第181話 変な夢、それとごめん!
『コンコンコン』
私がゆらゆらと揺らめく海面が眼前に広がる、砂浜にしゃがんでいる夢を見ていると、その音が辺りに響き渡った。
(この景色に似合わないな、・・・何の音だろうな)
現実で部屋をノックされた音だと何となく分ってはいる物の、私は、意識を浮上させる努力をすることは無かった。不思議と起きる気力が湧かないんだ。不思議だよね。
(あぁ、眠いな、眠りたい、多分、此処夢の中だけど、眠りたい)
私が何故か感じる眠気に対し、心の中でそう声を漏らしていると、
「クふふふハハハハハハ」
本当に何故か、意味が分らない笑い声が漏れてきた。
(さて、はて、これは一体何でしょうか、私には分りかねますな、君には分る)
声に出さずに質問を、心の中に投げかけると、
「さぁ、分らない」
こんな答えが返ってきたような気がした。
(そうか、分った、君でも分らないのか、・・それじゃあ、私に分るわけがないか)
私は心の中で声を漏らしながら、しゃがんだ姿勢から、一度立ち上がり、そのままの姿勢で後ろに倒れ込んだ。
心配するような声がするような気もするが、私はそれを無視し、
(さて、これはどうやったら抑えられるかな)
「クハハハハハハ」
未だにこのように口から流れで続ける笑みの声にその事を考え始めた。
(・・・・これが所謂、悪夢と呼ばれる物なんでしょうかね。私には分りかねますが)
どうあがいても止められそうに無い、笑みの声にそう感想を漏らした後、
(あぁ、流石に、もう起きた方が良いかな、・・・もう起きなきゃいけないよね)
こう考え始め、
(君は、どう思う、もう起きた方が良いと思う)
と質問の声を投げる。
(・・・・そうだよね、もう起きた方が良いよね、・・・起きなきゃ駄目かぁ、どうやって起きれば良いんだろう、分らないなぁ)
起き方を考えることになった。
(さぁ、さぁ、さぁ、よし、よし、どうやって、起きようかな・・・・・)
私はこう考え始めると、一つの声が凄く凄く、癪に障った。
(五月蠅い、煩い、煩い、煩い)
自分の口から漏れ出ている笑い声に溜飲が上がっていくのを感じ、数分後、
(あぁああぁあ、もう、うっっせえな、考えるのに集中できないんだ、ぐああぁ)
ついに爆発した。
『早くね』だって、知らないよ。自分で自分の身体が支配できてないってだけでも大分癪に障ってたんだよ。しょうが無いだろ。沸点が下がってたんだよ。
(どうやったら、この煩い笑い声を消せるんだ)
私は一端、起きるすべを考えるのをやめ、笑い声を消し去ることにした。
(・・・・本当に、どうやったら、消えるんだ)
思い付かず、数分間が経つと、私の身体が揺れ意識が白み始めた。
(えっ、マジ、こんな所で、起きちゃうの、消し去るとこまでやりたかったんだけど、笑い声を、てか誰が私の身体を揺らしてるんだ)
私はそう思いながら、必死に起きないように頑張ったのだが、抵抗虚しく、意識が現実に浮上してしまいました。
「ぐっ、ふ」
声を漏らしながら、目を開き左右を見渡すと、先生が猫パンチをするような姿勢をしていた。
「やぁ、おはよう」
先生は呑気に、楽しそうに挨拶をしてきたので、
「おはよぅ、ござぃます」
少しだけ、呂律の回ってない口を回しながらそう言うと、
「気分はどうだい」
陽気に言ってきた。
「最悪ですよ、先生が起こしたんですか、ていうか、それ以外あり得ませんよね」
呂律が回り始めた私がそう問いかけるような、断定するような感じに言うと、
「そうだね、僕が起こしたよ」
楽しそうに返されてしまった。
(まぁ、最初は起きるのが目的だったし、別に良いか、本当は笑い声を消す方法を見つけ出したかったのに)
と心の中で呟きながら、
「今って、何時ですか」
時間が気になったので問いかけると、
「まだ、朝だね、正確な時間は知らないけど、さっき君のメイドが扉を叩いてたよ」
先生は当然かのように言ってきた。
「はぁ、マジかぁ、もうそんな時間なのかぁ・・・・えっ、マジ、まだ、朝なんですか」
もう昼頃だと思っていたので、驚きながら私が返すと、
「そうだね、まだ朝だね」
と教えてくれた。
(よし、よし、思ったよりも早く起きれた、思ったより寝てた時間短かったんだな)
私はそう思いながら、ベッドから飛び上がるように起き上がると、
『コンコンコン』
また扉を叩く音が聞こえてきた。
「どうぞ、お入りください」
私が懐中時計を出しながらそう言うと、
「失礼します、お嬢様」
マリーちゃんが入ってきた。
(何で、また来たんだ、さっき来たんじゃ無いのか、先生も言ってたし)
私はそう思いながら、
「・・・・夢の中だったので確かではありませんが、先程も扉を叩きませんでしたか」
こう質問を投げかけた。
(・・・『何で夢の中』って言葉を使ったのか気になるだって。あぁ、それはね、普通に、先程も扉を叩きませんでしたかって問いかけたらさ、私が起きていたのに無視をしたみたいに感じとられる可能性もあるだろう、だからだよ)
ふざけてこんな事を考えながらも、返答を全く。
「あっ、えっと、それは、何と言いましょうか、お嬢様は起きていて、私がノックを小さくしてしまい聞こえなかっただけなのでは無いかなと思い、もう一度、来たのです」
私の問いに対し、マリーちゃんはそう回答を返してきた。
「呼びに来て下さり、ありがとうございます。えと、それと、最初の時は、寝てしまっていて申し訳ありませんでした」
私は申し訳ない気持ちでそう謝罪をすると、
「大丈夫ですよお嬢様、失敗は誰にでもある物です」
慰めるように、マリーちゃんは言うのだった。




