第252話 あっ、お久しぶりです。ハハハ。 裏切り者め!
私は右往左往していた。
多分、端から見たらだいぶ可笑しい人だったと思う。
私だったら、たぶん絶対に関わり合いを持ちたくない、って思うくらいに。
・・・・・っで、でもさぁ、しょうがないんだよ。
私も、多少は悪いかも知れないけど、私は悪くないんだよ。
だってさ、先生に声を掛けようと思ってもさ、男子達がさ、ずっと先生と話し込んでるから。しょうがないんだよ。
(はあ、今日は無理かも、いや、かもじゃなくて、絶対に無理だ。無理に決まってる。明日に期待だ。もし、明日も駄目だったら、明後日、もし駄目だったら、明明後日)
心中で呟きながら、うなだれ自分の席に戻ろうとした。
すると、
「えっ、エミリー嬢」
久しぶりに聞く婚約者の声がした。
(・・・・・あっ、えっ、あっ、私か。私が呼ばれたのか。ぼーっとしてた)
心中で思いながら、
「あっ、はい。どうしましたか、カイル皇子殿下」
彼の顔を見ながら、かしこまったように言う。
(トーン終わってるな。はあ、適当すぎるわ)
自分の声のトーンに思う。
訓練が必要かも知れない。どんな状況でも、素晴らしく無感情の声を出す訓練が。
「君が、不思議な行動をしているから、その、なんというか気になったのだ」
若干、声が小さくなってたりして、よく分らない部分はあったが、多分こう言っていたのだと思う。
この子もコミュ障なのかも知れない。それなら同類だな。
(あっ、心配してくれたのか。ありがたいことだな)
心中で思いながらも、
「何と言いましょうか」
此処で区切り、少しだけ話すべきなのかどうかを悩み、
(まあ、良いか。別に不利益はないし)
と思ったので、
「先生に聞きたいことがありましたので、先生とお話ししている方々の話が終わるのを待っていたのです」
彼に返答をすると、
「何を聞こうとしているんだ」
若干緊張した調子で問いかけてきた。
(どうしてこの子は、緊張をしているのだろうか。緊張しい性格だっただろうか)
と思いながらも、声表情には出さずに、
「先生に図書館の場所を伺おうと思ったのです」
彼の質問に回答をすると、
「そんな事ならば、先生に聞かなくても、適当な学友、先輩方聞けば良いのではないか」
難しいことを言ってきた。
(・・・・この人はどうやら、同類ではなかったようだ。裏切られた。クッソぅ)
心中で思いながらも、
「先輩や、学友の皆様は、図書館の場所をご存じなのですか」
彼に問いかけると、
「多分知っているはず。だが」
ちょっと自信なさげだったように思える。
(ふむふむ。確証はないと)
「カイル皇子殿下は、ご存じでしょうか」
心中で非常に不敬で、多分不敬罪になるであろう事を呟き、問いを投げかけると、
「あっ、あぁ」
ちょっと自信なさげだが、多分子って居るであろう返事をしてきた。
(多分、知ってそうだな。うん)
と思い、
「それでは、良かったらなのですが、カイル皇子殿下」
此処まで声に出したところで、
(多分、今から案内して貰ったら、五限には間に合わないよな・・・明日お願いできないかな)
と考え、
「明日のお昼に図書館に御案内して貰っても構いませんか」
彼に言うと、
「もっ、勿論。構わないとも」
胸を張って返答をしてきた。
(胸を張る必要性はあったのだろうか。分からないな。私は)
心中で思いながらも、
「ありがとうございます。カイル皇子殿下」
頭を下げて御礼を言った。
(頭を下げるな、的な事を家では言われたが、多分この人には良いだろう。だって、私の、国家の君主である皇帝陛下の御子息なのだから)
私は頭を下げながらこういったことを考えていた。
順々な従者、婚約者としては、素晴らしく純粋で、尊ばれるほどの感謝を抱くべきなのだろう。
だが、まあ、私には難しいよ。多少の感謝の気持ち以外の感謝を抱くなんぞ。
(はあ、地味に私、何時まで頭を下げれば良いのだろうか?)
先程より永遠と頭を下げているので、頭を上げるタイミングを見失ってしまった。
いやあ、私、本当に馬鹿なのかも知れない。
・・・・マジで、どうするべきだろう。今、あげるべきなのだろうか?あげても良いのだろうか?分からない。分からない。本当に分からない。
私が頭を上げても良いのか、それが分からず、結構焦っていると、
「もう良い。頭を上げよ」
と皇子殿下は言ってきた。
「はい。分かりました。ありがとうございます」
彼に御礼を言い、
「それでは私は、次の授業の準備のため、お暇させて頂きます」
一瞬、チラッと見えた時計の時間的に、あともう直ぐ授業が始まるのでこう言い、自分の席に座り、次の教科の教科書を出し、ノートとその他を出し、準備をして、授業を受け、学校が終わりました。
…………
「いやあ、疲れましたねぇ」
誰に言うわけでもなく、部屋で独り言を呟く。
不思議と短く感じ、たいして疲れてはいないのだが、まあ呟けば、やりきって疲れたような気分になれるのではないだろうか、そんな浅はかな考えから声を漏らした。
「・・・・トイレ行こ」
たいして行きたいとは思わないのだが、勉強も魔法もモチベーションがなかったので、呟いた言葉だ。
(はあ、ホンマ暇だな。趣味でも、作ろうかな)
何十、何百回目かも分からない言葉を小さく漏らしながら、トイレまでの道筋を歩いて、帰ってくる。
結局、そこまでの尿意ではなかったし、別に良いかなって思ったから、特に何もしていない。
(はあ、本当に暇だな)
部屋まで帰っても、特にやることがないため、私は同じようなことを呟きながら、絵を描いたり、うたた寝をしたりするのだった。




