第207話 第一、第二、第三陣営
『私を買った人間は、脱出対策をしっかりとするような人間ではないのに、どうしてこれ程までに脱出対策がされているのか』
私が、地図見て、疑問に思った事を問いかけると、案外直ぐに答えてくれた。
「あぁ、それはな、どうやら、誰かが助言をしたらしいんだよ」
と。
(助言・・・助言をされたのか。誰だ。一体。あのローブの魔法使いか・・・それとも、側近でもいたのか)
買った貴族様の仲間達に誰が居るのかなどは、殆ど分らないので、私は、そう考察を少しの間行い、
(まぁ、分らんよな)
こう考え、考察を終わらせた。
その後は、特に会話は無く、私は、無心で地図を見続けました。
(あぁ、ねっむ。ふぅ、寝ようかな。そうしよ。もう地図も覚えたし)
私の体内時計が正しければ数時間ほど見続けた後、心中で呟き、
「・・・眠くなってしまったので、さようならです」
未だに地図を真剣な、鬼気迫るような表情で眺めているマルコに言い、適当に壁に向かって歩いた。
(何であんなに鬼気迫ってたんだろうな。意味が分らない・・・眠いから頭が回ってないのかな・・・・いや、違うよな、眠いっちゃ眠いけど、頭はまだ晴れ晴れとしてるし)
彼が、あんな表情をしていた理由を理解できないし、理解することが多分、今後も出来ないだろうと思った。
「ん゛ん゛~」
(寝るか~、そうしよ、眠いわぁ~)
欠伸をしながらそう呟き、壁を背に瞼を閉じた。
(・・・・・眠いのにな、眠れないな。クソじゃん)
何時までも訪れない、意識の喪失にそう思いながらも、
(先生達は、大丈夫かな・・・てか、地味に手紙返却されてないじゃん。大丈夫なのかな)
心中のそこから心配が滲みだしてきた。
(いや、これ、まじめに大丈夫なのか。あの子、大丈夫だよな。失敗してないよな。・・・頼むよ、先生、お願いだから)
私は、そう思いながらも、手を動かすと、何かが落ちる小さな音が、微妙に響いた。
(何だ)
短く疑問の言葉を呟き、音源をすぐさま確認する。
すると、そこには、一際目立って見える真っ白な封筒が落ちていた。
(良いタイミングだな。本当に完璧だ)
先程まで考えていたと物が、落ちてきたので、何故か、良い気分になりながらそう呟き、床に落ちているそれを手に取った。
封筒を、持ち上げ、裏返すと、封蝋された封筒のあけぐちを見つけた。
(なんだろ、この柄)
封蝋の柄に疑問を抱いた。
(うちの家紋じゃないよな。って事は、先生の家紋なのか・・・てか、先生に家紋ってあるのか。神様でしょ、あの人。・・・それじゃあ、何なんだろうな、これ)
封筒を閉じている赤色の蝋は、デフォルメされた本を描かれ、その表紙には、私の記憶が正しければ、獅子座が描かれ、中でも、レグルスが特別輝いているように描かれていた。
(まぁ、いいや)
考えるのも面倒くさいのに加え、どうせ分らないだろう為、そう心中で呟き、封筒を蝋を割らないように頑張って破いた。
(ほうほう)
私は、心中でそう呟きながらも、その内容を見た。
『エミリー・ブランドー侯爵令嬢へ
君のお願い通り、保護したよ。
適当な演技も交えて、君の家としても保護したよ。
従者として雇ったみたいだよ。
君の演技もしてあげてるよ。
P.S.
遅くなってすまないね。
君の演技をしてて色々と忙しかったんだよ。
謝罪は、これで終わり。
色々丸投げをしてくれたね。
帰ってきたら覚悟をするんだよ。
・・・君の無事を願ってるよ』
何故か、私の名前をしっかりと書いていたりと、不思議な事はありはする物の、
(よし、ありがとう。先生)
色々な心配事を吹っ切ることは出来た。
(これで、一つのことに完全に集中できるな。脱出に)
小さく呟きながら、手紙を服という名のボロ布の中に入れて、意味も無く立ち上がった。
(あぁ、ねっむ)
こう思いながらも、取り敢えず適当に、何処に行っても変わらない、感情が抜け落ちたように見える人間、傷だらけで泣き続ける子供達を見た。
(・・・これは、酷いな、てか、カシワギの仲間は何人居るんだこの中で)
そう思いながらも、私は、
(この中でも派閥があるのかな)
と思い始めた。
(まず、一番目にカシワギ率いる自由解放軍の連中。それと、第二に絶望して、何もかもを諦めた連中)
適当に派閥のことを考えながら歩き、その思考を区切るように、
(まっ、これをどうにかするのがカシワギの役目になるだろうな。求心力を高めて、第二勢力をどれ程吸収できるのか、多分、これが重要だろうし)
こう考えて、
(取り敢えず、頑張れーカシワギ)
小さく心中でそう声を漏らした。
「はぁ、それにしても陰鬱だな・・・てか、私が向かってる方向ってカシワギの方だよな」
方向感覚が狂ってしまったのか、私が今現在何処にいるのかが分らなくなってしまった。
(取り敢えず、壁によって歩いとけば、見つけられるかな)
狂った方向感覚で歩くのは、やめた方が良いという経験則から、私は、壁に手を付け歩き続けた。
(少し人間が変わってきたか)
数時間ほど歩いたところでそう思い始めた。
小さな声ではあるが、話している声や笑う声が聞こえ始めた。
(此処か。・・・多分、違うよな、記憶が正しければ、こんな所にないはずだろ。・・・それじゃあ、これは何処だ。一体。・・・第三の別の陣営でもあるのか)
私は、顎に手を付けながら歩いていると、
「ちょっとあんた、何様のつもり」
と声が柄悪く掛けられるのだった。
一応は、陣営の説明する。
第一陣営:カシワギ率いる『自由解放軍』
第二陣営:未来への希望を失った亡者
第三陣営:次々話説明




