多分違うはず。病気はないはず。何にも)
と思って根拠はないが、感情で否定した。
「はぅ」
小さく欠伸をする。
流石に睡眠時間が少なすぎるのだろう。
嫌になるな。もっと寝ておけば良かった。
「はあ、あぁ、あぁ。はあ。つら」
呟きながら、適当に蝋燭を見つめる。
蝋燭に揺らめく炎はなく、既に消えていた。
(火。・・・・付けたままに寝るのは危なかったかもな)
と思いながらも、蝋燭を置いていた台を手に持ち、魔法で空に浮かせた。
そして、それに炎を付けた
(流石木製。よく燃える)
燃えている燭台を見つめる。
・・・・見つめていると、火の粉が落ちた。絨毯に。
(あっ、ヤベ。ちょっと燃えてる)
心中で焦りながら、急いで椅子から立ち上がり、落ちた場所を踏みつけ、急いで消化した。
(良かったぁ、本当に良かったぁ、間に合った)
穴が空いている絨毯に目を逸らしながら思い、燭台を浮かしていた魔法に質量を持たせ燭台を握り潰した。
既に燭台は、殆ど燃え尽きていたのか、燭台は一瞬にして潰れた。
「ハハハ」
笑いながら、私は考える。
(やっべぇ。穴開けた絨毯どうしよう)
と。
この頃には既に焦りのためなのか、眠気など吹き飛んでいた。
くっぅ。今度からは絶対に眠くても、絶対にやんねぇ。こんな事。




