第236話 誤解を解くんだよ!はあ、めんど
「ハア。ハアァア~」
久しぶりに自分のベッドで目覚めた私は大きく、とても大きく溜息をついた。
何故なら、大変に憂鬱だからだ。
今まで先生に任せていた為に掛けられてしまった疑い、それを解消しないといけないからだ。
「起きるか。起きるか。うん。起きよう。嫌だな。ハアァ。ハア。・・ハアァ~」
自分の瞼に腕を乗せながら、溜息をつきながら声を出す。
(本当に嫌だ。なんか、なにもかも嫌だな。嫌になるホント)
心中で呟きながら、再度溜息を出そうとしたが、
「クシュン」
くしゃみが出て溜息が消された。
(あぁ、風邪引いたかもな。こんな暗い気分なのもきっとそのせいだ。はあ、めんど)
更に憂鬱な気分になり、二度寝でもしようか、と考え始めたが、それの言い訳を考えるのが面倒臭いため、
「ハア、起き上がるか。よし。起き上がるぞぉ。今に見てろよ。私は、、、絶対に起き上がるぞ。あと・・・二分以内には・・・いや、一時間以内には・・起き上がるぞぉ・頑張るぞぉ、私は頑張るんだぞぉ。うん」
どれ程言葉を並べようとも、起き上がるための気力が湧いてくることはなかった。
(ハア。もういいや。二度寝しよ。未来の自分がどうにかするっしょ。知らんけど。・・どうにか出来るはずっしょ、知らんけど。頑張れ、未来の私)
二度寝をしようと目を閉じる、するとそれを待っていたかのように、
『コンコンコン』
扉を優しく叩く音が聞こえてきた。
(はあ、マリーちゃんか。久しぶりに心中でも呟いた気がする、・・あぁ、めんど、、でも、動かないとだよな。私が私である為に動かないと)
頑張って体を動かした。結構目がシバシバする。
寝不足かも知れない。昨日、何時に寝たっけ。記憶がないな。
「はい。どうぞ、、お入りください。マリーちゃん」
頑張って這うようにして、椅子に腰を下ろした後、扉の前で立っているであろう人に声を掛けると、
「はっ、はい。失礼します」
と言う声が聞こえ、扉が開かれ、
「お嬢様。その、・・大丈夫ですか」
心配半分、疑惑半分の視線が刺さった。
(先生、結構疑われる真似したっぽいな。何をしたんだ。あの神様は)
心中で呟きながらも、
「大丈夫です。私は非常に元気です」
声を絞り出しながら彼女に返答をすると、
「お嬢様」
今度は心配が百パーセントの声で言われてしまった。
(どうして私、こんなに心配されてるんだか。意味が分らない。意味が分らないな。面倒臭いな。何をやったんだよ先生)
多分、心配を掛けている原因は、自分にあるのだろうが、先生に原因を全投げした。
「本当に、本当ですよ。・・・あっ、マリーちゃん。私、着替えたいので少しの間だけ、部屋から出て貰っても構いませんか」
未だに冷め切らず、靄が掛かっている頭を必死に回しながら彼女に言い、椅子から立ち上がる。
「お手伝いは大丈夫ですか」
と再度心配の声で言われてしまった。
(私、そこまで危うい感じだったかな。そう見えちゃったのかな・・自由解放軍での演技をし過ぎて、本当の私にも影響及ぼしたのかな)
色々と考えながらも、
「大丈夫ですよ。一人でも着替えれますから」
彼女に言った。
彼女は未だに私に対し、心配の視線を向け続けていた。
埒があかない、心中で吐き捨てるように呟き、
「本当に、本当ですから、出て行ってください。私は、大丈夫ですから」
と言いながら、彼女に近づき、彼女を部屋から追い出した。
色々、不平不満の視線はあったが、扉を閉め切り、鍵を掛けることでその視線を潰した。
「あぁ、ねっむ」
と嘘を呟きながら、自分の服に手を掛け、脱ぎ捨てた。
(どの服着ようかな)
と思いながら、クローゼットを漁る。
ふと、窓に映った自分の姿を見た。
「・・・うわぁ、そういやぁ、忘れてたな。・・・これ、どうしようかな。てか、これが商人のおじさんとかにバレなかったの奇跡だな。どうしようかな・・・誤魔化しとくか」
私の脇腹、それとその他複数の場所に、鞭で叩かれた跡がだいぶ、クッキリと残っていたのだ。
「いやぁ、こりゃあ痛々しいな。まあ、血が出るくらいで叩かれたし」
脇腹の傷跡を撫でながら呟き、
(さて、これはどうやって隠そうかな。肌の色に合わせた魔力を塗るか。・・それ以外は、多分出来ないよな。回復系統の魔法は、たぶん使えないし)
傷跡を隠す方法を決定した。
(えぇと、白色に少しだけ橙色を混ぜて、ドーン!完成)
雑な想像で魔法を作りだし、それを自分の傷跡の部分に被せた。
たぶん、しっかりと見られなければ、バレないと思う。多分だけど。
(よし、よし。良いできだな)
私がそう思いながら、先程まで傷跡が露呈していた箇所を触っていると、
『コンコンコン』
と扉が叩かれ、
「お嬢様ー着替え終わりましたか」
問いかける声が聞こえてきた。
(あっ、やべ。着替えとらんやん)
焦って呟き、
「すいません。もうちょっとお待ちを」
彼女に返し、急いで適当な服を選び、頑張って着替えた。
そのあとは、お父様とお母様に会って若干、心配の視線を向けられたが、なんか直ぐに安心したような視線を向けられ、同じようなことをロナルドや、アースベルト、師匠にもされた。
何でだろうね。先生ってそこまで私の演技下手だったのかな。
えぇと、そのあと例の奴隷の女の子とも会いました。
どうやらウィンズリー子爵家の長女でアンリマって名前らしいよ。
っで、先生を私と誤解しているのは確かなので、秘密を打ち明けることにしたよ。
「どうもおはようございます。アンリマ・ウィンズリーさん」
私は彼女を部屋に招き、扉に鍵を掛け、彼女に対面するように椅子に座り声を掛けた。
「はっ、はい。おはようございます。お嬢様」
独特な何とも言えない陰鬱なようで、違うような、人を引きつけ、話さない不思議な雰囲気の彼女に驚きながらも、
「約束をして欲しいことがあるのです。して頂けますか」
と突然言った。
「はっ、はい。勿論です。お嬢様」
「お父様にもアルにも、誰に聞かれようとも秘密ですよ」
「はっ、はい。分かりました」
(分かってるのかなホントに。それがよく分らんのだけど)
心中で思いながらも、ちょっと前に読んでいた猫の姿をした先生を膝の上に持ち上げた。
多少、抵抗されたが、そんな事は知ったことではない。
(どうやって打ち明けるべきかな)
迷いながらも、
「あっ、ちょっと目を瞑って貰って良いですか」
とお願いをする。
「はっい。分かりました」
不信感のような物を感じるが、彼女は目を瞑ってくれた。
(さて、どうした物かな)
私は心中で呟きながら、自分の髪の色を黒髪にして、
(さて、先生。私の心中を読んでいるなら、私の姿に変身してください。これはお願いです。してくれなくても構いません。ただし、報復はしますからね。・・あっ、変身したくないのなら、この子の記憶を消してください。私に関する記憶、先生に関する記憶、両方を最悪な物にしてください)
と心中で呟き、先生を床に降ろすのだった。




