第173話 初めて玄関から外に出ますよ、新鮮ですね
先程、アースベルトに『玄関に行きたい』という事を言い、連れてきて貰った私は、お父様を待つために階段に腰を下ろしていた。
(お父様、本当に大丈夫なのかな、もう大分時間経ってるけど)
私はそう思いながら、扉を当ててしまったお父様の事を考えていると、
「お嬢様、椅子持ってきましたよ」
と言いながらアースベルトがやってきた。
(どうして、この人は椅子を持ってきたんだ)
何故か椅子を手に持っているアースベルトにそう思いながら、
「どうして持ってきたんですか」
問いかけると、
「階段に座るのは汚いでしょ、お嬢様」
アースベルトは私にそう言ってきた。
「汚いですかね。別に大丈夫だと思いますけど」
私がそう言いながら、階段に座り続けていると、
「汚いですから、椅子に座ってください」
と言いながら、アースベルトは私の近くに椅子を置いた。
「別に大丈夫ですよ、本当に」
と私が言うと、
「俺はもう仕事に戻るんでそれじゃあ、・・・・椅子に座ってくださいよ」
こう返答を返しながら元来た道を帰っていった。
(まぁ、折角持ってきて貰ったんだし椅子に座るか)
そう思った私は、階段から腰を上げ、アースベルトが置いていった椅子に腰を掛けるのだった。
…………
椅子に座ってから数分間、お父様が来ました。
「大丈夫でしたか」
私が少し心配になりながら問いかけると、
「何にも無かったから大丈夫だよ、心配しないでエミリー」
と言いながら、私の頭を撫で、体を持ち上げた。
(うわわわ、私、もうそんな歳じゃ無い、もう8歳だよ、もうだっこされるような歳じゃ無いよ)
こう驚きながら心で呟き、
「自分で歩けますので大丈夫です・・・それに、重いでしょう」
と『降ろせー』と言う意味の言葉を言うと
「重くないから大丈夫。何も心配しなくても良いよ」
こう言いながら、私の体を床に降ろすことは無かった。
「あの、降ろして貰いたいのですが、お父様」
私は本当にマジで、前世の精神が『降ろせー、降ろせー』と叫び散らす程には嫌だったのでこう言うと、
「ハハハ、降ろさないよ、エミリーをだっこしているのは、僕が望んでいるからだ」
こう言いながら、お父様は歩き出し、玄関の扉を開いた。
(はぁ、お父様、何故にだっこしたいんだよ。普通は嫌だろ、重いだろうし、面倒くさいだろうし)
私はそうお父様に思いながらも、少しだけ、お父様に抱きつき、
(始めてこの扉から外に出るな・・・・楽しみだな)
と小さく呟き、心を躍らせた。
お父様が、歩みを更に進め、私とお父様は屋敷の外に出た。
空には、雲一つの無い青々とした快晴が広がり、暖かくポカポカした太陽光が燦々と降り注ぎ、影を作る物が無いため、少しまぶしいが、見える物全てが真新しく見えてしまった。別に初めて外に出たわけじゃ無いのに不思議だね。
(うわぁ、何か新鮮だな、どうして新鮮に感じるんだろう)
新鮮に感じ理由が気になった私が少し考えると、
(あっ、多分、今世ではこんなに広がっているところを見たことが無かったからだな)
とこのことに気付いた。
私が、空に向けていた視線を地面に向けると、目がチカチカとする色鮮やかな物が沢山見えた。
「お父様、お父様、あのお花は何ですか」
気になったので問いかけると、
「さぁ、僕は知らないね、ごめんねエミリー」
何故か知らないお父様はそう答えてきた。
「何で知らないんですか」
私が問いかけると、
「あの花たちは、庭師が植えたんだよエミリー、だから僕は知らないんだ」
お父様はそう答えてきた。
(それは知らない理由にならないと思うけどな)
と思いながらも、
「お父様が植えてと庭師さんにお願いしたんですか」
気になってしまったので問いかけると、
「此処に勤めている庭師達は自主性が高いんだ」
お父様は私にそう答えた。
「・・・・お父様は何も関与していないことは分りました」
私はそう返事をすると、
「確かに、そうだ」
お父様は何故か少しだけ変な表情と声で言った。
「・・・・お父様、止まってないで早く行きましょうよ」
立ち止まってしまったお父様にそう声を掛けると
「あっ、うん、そうだね」
と返事を返しながら、歩を進め始めた。
そんなこんなで、数分間歩き続き、少しだけ大きな道から外れたところで、お父様は
「少し、待ってくれるかな、エミリー」
と言いながら、私の事を床に下ろし、どっかに歩いて行った。
(何処に行ったんだろ、早く行きたいな、街に)
こう思いながら、私は、しゃがみ込み、地面の石畳を見ていた。
その後、数十秒で飽きてしまった私は、植えてある淡い色の良い香りがする花を見た。
(これ、何だろうな・・・私、そこまで花は好きじゃ無いけど、何かどっかで見たことがあるな)
潰さないように、そっと手の上に花を載せながらそう心の中で思い、
(これって、地味に木だな、低木っていうんだっけ)
私がそう思いながら、見続け、その花の正体を考え続けていると、
「あっ、これ、あれか、思い出せた、沈丁花だ」
この通り思い出すことに成功しました。
やっぱ、私って天才だ。大天才だ。
その正体を見抜けたことによって、私は嬉しい気持ちでお父様を持つのだった。




