第169話 貴族的趣味、絵画を描くよ
『貴族らしい趣味を何も持っていない』
その事に気付いてしまった私は、全力で頭を回し、何かをしようとしていた。
(はぁあぁ、マジかぁ、何で、あぁ、何しようかな、貴族の淑女の趣味と言ったら、音楽とか、芸術関係だよな)
私は頭を回しながら、取り敢えず、バイオリンを創ったのだが、前世でも、今世でも何も習っていなく、何も知らないので、諦めることにした。
(バイオリン無理じゃん、私、楽器出来ないんだけど・・・・それじゃあ、何をしようかなぁ)
別の考えを浮かべるために、頭を回した結果、私は、
「よし、絵を描いてみよう」
この結論に至った。
「よし、よし、日記帳って言う紙もあるし、万年筆もある、いけるね、よし、早速書いてみよう」
思い立ったが吉日のことわざの通り、私は、持っている万年筆と日記帳を取り出し、懐かしい前世の記憶を頼りに絵を描き始めるのだった。
…………
多分、数時間後、私は自分が書いた数枚の風景画、人物画を見ていた。
「うん、風景画は良い感じだね、この桜の木とか、このフランス料理屋とか・・・・人物画、お前は一体誰なんだ。私は友達を書いたはずだよな・・・・・これは一体何なんだ、人・・・じゃないよな、絶対に、どちらかというと、化け物・・・・・」
私は形容しがたい人物画を覗き見ながらそう呟いた。
いやぁ、不思議な事にですね。
私が描いた前世での友達の絵がですね。本当に不思議な事にですね。
人間とは言えない存在になってしまったんですよね。
最初はちゃんと人だったんだけどなぁ。
「これは・・・呪物みたいだな、何か、見てると呪われそう、封印するか」
私はそう言いながらその人物画が描かれたページを破り取り、倉庫に入れようとしたところで、
「君、何を描いていたんだい」
正気を確かめるような声が聞こえてきた。
「何のことでしょうかね」
咄嗟に手に持った紙を自分の背中に隠すと、
「この世の物とは思えない絵が一瞬見えたんだけど」
先生は私にそう言ってきた。
「なっ、何のことでしょうかね。私の画力は画伯クラスですよ。そんな絵を描くわけが無いじゃ無いですか」
流石に辛いかも知れないが、言い訳をすると、
「それじゃあ、君が背中に隠している絵も含めて、全部見せてくれるかな」
バレていたのかそう言ってきた。
(いや、バレていないはずだ、何たって私は直ぐに隠したんだから)
そう思いながらも、私が絵を倉庫にしまい、机にのっている風景画を先生に見せると、
「背中に隠したのも見せなよ」
と言われてしまった。
「何のことでしょうかね。私が描いたのはそれだけですよ」
嘘を吐くと、先生は何やら魔法を行使し、その手に何かを取っていた。
「ちょっ、やめてくださいよ」
先生が持っていたのは、私の描いた人物画だった。
どうにかして、奪い取ろうと頑張ってみた物の躱されるだけだった。
「うわぁ、これは、また凄い呪物だね」
私の事を馬鹿にする発言をしてきた。
「酷くないですか、勝手に見ておいて、それって」
私はこう先生に対して文句を言った後に、
「それに、どうして私の魔法にしまった物を先生が奪えるんですか」
問いを投げかけると、
「簡単だよ、君も一度体験したことがあるだろう」
意味の分からない事を言ってきた。
「どういう意味ですっか」
私は発言しながらも、先生の手にある紙を奪い取ろうとしたが、簡単に躱されてしまった。
「君も体験したことがある、魔法の主導権を奪う技だよ」
先生は私にそう教えるように言ってきた。
(あぁ、確かそんな事あったな、・・・でも、今回、奪われた感覚無かったんだけど)
気になってしまったので、
「奪われた感覚、ありませんでしたよっと」
奪おうとまた頑張ってみたが、失敗してしまった。
「僕のテクニックが凄いからね。あの時の君を殺そうとした犯人よりもね」
先生は私を煽るような声でそう言ってきた。
「何故に煽るような声を出すんですか」
私が奪うのを諦め、椅子に腰を掛けながら言うと、
「ありゃりゃ、諦めるの早いね」
煽ってくるような声で言ってきた。
「奪い返そうに無かったんですから、諦めた方が得策でしょう」
先生に言葉を返した後に、
「それで、どうして煽るような声を」
再度問いかけると
「君にも出来るようになって貰いたいと思ったんだよ。ふとね」
先生はそう返答を返した。
「別にそれならば煽るような声を出さず、そう言えば良かったんじゃ無いんですか。最初から」
先生に疑問を感じ問いかけると
「まぁ、まぁ、良いじゃ無いか、それじゃあ、やって見ようか」
こう返答にならない返答をしてきた。
「分りましたけど・・・やり方教えてくださいね」
私がそう返答をすると、
「それは、勿論」
先生はそう言いながら、槍の魔法を展開し、宙に浮かせた。
(げぇ、いきなりかよ)
私はそう思いつつも、
「それで、どうすれば良いのですか」
問いかけると、
「この魔法と僕との間に線みたいな物が見えるだろう」
先生はよく分からない事を言ってきた。
「なんですか。それ」
分らなかったので問いかけると、
「あぁ、そうか、そう言えば君、人間だったね。忘れてたよ」
何か、酷いことを言われてしまうのだった。




