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第209話 狂った小世界

橋立です。夏のホラー現状書いてます。

夏になったら良ければ見てね

(どうかしたのかな)

 そう思いながら、表情を少し。

 よく観察しないと分らない程度、強ばらせた少女イレーネにそう思っていると、

「ねぇ、イレーネどうしたの」

 優しいようで、心が冷たい声が続いた。


(・・・気持ちが悪い声だな。多分、演技か)

 と思いながらも、冷たい声を出した主を見る。

 そこに居た女性は、多分、前世ですら、珍しいほどの美人で、閉じているのか開いているのか。それが不明なほどの糸目で、口の右下辺りに小さなほくろがあった。


(気持ちが悪いな。薄ら寒い。ガチ目に寒気がする)

 彼女の冷たく、何を考えているのかが分らない。

 そんな表情に感想を漏らしながらも、見つめ続けていると、

「あらっ、貴方は」

 疑問を抱いているようで、一切の感情を見せない声が響いた。


(気持ちの悪い演技だな)

 違和感の理由が、彼女の行っている演技だと確定させながら、イレーネの後ろに隠れ、彼女の服を少し掴みながら覗き込むと、

「ふふふ」

 不思議な、よく分らない、演技すらない、冷たくて髄を凍らせるような笑い声が聞こえた。


(っ、流石にそれは)

 気持ち悪さが辛すぎて、彼女から目を離し、イレーネの後ろに完全に隠れきった。


(どうする、あんな奴と関わるのは流石に無理だ。気持ちが悪すぎる。演技を演技だと隠すつもりがないのか。私だって、隠すぞ。キモい。ていうか、怖い。多分あれは、関わって利益がある人間じゃない。多分、クズだ。権謀術数主義者(マキャベリスト)だ)

 体が震えた。よく分らない震えだ。


(やべっ)

 そう思いながら、イレーネの服から手を外した。

 震えていたのが、バレたかも知れない。


 少しの間、沈黙が、沈み込むようなどんよりとした沈黙が辺りを支配した。

 そして、

「ねっ、ねぇ、ノラ。遠くで話しましょうよ」

 イレーネがその沈黙を破った。


「えぇ。その子は、連れてくるの」

 彼女は、イレーネの背後に隠れている私を、見つめているように感じた。

「・・・」

 イレーネは、沈黙を少し返した後に、

「ねっ、ねぇ、アリス。少しだけ、遠くに行って貰っても良いかしら」

 私の方を向き、引き攣ったような下手な笑顔を浮かべながらそう言った。


「うっ、うん」

 彼女を置いていっても構わないだろうか。

 と思いながらも、どうしても、ノラと呼ばれた少女が怖いので、そう返事をし逃げた。


 大分歩いた後に、私は、

『どうして彼女に恐怖を抱いたのか』

 このことが疑問になった。


 確かに、彼女の笑顔は、気持ちが悪かった。

 だが、彼女は、ただの小娘だ。

 ろうと思えば、れるはずだ。


 一端、彼女に対し、恐怖を抱いてしまった理由を、考えた。

 それはもう必死に。


 そして、多分、分った。

 私は、あいつの自信が怖かったのだ。

『演技を隠さずとも構わない』とする自信が。


 前世の話しだが、私は『演技を隠すことを知らない、権謀術数主義者マキャベリスト』に足を掬われたことが何度かある。

 だが、だがだ。

 奴には、私を騙した奴とは違う、冷たい。

 人の事を貶める事も昰とする意思を感じたのだ。


(あれと関わっても利益はないな。不利益しか感じ得ない)

 こう思いながらも、

(似た人間性だな。あれが、素なのかそれによっては、私が踊らされる可能性があるな。関わり合いたくはないが、利用できる可能性はあるか)

 利用方法を考え始めるのだった。

 ___________

 私の私情も交じっているかも知れないが、此処は、特にこの周辺は”狂っている”と思う。


 人攫いに攫われ、奴隷に落とされた物同士が、協調性を持つことをせず、カーストを作り上げ、自分よりも下の物を侮辱し、辱め、暴力を振るっている。

 それを、”狂っている”と言う言葉以外で表現することが可能なのだろうか。

 私は、不可能だと思っている。


「ねぇ、イレーネ」

 私の目の前に立っている、女は、ネットリとした声で、私の名前を呼んだ。

「・・・・」

 無視を返す。


「ねぇ、イレーネ。私、悲しいわ。貴方が、裏切ろうとするなんて」

 彼女は、その綺麗な顔に小粒な、涙を浮かべ、そう呟いた。


 若干の呵責を感じながらも、

「何をしようが、私の勝手でしょう」

 私が、そう発言を返すと、彼女は、口を大きく歪め、

「えぇ、いけないわ、ねぇ、イレーネ」

 意味の分からない事を言いだし、彼女は、私を押し倒し、馬乗りになった。

 そして、私の首を、細い手で、何処からそこまでの力が出ているのかが、分らないほどの力で、締めた。


 あぁ、この世界は、狂っている。

 もはや、私のような弱者には、”死”以外の救いがないのかも知れない。

 そして、私の意識は、深い泥濘に堕ちていった。


 堕ちきる前に、先程見つけた。

 小さな、少しの風で消えてしまいそうな儚い少女は、大丈夫だろうか。

 この狂った世界に飲み込まれていないだろうか。

 と心配になってしまうのだった。

 ___________

 私は、現在『自由解放軍』の陣地の中心。

 カシワギの居るテントに居た。


 あの後、少し強行偵察をし、例の勢力。

 第三の勢力がよく分った。

『カースト制で、カーストごとの格差社会で、ギリギリ成り立っている』

 そんな緩やかな協同体だと分った。


 主観ではあるが、

『少し突っつけば崩すことが出来そうだな』

 と印象も抱かざる終えなかった。


 私がそんなこんなで、頭を回し続けていると、

「それで、アリスどうかしたのか」

 今まで黙っていたカシワギがそう問いかけてくるのだった。

第一陣営:カシワギ率いる『自由解放軍』

第二陣営:未来への希望を失った亡者

第三陣営:階級社会によって成り立っている協同体

規模としては、上から、6割、3割、1割くらいです。

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