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第234話 新聞と髪の毛の色

「ふむふむ」

 先程、紳士のおじさんから貰った新聞を読み、悩ましそうに声を上げた。

(地味に、今の可愛くなかった)

 と心中で誰かに言いながら、私はそれの中身をじっくりと舐めるように見た。


 一つ一つ全部、詳細に教えるのは、面倒だし、何か不思議と癪なので、私が気になった内容を教えよう。

 まあ、一つ以外、さして気になる内容はなかったが・・・よし、教えよう。


 結論から言うとすると、自由解放軍。カシワギが作った軍団が新聞では晒されていた。

 詳細な組織名、人物名があったわけでは無いけど、

『”アーレー男爵家”奴隷の反抗で崩壊か!?』

 という見出しと内容的に、カシワギの事だと思う。

 まあ、アーレー男爵家とやらが、私を買った奴らかは知らんけど・・・・


 えぇと、閑話休題。

 内容を説明すると、どうやらアーレー男爵家は壊滅。

 生存者は、民間人を含め誰一人としていないと思われるらしい。

 カシワギ達凄いな。私、あの時、あの人達に自分の身分を明かさない方が良かったかも・・・えぇと、話を戻す。


 面倒いので、続きの内容を纏めると、

『今、アーレー男爵家の屋敷、近くの街の状況は不明、だから反抗奴隷を撃滅する討伐連合軍団を募集中!!皆、志願して殺そうね。現状は、上位貴族の派兵もある。もしかしたら目にとまるかも』

 的な内容だ。


(大丈夫かな。カシワギ達は)

 私はそう思いながら、カシワギの居る位置を、去る前に付けた魔法で確認する。

 すると、彼はここら辺近郊に来ていた。


(あれっ、まさか、自由解放軍じゃないのか?えぇ、もしかして偶然、他にもあったのか奴隷の反抗が・・スッゴい偶然だな。奴隷の反抗ってそんなに良くあることなのかよ。将来、気をつけよ)

 心中で呟き、立ち上がりその後は、適当に歩いて暇つぶしをした。

 …………

 そんなこんなで太陽とはさようなら、月とこんばんはをする時間になりました。

「夜はまだ微妙に寒いな」

 自分の屋敷に繋がる森の中を、寒くないのに若干声を震わせながら呟く。


(あぁ、何か、緊張するな。不思議な事に・・・何か知らんけど、久しぶりに実家に帰る感覚だわ。前世でもあった奴・・・まあ、前世通りなら誰も居ないけど・・・・御父上は漏水で逝ったし、お母様は御父上が逝った後、旅に出るって言い残しどっか行ったし)

 心中で前世のことを思い出しながら、手と手をすりあわせ、摩擦熱を起こした。


「あぁ、寒い。震える」

 緊張やら、恐怖やらから滲み出る震えを寒さのせいにした。

 いまは、ほんのり汗が滲むほどの温かい夜なのに。


「ふぅ、落ちつけぇ、私。落ち着くんだ。そう、落ち着くんだ。そうそうそう。落ち着くんだ。私の心は、明鏡止水・・・なにいってんだ?私、馬鹿だろ」

 自分のよく分らない発言に思った事を呟きながら、痛くなり始めた胃を撫でた。


「うぅ、吐きそう。思い出す。面接を」

 口を押さえながら呟く、掌がちょっと濡れた。

「うわ、っきたね、馬鹿だ。私」

 唾で濡れたてを振り、服で拭いた。

 汚い?知らないね、そんな事は。


「ふぅ、落ち着くんだ私。そう、私は最強だ。最強で冷静で、何か凄い奴だ。だから、落ち着くんだ。語彙不足は否めないが、大丈夫だ。世の中はなるようになる。そんな風に出来てる。そう運ばれるように運命が定められているんだ。・・ふぅ、どうにかなるはずだ。きっと、うん。多分。メイビー」

 深呼吸をし、深呼吸をして、深呼吸をした。

 まあ、繰り返した。


「あぁ、泣きそう。なんか、ホント嫌になってきた。ふぅ、大丈夫だ。うん。私は大丈夫だ。大丈夫だ。人間なるようになる。私、人間か?と聞かれたら微妙だけど、心は人間だからきっとどうにかなる。うん、多分、本当に」

 さっきと同じようなことを呟き、目頭を揉んだ。

 なんか、涙でそうになったんだ。しょうがないだろう。うん。しょうがないだろう?私、涙脆いんだよ。嘘だけど。


「死にそう。マジ死にそう。今の緊張度100パーセントくらいだわ」

 深呼吸をしながら歩く。


 脂汗のような、冷や汗のような物が流れる。

(これが多分、冷汗三斗というのだろう。人生で・・・二回の生で初めて経験するかも知れない)

 心中でそう思いながら、

(地味に髪の毛の色戻さないと)

 と忘れていたことを気付いた。


「もう戻しても良いかな。・・・いやぁ、さようならか、黒髪とも・・・・そうだなぁ・・・いつかまた黒髪にしようかな。えぇと、学校を卒業して、そのあと旅に出たりして・・いや、地味に私って結婚しないといけないのか。嫌だぁ~な、私、旅に出られないじゃん。一生同じ場所で縛られて死ぬまで何て嫌だよ」

 と今後の予定を考えながら、前髪を触った。


「よし、変えるか」

 呟き、動かし続けていた足を止め、髪の色を染めていた魔法に被せるように、白い色を持たせた魔力を掛けた。

「ちょっと不自然かもだけど、染めてるだけだから、時間が経って、髪の毛生えたら元に戻るし、ヨシッだな」

 月光に照らされた私の毛髪は、若干、見続けていた私だからこそ分かる、そんな程度の違和感があった。

 だが、まあ、誰も気付かないことだろうし、気にしないことにした。


 髪の色を変えた後、ちょっとだけ自分の毛髪の色を心配しながら、私は自分の家に帰っていった。

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