第217話 正義の執行
「何です
元気よく私の名を呼んだ人間に声を返すと、
「アリスちゃんが、何やってるのか気になったの」
彼女は、寝転がっている私の側に腰を下ろした。
「そうですね、・・・色々と考えていたんです」
と私が彼女の質問に返すと、
「へぇ、どんなこと」
詳しいことを聞いてきた。
(・・・教えなくても良いよな。別に)
こう考えた私は、
「秘密です」
と暗い天井を見つめながら言うと、
「えぇ、教えてよ。アリスちゃん」
何故か気になる彼女は、私に言ってきた。
「・・駄目です」
こう言うと、
「どうして」
面倒くさい質問を投げられてしまった。
(さて、どうやってこれに対し回答をしようかな。どうしてか、どうしてかね。どうしてだろうな・・ただ教えたくないだけなんだよな)
彼女に対する回答を考えついたので、
「秘密にしたいからです」
こう言うと、
「そうなんだ」
不満のような物を漂わせながら言ってきた。
「私、少し眠りたいので、何処かに行って貰っても良いですか」
私が彼女を追い払いたかったら言うと、
「此処で眠っちゃうと危ないよ」
心配の声音が聞こえた。
「・・・そうなんですか」
(どうして)
と思いながらも言うと、
「だって、・・・」
彼女は、此処まで言ったところで、私の耳に口を大変近づけ、
「此処の人はね、人を襲って、暴力を振るったりね、その、何て言うか、そのエッチなことをしたりする人が居るの」
少しだけ恥ずかしがりながら言われてしまった。
「そうなんですか・・・じゃあ、ちょっと移動してから寝ますね」
と彼女に言うと、
「うん、分った。それじゃあね。私は、お仕事に戻るね」
こう言いながら、何処かに走って行った。
「・・・・どうしようかな、本当に移動しようかな」
周囲を見回しながら呟く。
私の周りには、少ないが、多々体格の良い少年が集まっていた。
(これは、危ないな。流石に、力で負ける・・・魔法が使えたら)
恐怖を抱きながらも、心中で呟き、適当に昨日も寝た場所に歩いて行った。
(はぁ、気持ちが悪いな。人を襲って何の利益があるのやら。もっともっと、やるべき事はあるだろうに、その腐った性根を治すとか)
先程見た少年達にそう思いながらも、壁に背をくっつけ、先まで見えない薄暗がりを見つめた。
「・・・さてと、何をやろうかな」
特に何もやることがないので、呟き、考え始めた。
(本当に何しようかな、魔法が使えたら練習できたのに)
と考えながらも、
(・・・彼、カシワギの恨みの原因を聞き回ってみるか)
適当な暇つぶしの方法を思い付くことが出来たので、私は、立ち上がり色々な所を歩き、沢山の話を聞きに行くのだった。
…………
って事で、沢山の人に話を聞きました。
目が虚ろの人や、「アウ、アウ」とかしか発しない人や、延々に泣いている人含め、沢山話を聞いた結果。
多分、カシワギの恨みの原因が分った。
まずカシワギのノラに対する物は、『復讐』で間違えなさそう。
っで、どうしてそんな事が会ったのか、順を追って説明すると、まず最初にカシワギ率いる、『自由解放軍』の前身があったらしい。
その前身は、『貴族』に支配されていた『奴隷』や『市民』が打倒し、『奴隷』や『市民』が『貴族』を支配する平等で平和の世界を作り出そう。場合によっては暴力も厭わない。
といった結構、微妙に真っ赤な思想を感じさせる団体である、『革命赤軍』ってのがあったみたいなんだよ。
革命赤軍ってだいぶ、怖い名前だよね。
何か、名前的にも思想的にも、何か本当に、共産主義ていうのか、マルクス主義って言うのか、そういう赤い主義を感じさせる。
まぁ、何か貴族を下に見る主義も入ってるけど。
っで、その革命赤軍は、『レナード』って人物に率いられていたらしい。
勿論、カシワギもその組織に入って、レナードにだいぶ好意を寄せていたみたい。
どれくらいかというとね、ずっとレナードの後ろを付いていくくらいには。
レナードは、どうにかして『自由解放軍』の規模よりも大きい、組織を作り出したらしいんだよね。具体的には、8か9割くらいを革命赤軍に飲み込んだらしい。
っで、そうして色々した後に、遂に革命を起こそうとしたところの前日に、ノラに革命赤軍が貴族に密告され、まぁ、何て言うか。・・難しいんだけど、レナードを含めて何人かが連れて行かれて、それ以降帰ってきてないらしい。怖いことにね。
(さて、此処まで知ったところで、私は、どうした物かね)
心中で呟きながら、悩んだ。
彼の復讐に反対意見を言うべきなのか、それとも協力するべきなのか、静観するべきなのか。
どうすれば良いのかを考えた。
(うん、まぁ、復讐で殺そうが構わないんだけどさ。どうせ、人間なんて動物は何時か死ぬんだし、ノラのせいで何人か死んでるわけだし、でもなぁ、会話をしたことのある人間が死ぬのは、流石に後味が悪いんだよなぁ。どうするべきかなぁ)
悩みに悩み、悩み抜いた。
結果、
(まぁ、いいや。復讐って言うのは、別に悪いことじゃないし、殺人は悪いことかも知れないけど、裏切り者を殺すんだ。それは、正義だろう。正義の名の下にある殺人は、正義の執行に他ならないのだから。それにマイナスの感情がゼロになる可能性もあるしな。まぁ、そのせいで生きる目的を失う人間もいるが、最悪そうなったら、私が乗っ取るか、誰かにリーダーを任せれば良い。・・・地味に、カシワギがどんなことを思っているのか気になってきたな、後で聞いてみよ)
と考え、彼の復讐を静観することを決めるのだった。




