第213話 謝罪と質問
「あっ、そっ、そうね」
私に抱きついているイレーネは、
『離れて貰って良い』
と言う私の発言を大人しく聞き、焦ったように離れた。
「あの、その、すいませんでした。その、泣いちゃって。その、ごめんなさい」
既に何度も、何度も漏らした気がするが、謝罪の言葉を口にする。
「だっ、大丈夫よ。私が、悪いことを聞いちゃったせいだし」
彼女は、申し訳ないと言った様子で私に言ってきた。
(あぁ、何か、変な事思われてないかな。私が過去に異常なトラウマを持ってる、って思われてないかな。多分、思われてるんだろうなぁ。あぁ、このキャラのせいだ。私が、あぁ、もう)
心中でそう呟きながらも、
「その、イレーネさんは、悪くありませんよ。その、私が、その、私が最初に同じ事を聞いたのですし」
と声を返すと、彼女は一瞬、驚いたような顔をした後、
「大丈夫よ。貴方は、悪くないから、私が全て悪いのよ。だから、安心してね」
彼女は、意味が理解しがたいことを言ってきた。
(・・・どういう意味だ。最初に私が質問をし、彼女が同様の質問をしてきたわけだから、私も悪いと思うんだが、てか、普通に答えられそうなものを答えられなかった私は、だいぶ悪いと思うんだけどな)
こう思いながらも、彼女の真意を考えた。
そして、
(・・・もしや、再度私が、混乱すると思ってるのか。それ以外考えられないよな。だって、・・まぁ、私のせいだよな)
彼女が、私を心配させないようにそう言ったのだ。
と結論づけることにした。
「その、ごめんなさい。イレーネさん。その、私が、その、悪いんです。その────」
私が、寝起きのせいなのか、先程までの精神異常が続いているせいなのか、どちらかは分らないが、纏まらない頭で、纏まらない言葉を必死に手繰り寄せ、声に出そうとしたのだが、
「大丈夫。大丈夫よ。何も心配しなくても良いの」
彼女は、そう言いながら、膝をつくようにして頭の高さを合わせ、私の発言を邪魔するように抱きついてきた。
(・・・彼女も言うんだし、責任転嫁しようかな...でもなぁ、流石に、それはないよなぁ、うん。流石に、許されんよな)
そう前世の自分の年齢、今世の自分の年齢を合わせた数を思いながらつぶやく、
「イレーネさん。その、イレーネさんが私の心配をしてくれるのは嬉しいです」
彼女に遮られる可能性も考慮しつつ、少しだけ口調を強くしながら言った。
すると、驚いたような何とも言えない顔をしながら、私を見ていた。
「ですが、ですがですよ。イレーネさんが、その。全部悪いって言うことになるのは違うと思うんです」
私がそう言うと、
「っでも、────────」
彼女は、発言を遮り、何か言ってこようとしたので、
「お願いします。イレーネさん。お願いですから。お願いですから。その...私も、悪いんです。だから、認めてください」
抱きつき返しながら、弱々しさを残しながら、少し強い口調で、私は言った。
「そっ、そう。そう。なのね」
彼女は、何故か、よく分らない返事を返しながらも、私の後頭部を優しく撫でた。
(この子ってこんなにスキンシップ多かったけ)
疑問に思いながらも、色々あって疎かになっていた主目的のことを考え始めた。
(ノラ。あの少女の立場を壊す方法・・・あぁ、面白い事思い付いた。あの子がどうなるかは知らないけど、まぁ、いけるっしょ)
「あっ、イレーネさん。あの、聞きたいことがあるんです。あの、その、答えて貰っても良いです。か」
と次の発言のことを考えながら言うと、
「えぇ、良いわよ」
彼女は、微笑むように私に言ってきた。
(あれ、この子ってこんな性格だったけ。・・・あぁ、多分、私を怖がらせないためとかの演技か)
と彼女の様子に驚きながら思い、
「その。ね。その、ノラって子を聞きたいの」
名前の部分だけを小さくしながら、彼女の耳元で言う。
すると、彼女は、抱き合っているせいで表情は分らないが、怪訝な表情をしたような気がした。
「アリスは、どうしてそんな事が気になるの」
こう問いかけられた。
(何て答えたものかな)
と思いながらも、
「えと。ね。イレーネさんのお友達なのでしょ。だから、気になったの」
私がそう言うと、
「・・・」
彼女は、黙って、私の事を先程よりも強い力で抱きしめた。
(何でだ。えっ、何で)
私が疑問に思いながら、彼女に話しかけようとすると、
「ねっ、アリス。その話は、また今度にしない」
と多少無機質な声で言ってきた。
(・・・少し怖い感じの声だな)
と思いながらも、気圧された私は、
「うっ。うん、分った。何を話すの」
こう返答を返すと、
「そうねぇ」
小さく声を漏らし、彼女は考えているのか少し黙った。
(どんな話題を振られるんだろうかな)
と思いながらも、彼女の声を待ち続けていると、
「難しいわね・・そうね」
こう再度、悩むような声が聞こえてきた。
・・・その後、数分間、彼女は、悩むに悩んだ後、
『好きな食べ物』『趣味』
等を、少し気を遣われながら、私達は、話すのだった。
楽しかったよ。
少しだけ、怖いような気もしたけど。
何だろうね、気のせいかな。てか、気のせいであって欲しいな。




