第211話 不明瞭な私
あの、ユニーク10,000超えて、PV50,000超えました。
ありがとうございます。
イレーネ。
彼女の存在に、利益を感じた私は、
(そう言えば、探し出して貰える的な事の返事言ってなかったな)
と考えながら、
「お願いします」
こう御礼を言った後に、
「あの、イレーネさん」
名前を呼びかけた。
(彼女は、現状私の事を『庇護対象』と思っている可能性が高いよな。・・この認識は変えさせる必要性はないよな)
と考えながらも、
「その、お話は出来ますか」
先程区切った発言の続きを言った。
「えっ、えぇ、構わないわよ」
彼女は、そう返答をしてくれた。
「あの、その、イレーネさん。その、イレーネさんの話を聞かせてください」
取り敢えず、共通の話題もなさそうなので、適当なことを問いかける。
「えっと、そうね。構わないわ」
と返答をしてくれた。
…………
その後は、イレーネの話を適当に聞き、相槌を打ち、時間が経った。
「イレーネさん。ありがとうございます」
そう言いながら、彼女の経歴を適当に頭で纏めた。
平凡な職人の元で生まれ、12年過ごす。
そして、両親の経営が破綻。っで、自殺。
12歳ながら無常な世界に放り出された彼女は、攫われて今に至る。
「私も話したんだから、あっ、アリスの事も教えなさいよ」
彼女は、私に要求をしてきた。
(さて、どうしたものか。私も彼女みたいなストーリーを創り出すべきか。はて、どうしたものか)
頭を回した後に、
(・・・アリス。私は、アリスだ。どんな人生を送ってきた)
自分が、創作した偽物の人間の人生を考え始めた。
(アリス。平凡な農民の両親の元で生まれ、8年間過ごした。両親は、死んだ。・・貴族に殺された。私は、そして、攫われた。友達は居ない。いじめられていた。姉が居た。姉はクズだった。犬と遊んでいた)
適当なストーリーを。
悲惨で尚且つ、あり得るものを並べた後に、
「うっ、うん。分った。イレーネが教えて欲しいなら教えるね」
と声を出した。
「その、私はね。お父さん、お母さん。そのね。農民って言うのかな。その、お父さんとお母さんはね、お野菜を作ってたの」
少女然とした偽物の存在を。
今世の私、エミリーではなく、創作物のアリスを前面に押し出して声を出した。
「でもね、お父さんとお母さんはね。領主様にね。その、ね。あの。その。─────」
言い辛そうな雰囲気を出しながら、語った。
彼女の庇護対象になるために。
彼女を利用し、私が必ず利益を貪れるようにするために。
・・・・どうして、私は、こんな事を考えてるんだ。
突如、今までの行動がよく分らなくなった。
(どうしてだろう。私は、どうして自己利益のみを優先しようとしてるんだ。意味が分らない。何故。どうして。何で私はそんな行動を取ってるんだ。この主義は、駄目だろ。どうして私は、今までそんな簡単なことに気づけなかったんだ)
自分が彼女を利用した挙げ句、捨てようとしたこと。
彼女を犠牲にしようとしていること。
自己のために他の全てを犠牲にすることを許容しようとしていたこと。
自己利益のみを突き詰めようとしていたこと。
私は、それらが、どうして駄目なことに気づけなかったんだ。
人道に、道理に、色々な人としてのルールに反そうとしていたのに。
どうして、どうして、どうして。
どうして、私は、こんな事が気になってるんだ。
こんなどうでも良いことが、人道なんて私には関係ないというのに・・・私は、そう言う人間。自分が一番大事な人間だというのに。
何故か、止めどなく涙が溢れてくるのが分った。
不思議な事だ。多分、自分に創作物が入りすぎたのだろう。
きっとそうだ。それ以外に考えられない。
私は、私だ。私の思考は私自身のものだ。
こんな事を疑問に思ってしまったのも、創作物のせいだ。
そうに決まっている。それ以外にはあり得ない。
私は、そう言う人間だ。自己利益のために他者を切り捨てるのを許容する人間だ。
そうだ。そのはずだ。私は、そのはずなんだ。
(駄目だ。涙が止まらない。何で、私は泣いてるんだ。意味が分らない。どうして、意味の無い事を考えて泣いてるんだ。一番大事なのは自分だ。それなのに、どうしてあんなことを考えたんだ)
私は、そう思いながら、
(そうだ、前世の自分が邪魔してるんだ。今世の私を。・・・いや、私を邪魔してるのは、今世の私なのか・・・分らないな。思考がグチャグチャだ。纏まらない。正解が見つけられない)
どうしても、何もかもが分らなくて、涙を拭った。
「ずびっ」
汚らしい鼻水を啜る音が聞こえた。
(あぁ、駄目だ。思考が、視界が、何もかもグチャグチャだ。このままじゃ駄目だ)
頬を止めどなく伝う熱を帯びた液体に、光が差さない部屋のように全てが明瞭にならない頭にそんな言葉を漏らす。
「ごっ、ごめんなさい。アリス。ごめんなさい。駄目なことを。その」
私に話しかける声が靄が掛かってた思考の中に響いた。
(あぁ、返事をしないと。じゃないといけない。私が、嫌われちゃう。それじゃあ、駄目だ。私のために、駄目だ。返事をしないと)
不明瞭な思考でそれだけが、嫌に大きく響いた。
重い口を開きながら、焼けるように熱い鼻を啜り、声を上げた。
主人公の発言の意味が分らない。
こう思った人が多いと思います。それが、正常です。
私のただでさえ弱い日本語のせいで、普段との違いが分りづらいと思いますが、錯乱している表現をするためです。




