第235話 お久しぶりです!先生
「こんばんわぁ~」
小さく呟きながら、腰を結構曲げ、泥棒のように私は、自分の部屋に窓から侵入した。
偶然窓が開いてるなんて、私、幸運かも知れない。
(誰も居ないな。先生もどっか行ってるのかな)
部屋の中に立ち、辺りを見渡すと、
「何やっているんだい。馬鹿なのかい」
私の事を侮辱する久しい声が聞こえてきた。
(あれっ、さっきそこに居たか。・・居たのか。声したし)
声がした方を向きながら心中で呟き、
「お久しぶりです。お元気でしたか」
と問いかけると、
「そんなわけがないね。僕は辛かったよ。君の真似をする生活はね」
椅子に座り、足を組み、私の事を見つめていた私の姿をした少女が、口を開いた。
「それ魔法ですよね、どうやってるんですか」
気になったので問いかけると、
「秘密だよ。やりたかったら君が、自分で頑張ると良いさ」
と返答が返された。
「えぇ、教えてくださいよ。久しぶりなんですし」
「嫌だね。だって僕に利益がない」
「何でもしてあげますよ」
「それでも嫌だね」
その後も問答は続いたのだが、先生の言葉は変わることがなかった。
諦めた私は、
「分かりましたよ。分かりました」
と言い、適当に自分のベッドに腰を下ろし、
「それで何かありましたか」
問いを投げかけた。
「何が?」
「いや、私のふりをして何か変わった事とか、特筆すべき物事はありましたか、って事ですよ」
「あぁ、そんな事かい。別に何もなかったよ。強いて言うなら、君が送ってきた例の奴隷は、君の弟の従者になったよ」
「へぇ、そうなったんですか」
(アルって今、確か1歳だよね。私より従者が出来るのはやいな。・・・あぁ、男の子だからか。まあ、確かに跡継ぎだしなぁ)
と心中で呟きながら、
「他には何もなかったんですか?」
心配なので問いかけると、
「ないよ」
短く返された。
「そうですか。疑われた、って事も一切なかったんですか」
「それはあったね」
「・・特筆すべき事あったじゃないですか」
「君の従者の二人、それと君の両親、君が師匠だって言ってた人間、・・・まあ、多いから割愛するけど、君に親しい人間には結構、怪しがられてしまったよ」
(無視されたんだけど酷くね。私、無視されたんだけど)
心中でそう叫びながら、
「そんなに多かったんですか・・・私って、案外親しい人には、ちゃんと見られてたんですね」
と驚きながら、感想を言うと、
「そうだね。僕はてっきり、君は結構嫌われてると思ってたよ」
何かスッゴい酷いことを言われた。
「酷くないですか。嫌われてるなんて」
「だって君、どっかに行く前は、従者の二人と、騎士としか話していなかったじゃないか」
「皆、忙しかったんですよ。特にお父様、お母様、師匠は」
「へぇ」
(なんか、この人・・神様、ちゃんと聞いてなくね)
先生のことを恨めしそうに見ながら言うと、
「あと君が、連れてきた奴隷は、ちょっと面倒なことになるかもだよ」
私から向けられている視線を無視して言ってきた。
「何がですか?」
私は、
(先生とメインに関わってたから、私が取って代わるのは難しい、的な事かな)
心中で考えながら言うと、
「それもそうだけど、別のことだよ」
久しぶりに心を読まれた。
「なんですか?」
(それ以外、何が考えられるんだよ)
と考えながら発言をし、
(心読まれるのホント不快な気持ちになるな。対策でもしようかな)
こう考え、先生の話を待っていると、
「正教会の連中が、あの奴隷の権利を渡せ、って要求しているのさ。今日だって来てたよ」
苦虫を噛みつぶした様な表情で言ってきた。
「えぇ、正教会って、ヒルビア正教会ですよね?幼児愛好者なんですか?」
「な訳あるわけないだろう。君は馬鹿なのかい」
「それじゃあどうして」
「あの子、多分、水神の血を引いているんだよ」
「そうなんですか?」
私は、
(確か、えぇと『水の神の落胤』だっけ。あれってガチだったんだ)
と思いながら問いかけると、
「だって髪の色を考えなよ。青色だよ」
気付かなかったことを言ってきた。
「えっ、そうだったんですか」
「えっ、逆に知らなかったのかい」
「はい」
「それじゃあ、どうして回収したんだい」
「えっ、あの、それは、なんていうか、利益があるかなぁ~って思って」
(へぇ、あの子って、髪の毛青色だったんだ。初めて知ったんだけど、なんで私、気付かなかったんだろう・・・暗かったからな。多分、うん、きっとそのせいだ)
心中で思いながらも、先生の反応を見ていると、
「君の馬鹿な話は置いといて、そういえば他にも、言っておいた方が良いことがあるかも知れないよ」
と先生は私に言い、続けた。
「正教会の連中は、どうやら君にも興味を持ったらしいよ」
気持ちの悪いことを言ってきた。
「どういう事ですか?」
「あの教会の連中は、特異な物、不思議な物、そんな物とかを神の生まれ変わり、神がもたらした奇跡だの言って、集める習性があるんだよ。だから、君の毛髪の色に興味を抱いたんじゃないかな」
「髪の毛って、お母様も一緒じゃないですか」
「君の母親は、歳的に考えて駄目だったんじゃないかな」
「・・えぇ、・・・なんか、スッゴいキモいんで、話変えて貰っても良いですか?」
「うん、良いよ」
ってな感じで、その後も適当な話が続き、私は睡眠を取った。
はあ、憂鬱だ。明日からは、色々な人の誤解を解いたり、色々をしたりしないといけない。
ハアァア~本当に、リアルマジで、本当に憂鬱だ。
多分、あと数話で第一部『転生少女』は終わりです。
次々回からは、予定では第二部『帝国学院』です。
予定では、主人公は結構、暴走する予定。まあ、学生の範疇は超えませんが。
第三部からは、本当に人道とか、知ったこっちゃってなる予定。




