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第221話 『裏切り者には死を』声高々に叫ばれた

12時に閑話出る

『あぁ、やっと死ぬ』

 僕の頭の中は、そんな安堵の気持ちに満たされた。


 裏切り者が、仇がもう直ぐ死ぬと言うのに、案外湧かない実感に、焦燥感のような物を抱きながらも、

「これにて、裏切り者が、貴族に媚びを売る我らの敵。ノラの裁判を閉廷とする」

 声高々に叫び続けた。


「裏切り者には死を。屈辱的な死を与えよ」

 下した決断を、声に出した。

「うあぁ」

 と聞こえてくるような、狂気に飲まれた参道が帰ってきた。


「レナード。貴方の仇がもう直ぐとれるよ」

 小さく呟き、僕は、テントの中から、レナードがかつて、

「これ見ろよ。例の奴らから貰ったんだ」

 と言い、僕に見せびらかしてきた、剣を取り出した。


 僕の身長的に、少しだけ多く感じるが、それでも構わない。

 重要なのは、レナードの所持品で屈辱を、苦しみを与えて殺し事なのだから。


 テントから出て、少し移動し直ぐに叫んだ。

「今より、断罪を与える。ノラを今この場に連れて来い」

 弁護人はいず、自己弁護も許さず。

 そんな状況で行われた裁判の様子を思い出すと、笑みがこぼれてくる。

 これこそが、復讐だ。これこそが。これこそが。


「もっと丁寧に扱いなさいよ」

 その声が聞こえ、仲間に、自由解放軍の同胞に背後から押されたノラが、連れてこられた。

 現在、僕と彼女を取り囲むように、人が集まっている。


 あぁ、屈辱的だな。これこそが、多くの人々に囲まれ、誰にも助けられず、見捨てられそして、無様に殺される。これこそが、これこそが、復讐に。彼女の死に似つかわしい。


「何か言い残すことはあるか」

 礼儀的に問いかける。

 だが、彼女は、何も答えることはなく、僕の後ろをただ見つめた。


 何故。何で。何を見ている。

 僕は、憤慨のような気持ちで、彼女の視線の先を追う。

 すると、そこには、何の変哲も無い、狂人(アリス)ほどの背丈をした栗色の髪を持った女がいただけだった。


(助けでも求めてるのか)

 と思いながらも、俺は、彼女に近づき、小さく、観衆には聞かれないような声で呟いた。

「お前の弟も俺が必ず、殺してやる。裏切り者の汚れた血を引く物もな。必ず」

 彼女が、レナード達を密告し、守ろうとした物の一つをあげると、

「やっ、やめて、それだけは」

 今までに聞いたことがないほどの、悲鳴のような声を彼女は出した。


「ククク」

 あぁ、笑えてくる。お前は、それを言った人間の何人を密告し、殺したんだ。屑野郎が。


「今より彼女は、永久に続く地獄に落ちるだろう。『裏切り者には死を』」

 と叫び、地面に押さえつけられている彼女の、細い首に剣を振り下ろした。


 辺りには、僕が言った『裏切り者には死を』と言葉や、単なる暴言が木霊し続けた。

 まるで彼女の魂を掻き消すほどに。

 ・・・そして、彼女の胴から離れた頭は、僕の事を冷たく見つめた。


 スッキリしない憎悪を見つめながら、小さく声に出さず考える。

 これでもう後戻りは出来ない。

 後は、進みだけだ。何を犠牲にしても。何人の犠牲出しても。誰が死んでも。

 ___________

 彼のカシワギの演説は、とても印象的だった。

 人を引きつけるような”何か”があったような気がした。


 ・・・だが、今は、彼に対して、”狂っている”印象を抱いた。

 彼は、ノラを殺したのだ。


 ノラは、私を見つめていた。

 あれは、助けを請うような視線ではなかったような気がした。

 憐憫でも、何でも無く、諦めたようで何処か、諦めきれないようで、尚且つ、しょうが無いと思っているように見えた。


 私も、ノラが死んでしまうのは、しょうが無いと思っている。

 だが、彼女の死で高揚感のような物を得ている、カシワギを含む人々は、違うのではないか。狂っている、可笑しくなっているのではないか。と思わざる終えなかった。


(そう言えば、アリスは何処に行ったのだろう)

 私は、演説をしているときには居たが、いつの間にか居なくなっていた彼女のことが心配になり、視線を左右に動かし、探したのだが結局見つけることは出来なかった。


(此処から移動して何処かに行っちゃったのかな)

 と思いながらも、私は、彼女を探すことは無く、絨毯のように広がる鮮血を見つめた。

 そして、心の中で、

(貴方の作った狂った世界は終わっちゃったよ・・・でも、また新しい狂った世界が始まっちゃった)

 と思ってしまった事を小さく呟いた。

 ___________

「・・・・何で、こんな早く起きちゃうんだろうな」

 可笑しな現実から目を逸らすために、睡眠を取った私は、辺りに誰も居ない状況からそう呟いた。

 遠くからは、熱狂のようなそんな声と、凶悪なまでの狂信のような物を感じた。


(あぁ、これはもう、進んじゃったんだな。もうやり直しはきかないんだな。これで、革命の灯火は、小さかった火は、全てを焼いて壊して、絶望を呼ぶ大きな、大きな炎になっちゃったんだな)

 朦朧とした頭で、柄にもない意味の分らない言葉を呟きながら、

「成功するのかな。この革命は」

 未だに分からない事を呟き、立ち上がった。


 色々とカシワギに。・・・自由解放軍最高司令官殿に聞いておきたいことがあったからだ。

 例えば、私の魔法を封じ込めている、例の奴隷紋を解除する方法とかをね。

 あぁ、これでやっと私を縛る鎖を千切ることが出来るよ。

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