第203話 幼き兵隊
『ニタァ』
と気色悪い笑顔を浮かべた少年は、私の牢屋に入ってきた。
そして、
「立ち上がれ」
こう命令の言葉を投げられ、私の体は、彼の指示に従い、立ち上がってしまった。
(何でだよ、私に指示与えられる人間、多過ぎだろ)
と思いながらも、彼を睨み付けていると、狂ったように、亢奮したように、更に、気持ちの悪い笑顔を彼は浮かべた。
(何だよ、気持ちの悪い)
私は、そう思いながら、警戒心を抱いていると、彼は、牢屋の外に出て行った。
(何だ。何の目的があったんだ)
疑問を抱いていると、彼は、何かを持ってきて帰ってきた。
(はぁ、お前、ふざけんなよ、屑が)
彼の持っている、細い紐のような物。多分、鞭にそんな事を叫ぶ。
すると、
『パチン』
鋭い音が、私の直ぐ横、足のスレスレの位置に鞭の先が通り過ぎていった。
(おい、おい、このクソガキ)
今にも、爆発しそうな恐怖を我慢しながら、強く、奴をにらみ返す。
「ハハハ」
クソガキは笑い、鞭を振り上げ、私に対して振り下ろした。
『グサリ』
と刺すような痛みと、当たった箇所。脇腹から漏れ出る熱さに失禁をしそうになりながらも、彼を見つめていると、再度、私に対して、恐怖を与えるためなのか、床に鞭をたたきつけた。
そんな事が、数時間続き、クソガキは『魔法の使用以外は、自由にして』と命令をし帰っていった。
奴が、私を直接、鞭で叩いたのは、最初のあれ以降はなく、後は、全て空を切る、もしくは、地面にたたきつけられるだけだった。
「イッてぇ、大丈夫か」
私は、そう思いながらも、叩かれた部分を見る。
すると、そこからは、赤々と色づいた液体が、止めどなく流れ落ちていた。
(だから、あんなに熱さを感じたのか)
こう思いながらも、私は、服を少しだけ破り、そこに押しつけた。
その後は、鞭で叩かれ、ご飯が届けられ、食べて寝て、起きた。
そんな生活を続け、数日。
(さて、今日も、あのガキが来るのかな)
私が警戒しながらも、そう思いながら、立ち上がると、丁度よく、鎧を身に纏った二人の騎士が現れ、
「出ろ」
と牢屋を開きながら命令をしてきた。
体が勝手に動き、牢屋から出た私は、
「付いてこい」
の命令に従い、歩み続け、挙げ句、木製で端が鉄で縁取られた扉が付いている部屋に放り込まれた。
「クソが、もっと丁寧に扱えよ、クソが」
私は、小さく、去っていく足音に対し、暴言漏らしながらも、視線を感じたために、周りを見渡した。
すると、少し距離を置いて、私を囲むようにして、見つめてくる少年少女達の存在に気付いた。
(何だ、誰だ)
こう思いながらも、後退りをして、扉に背を付けると、集団の中から一人が飛び出すように出てきた。
「やぁ、ようこそ。僕達は新入りを待っていたんだ」
妙に響く声でそう言った。
「どういう意味・・」
私は、強い警戒心を解くような、少年に返事を返すと、
「奥に来て欲しい」
手招きをしながら、彼はそう言い、広い牢屋、多分、奴隷を纏めて収監するための部屋の奥に走って行った。
(はぁ、誰だお前。信用できないわ。流石に無理)
こう信用できないし、信用する価値がないと思ったので、動かずに、立っているところに座ると、周りが驚いたように騒ぎ出した。
(えぇ、どうして騒ぐかな。何か、給食費を盗んだって、冤罪を掛けられたこと思い出すんだけど)
思い出したくない、出来事を思い出してしまった。
あれは、小学生の頃、ほのぼのとした陽光が差し込む教室では、『帰りの会』っていう実質『魔女裁判』が起こってたんだよね。
先生が、
『給食費が誰かに取られてしまった。皆、顔を伏せて、取った人は、手を挙げてね』
こう言ったのだが、確か、私の記憶が正しければ、誰も手を挙げなかったんだ。
それで、何やかんやあって、僕がやったって冤罪を掛けられることになったんだよね。
多分、理由としては、女子に嫌われていたからっぽいんだよね。
その後、盗んでだ女子が、私を貶めたかったって明言してたし。
(はぁ、本当に思い出したくないこと思い出した。あぁ、気持ち悪い気持ち)
こう思いながらも、
(・・・地味に、私、何で嫌われてたんだ)
その事が、凄く気になってしまった。
(本当に何でだぁ、心当たりは・・・沢山ありすぎるんだよなぁ)
気になった私が、心当たりを探すと、本当に沢山あった。
例えば、何故か、突然、殴ってきた奴を泣かせるまで、責めたり。
私の筆箱を窓から放り出した奴を、泣かせたり。
私の鉛筆とかそう言った物を折った奴を、泣かせたり。
・・・・あれ、地味に、私の心当たり、私悪くなくね。
(いや、いや、そんなわけ・・・)
記憶を探ってみたのだが、全部・・殆ど、私は悪くなかった。
(まぁ、一部は、私も悪かったけど、殆ど、私悪くねぇな、それじゃあ、どうして私あんなに嫌われてたんだ。・・・どうして、刺されそうになったんだ)
更に思い出したくないことを思い出しながらも、頭を必死に回していると、
「おっ、お~い、君、話聞いてるかな」
目の前には、先程、飛び出してきた少年がいつの間にかいた。
「何ですか。何か話していましたか」
本当に何も聞いていなかったので、そう問い返すと、
「嘘。俺の話何も聞いて無かったの。うそぉ、俺の熱弁がぁ」
彼は、頭を抱えながら、膝を曲げた。
何故か、意味が不明なのだが、申し訳なさを感じてしまった私は、
「ごめんなさいね、それでどうかしたの」
謝り、問いかけると、
「ごほん」
咳払いをして続け、
「えぇと、まぁ、結論から言おう。君も、僕達の仲間にならないか。僕らの『自由解放軍』に」
彼は、手を大きく広げながらそう言ってくるのだった。
登場しました『自由解放軍』・・・何か、名前ヤバいですね。
えぇと、この編のメインストーリーに思いっ切り関わってきます。
そして、今後のストーリーにも関わり続けます。
彼らが、全滅するまでは。
あっ、そう言えば、主人公を鞭で叩いた少年は、忘れても構いません。
以降、出てくるのは、この編の最終話くらいの予定なので。
2023/05/29、22:46
加筆




