第230話 ちょっとした交渉ごと
「どうですか?協力関係を結んで頂けますか?」
私がいつまでも、黙っている彼に言うと、
「・・断る。信用ができない」
と言われてしまった。
(私と貴方の仲じゃないか)
心中でそう呟きながら、
「そうですか、残念ですね。・・・信用ができない私は、偶然、貴方達のことを、話してしまうかも知れませんね」
残念そうに言うと、軽蔑したように見られ、
「クソ野郎」
と暴言を言われてしまった。
心外な。
「まぁ、冗談ですよ。私が言うわけないでしょう?私は、貴方のこと結構好きなんですよ」
と特に感情を乗せずに声に出し、彼に言ったあと、
「それに貴方達にも利益はありますよ。win-winなんですよ」
笑ったような調子で言うと、
「どういうことだ?」
彼は疑問の声を上げた。
「貴方達は、一般の評価で言うとただの『蛮族』であり、その行為に正義など見出されることはありません。当然ですよね」
「それがどうした?」
「世間一般は、こう考えるでしょう。『蛮族が貴族を襲い、敗走した』と」
彼は苦虫を噛み潰したよう表情をした。
(ハハハ、なんか私、スッゴい悪人だな)
「もし私が、こんなニュースを聞いたならば、直ぐに動くでしょう。蛮族を、貴方達を皆殺しにするために。戦果だって欲しいですし、何よりも、貴族を襲ったのです。それ相応の報復があるのは、当然です。私達は一応は、同族意識はあるのですよ?人間を支配する物として」
私が彼を、体を動かしながら言うと、
「何が言いたい!」
強い口調で言ってきた。
(馬鹿なのかな)
と思いながらも、声に出さずに、
「貴方達は、多分このままでは、全滅でしょう。ですから、私が助けてあげましょう。と言っているのですよ」
彼の質問に返すと、
「お前の助けなんて、いらない!」
怒鳴られてしまった。
(まぁ、当然か、交渉ごとはやっぱ下手なのかもな。それに、切り出しが悪かった。まぁ、しゃあない。しゃあない。これは反省しないとな)
心中で思いながらも、
「感情に任せ判断をすると、更に被害を増やすことになりますよ?そうです。貴方に、時間を上げましょう。5分間です。5分間で考えてください」
と時間を与えることにした。
…………
彼は私の事を睨んでいたが、まぁ、その視線を無視し続け、5分が経ち、
「それで、考えは変わりましたか?」
と問いかけると、
「お前と協力関係を結んだとして、僕達に何の利益があるんだ」
憎しみが籠もった視線は、刺さり続けるが、声は理性的だった。
「そうですね。武器の提供。それと、貴方達を守ることができると思いますよ」
「具体的に、どうやって守られるんだ?」
「そうですね・・・保護なんてどうでしょう?」
「どうやって?」
(いやぁ、全然考えてなかったなぁ。精神弱ってた臭かったから、そのまんま飲み込んでくれると思ってた)
「私は上位貴族ですよ。貴方達を守ることくらいできるでしょう」
「その具体的な方法を聞いているんだ」
再度怒鳴られてしまった。
(あぁ。あぁ。面倒いな。交渉カードとして嘘を使ってるせいで、難しくなってるのかな)
心中で呟いた後に、続けて、
(多分、彼らの事なんて、誰も気にしないだろうに。だって、屋敷の規模、街の規模から考えて、奴ら弱小貴族だろ。それに、多分、あそこの貴族さんは、無駄に着飾っていたことを考えて、多分、反乱が起きてもそれを、誰かに伝えること何てないだろうし、そてにバレたとしても、誤魔化すだろう)
と適当な予想を心中で呟き、
「私の親には、当然領地があります。昔見た地図には、小さな村があったんですよね。そこで、活動を行ってみるのはどうでしょう?まぁ、活動は制限されるかも知れませんが、規模の拡大の潜伏には有利だと思いますよ」
彼に説明をする。
「それで、お前の利益は?」
(今の説明で納得してくれたんだ。驚きだわ)
「私の利益ですか、あぁ、それは、私の協力者として、ちょっとだけお願いを聞いて貰いたいんですよ」
「どんな物だ?」
「それは未定です」
「それじゃあ、難しいな」
彼は笑ったような声で言ってきた。
(他にも、荒あったけど、此処刺されるか)
と心中で、呟きながら、
「じゃあ、言いましょう。貴方達には、私の協力者として、情報の収集をして貰いたいんですよ」
言ったら、やってくれなさそうだな、と思っていた目的を話す。
「なんの情報の収集なんだ」
「宗教ですよ。私が不信感を抱いてるね」
「それは危険すぎるような気がするぞ」
「まあ、そうでしょうね。でも、子供だけで、各地を転々として動く方が、危険だと思いますよ?それで、どうします?私の協力者になってくれますか?」
(これで、もし断られたら、縁がなかったんだな)
と思いながら、最後の問いを投げかけると、
「あぁ、分かったよ。僕達、自由解放軍は、お前の協力者になってやる」
ありがたいことを言ってくれた。
(まぁ、対等じゃないし、公式でもないんだけどね)
と思いながらも、
「そうですか、ありがとうございます」
こう御礼を述べた後に、
「あぁ、そう言えば、名乗りを忘れていましたね」
やり忘れていたことを、呟き、
「私は、エミリー。ブランドー侯爵家の娘。エミリー・ブランドーです」
と名前を名乗ると。
「そうかよ」
ぶっきら棒に返され、
「っで、僕達は、何処の村に定住すれば良いんだ?」
と質問を返されてしまった。
(酷い。もっと、何かちゃんと返してくれても)
心中で思いながらも、服の中に手を突っ込む、創造魔法で小さく畳まれた。地図を取り出した。
(・・・・これくらいの大きさなら。一応は、現実味出せるよな。まぁ、多分)
と思いながらも、それを広げ、
「此処です」
地図にある村に指を指すのだった。
何か、驚かれているような気もするが、そんなの気にしない。気にしない。
主人公の発言。可笑しくなってるかも。ごめんね。
前回、今回の主人公の発言のまとめをすると、
『お前、私の味方になれ。ならなかったら、どうなっても知らないよ。もしかしたら、私が漏らしちゃうかも、貴方達のことを』ですね。はい。だいぶ、クズに感じますね。




