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第232話 帰還それとありがとう名も知らぬ屍よ。

「行くか。流石に」

 昨日使った焚き火の名残を踏み消し、少しの間、木の葉から覗く太陽を薄目で見た後、立ち上がり呟いた。


(今日も誰ともすれ違わなかったら、結構ヤバいよなぁ、最悪ワープ魔法で自分を飛ばすことに・・・嫌だよな。失敗とかしたらクッソ怖いし)

 小さく欠伸をしながら心中で呟き、沢山の往来があったことを想像させる道に出て、昨日も歩いた方向に適当な事を考えながら歩き続けた。


 道中足を痛めたり、挫いたり、転んだりしましたが、私は元気なので大丈夫です。はい。本当ですよ。ちょっと涙を流したくらいです。痛みに。


 まあ、そんなこんなで数時間歩き続け、

「ねぇぇぇ!なんでさ。なんで誰も居ないんだよぉぉ」

 吐くように漏らし続けた。


 足はとっくの前に棒になり、足の裏からは響くような痛みが私の体を貫き続けた。

「ああ、もう嫌だ。イライラする。更年期か?な訳ないけど」

 意味の分らない事を喚くほどには可笑しくなっていた。

 私は大丈夫なのだろうか?・・まあ、多分否なんだろうな。はあ。


 まあ、それでも歩き続けた。立ち止まったとしても現状が好転するわけがないのだから。

「あぁ、もう嫌だ!もう嫌だ!足痛い。特に足裏。ホントやだ。ホントあぁぁ、もうあぁ。はぁ。疲れた。疲れたよぉ」

 特に誰にも聞かせるわけではないし、聞かれたら恥ずかしい言葉を吐くように出し続けた。声を出すのをやめたり、思考をやめたりしたらなんか、すっごい頭が可笑しくなりそうな気がしたからだ。不思議だね。ホント不思議。可笑しくなったのかな?いや、昔から可笑しかったから悪化しただけか。


「ハハ。馬鹿みたいだな。私、何思ってるんだ。馬鹿なのか」

 意味の分らない文章を頭に浮かべ歩いた。日は陰り始め、遠い遠い無限に続くかのように思える地平線は赤々と茜色に染まっていた。


「今日も。今日もか、今日も駄目なのか。そうか、そうだよな。天罰か、ハッハッハ笑えてくる。笑えてくるよ。ホントに笑えてくるよ。ハハハ。はあ」

 本日何度目なのか分からない溜息を吐いた。

 もう嫌になるよ。全てが。歩くこととか、息をすることとか、頭を回すこととか、生きることとか。


「はあ。駄目だ。だめ。病み始めてる。あぁ、うん。駄目だ駄目。危ない。うん。危ない」

 病んでいるかのような心情に声を漏らし、頬を叩いた。全力で。

『パンッ』

 と鋭くて、うるさい音が響き、

「イッてぇ、あぁイッてぇ。あぁあ、ううぅ。イッてぇ。マジ痛ぇ。あぁ、なんで私、全力でやったんだ。馬鹿だろ」

 自分の馬鹿を呪った。


「はあ、ねっむ。もう遅いし寝る準備するか」

 と呟き、道から草が生い茂る草原に逸れ、辺りの草を千切ったりして、寝る場所と焚き火を作った。


『パチパチ』

 小さく音を立てながら、小さめな炎を上げる焚き火を見ながら、

「火付けるの。少し上手くなったかもな。今回、火傷してないし」

 声を漏らし、

(もう寝ても良いよな、でもなぁまだ早い気がする。だってまだ太陽沈みきってないし。月が出たら寝よう)

 と考え、適当に思考を回し声を出した。


「合ってるのかな?私が行ってる方角って。どうなんだろうな?分からない。一切合切。なにもかも。分からない。地図とコンパスがあれば・・・コンパスは地味に作れるな。・・・でも、領地の正確な方角が分からないし、意味ないよな・・いや、意味はあるのか?・・・・分からないな。誰か、教えて欲しいよ。・・・無理だけど────」

 その後も、今後実行するこのとのない用事を考えたり、色々と考えたりした。

 そして太陽は、地平線の元に沈みきり、月がこんばんはしてきた。


「お休み。世界。・・・明日も無事でありますように、頼みますよ。どっかにいるのでしょう?神様ってものは」

 たぶん居るはずの存在に祈るように声を漏らし、

『パチパチ』

 と弾ける音を聞きながら、暗い闇に思考を落とした。

 …………

 次の日。私は目覚め、そして色々考え歩いた。

 誰とも会うことは無く、また眠りについた。


 次の日。誰とも会えることはなかった。

 自分の不幸を呪い、カシワギ達を騙した事とか、色々な嘘が返ってきたのではないか?と考え眠りについた。


 次の日。可笑しくなりそうだ。正気じゃない。

 一体何キロ歩いたんだ?普通に考えて可笑しいだろ歩いた距離、やっぱ運命とかそんな物はクソだ。ゴミだ。そして、運命なんて物を定めてる者。神もクソだ。きっとそうだ。


 次の日。人と会えた。嬉しい!やった。やった。寝てるのかな?動かないけど。確認してみよう。・・・・・・・勘違いを呪った。人だと思っていた者は、道半ばで力尽き異臭を放つ腐乱死体となった傭兵かなんかだった。


 次の日。腐乱死体を埋めた。因果応報が存在するとするならば、きっと自分に良いことが返ってくるはずだ。返ってこなかったら、神の存在を否定してやる。


 次の日。やった。今回は生きてる人間と出会えた。出会った人間は行商人で、これからブランドー領の中心都市で、公益をするらしい。私はどうにかこうにかして乗せて貰った。ナニをしたかは秘密だ。本当に秘密だよ。本当に本当。


 次の日。行商人の馬車の中で眠った。正直、眠りづらかった。馬車の揺れとか、行商人のおじさんの笑う声がうるさかったし・・・せめてさぁ、ウッハウハだからってさ、もうちょっとまともな笑い方した方が良いと思うな。私は。


 三日後。着いた。私は帰ってきた。此処に、お父様の領地に、ブランドー領に、

「ヒャッホー」

 と意味の分らない事を叫び、行商人のおじさんに変な目で見られたりした。恥ずかしい。・・・地味に、本当に因果応報って存在するんだね。名も知らぬ腐乱死体よ。貴方のおかげで善行を積んで、此処に戻ることが出来ました。ありがとうございました。でも、神様。お前は信じない。

主人公が行商人のおじさんにナニをしたのかは秘密です。

でも、まぁ多分、次回明かすと思います。多分。未定だけど。

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