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第212話 情緒不安定

 私は、アリスの。

 目の前で泣き声を出さずに、それでも、確かに止めどなく涙を流し、泣いている少女の過去を聞こうとしていた。

 彼女が最初に私の事を聞いてきたのだ。

 だから、彼女のことも聞こうと思った。


「ごっ、ごめんなさい。アリス。ごめんなさい。駄目なことを。その」

 焦って、愚かしい言葉を彼女に掛けた。


 私は、本当に馬鹿だ。

 彼女の、幼い少女のトラウマを抉り、更に何とも、愚かしい、慰めることさえ出来ないなんて。


「ごめっ。──ごめん。・・なさぃ。─いっ、・・今。話すから。・・話すから。────ごめんなさい」

 彼女は、必死と言った様子で謝ってきた。

 その様子は、幼いながら、妖艶で利発な印象を抱かせたものとはかけ離れていた。

 ___________

 私は、取り繕うにように沢山謝った。

 そうしなければ、駄目だと思ったからだ。

 まぁ、まともに舌が動かないし、思考が纏まらないせいで、思い付いた言葉をただ乱雑に汚らしく並べているだけなのだが。


「ごめん。なさい。ごめっんなさい」

 何度も、何度も謝罪の言葉を漏らした。

 あぁ、辛いわ。何か、もう分らなくなってきた。


「許して。────ごめんなさい。ごめん...なさい」

 呆然と霞が掛かった思考で、言葉だけを漏らした。

 何でだろうな。私は、何で謝ってるんだろうか。

 煩いな。何でだろう。私。可笑しくなっちゃったのかな。


「だっ、大丈夫だから。大丈夫だからね。ねっ。ねっ。落ち着きましょうね。アリス」

 体を揺らす微妙な衝撃、鼻腔をくすぐる髪の毛と共に、耳元ではそんな声が轟くように聞こえた。

 その声は、静かなのに煩い喧噪を超えて確かに聞こえてきた。


「っすいま。せん。。ごめっんなさい。・・ごめんな。さい」

 申し訳ない気持ちが湧いてきたので謝罪の言葉を漏らす。

 今回は、前回までと比べても、言葉は纏まっていたと思う。多分。


「大丈夫。大丈夫だからね。安心して。私が悪かったから。私が悪いことを聞いちゃったせいだから」

 彼女は、穏やかな声でそう言いながら、私の後頭部を撫でた。

(・・・久しぶりだな。撫でられるなんて。最近は、家に居ても皆が皆忙しそうで、先生とかマリーちゃん以外は、誰も構ってくれなかったし)

 私は、そう思いながらも、若干の眠気を感じた。


(あぁ、駄目だな。私って本当に駄目だ。クズだ。愚図だ。ゴミだ。阿呆だ。死んだ方が良い。私ってどうして生きてるんだろう。彼女は、私に対して親身に寄り添ってくれているというのに、どうして私は、そんなに呑気なんだろう)

 自分に嫌気がさしてしまった。


(・・・駄目だな。可笑しい。絶対に可笑しい。こんなのは私じゃない。これは駄目だ。このままじゃ壊れる。私は、呑気でクズでゴミ野郎だ。そのはずだ。それの何が悪い)

 可笑しな精神状態だと気付いてしまったので、心中でそう呟きながら、

「はぁ、っ、ふぅ────....ふぅ」

 色々と可笑しくなってしまった私の精神やら、思考やらを治すために深呼吸を繰り返し続けた。


 そして、体が微妙な火照りをあげ始め、私は、気絶するように眠ってしまった。

(駄目だ。このままじゃ駄目だ)

 と抵抗しようとしたのだが、結局は失敗をしてしまうのだった。

 ___________

 腕の中で一人の少女が、スゥスゥと規則的に聞こえる息を繰り返し、先程までの錯乱して涙を流していた様子とは異なり、静かに眠っていた。

(どうしよ。どうしよ。眠っちゃった。だっ、大丈夫かな)

 心配になりながらも、私は彼女の頭を撫でた。


 彼女には、申し訳ないことを聞いてしまった。

 贖罪の気持ちが心中を支配した。


 この子は、大丈夫だろうか。

 という心配の気持ちが増大していくのに比例し、

 この子を私が守らないと、守ってあげないと。

 という気持ちが増加していくのが分った。


(この子の性格だったら、きっと他の人達にいじめられて、きっと壊れちゃう。だから、だから、私が守ってあげなくちゃ。そうしなくちゃ駄目だ。関わった私が守んなくちゃ)

 私は、そう心中で、言い訳をするかのように呟き、自分よりも弱い存在。守らなくてはいけない存在の頭を優しく、優しく撫でた。

 ___________

(気分が悪いな。・・どうして私は、あんなに情緒不安定だったんだ。寝不足のせいか。・・ちゃんと寝たような気がするんだが)

 睡眠から目覚めると私は、心中でそう呟きながら、目を見開いた。


(・・これは、どういう状況だ。意味が分らない・・・どういう状況なんだ)

 そう思いながらも、

「あの、イレーネさん。ですか」

 私に抱きついて居るであろう人に声を掛けると、

「あっ、アリス。大丈夫」

 彼女は問いかけるように言いながら、私の後頭部を撫でた。


(・・・どういう状況だ。・・まぁ、多分ずっと抱きつかれていたんだろうな。熱いだろうに良くそんな事をしたな)

 こう思いながらも、

「その、ありがとうございます。イレーネさん」

 と御礼を言った後に、

「その、あの、その、申し訳ないのですが、その、あの、えと、その、イレーネさん。離れて貰っても良いですか」

 私は、こう言うのだった。

報告!夏の公式企画用の書き終わったので、恋愛の小説の練習書き始めました。

一応、題材は『悲恋』『不幸の連続』『世の中は理不尽で不条理である』とかです。

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