第157話 非常に、本当に、非常にきなくさ~~い噂
「だっ、大丈夫ですよぉ、先に帰っていてください」
私が、私の籠もっているトイレの扉の前に居るであろう人、マリーちゃんに言うと、
「本当に、大丈夫なのですか・・・・」
更に心配したような声で言われた。
「本当に大丈夫ですよぉ、本当に、本当ですぅ」
私は心の中で、
(マリーちゃん居たら着替えられないよぉ、うぁああ、もっと早く天恵が浮かんでいれば)
とイヤァ~な冷や汗を出しながら呟きながらも言う。
「分りました、先に戻っておきますね、お嬢様」
マリーちゃんは私にそう言った。
その後、体感では1分、実際には10秒くらい、マリーちゃんが去っていかないのが分った。
(足音聞こえなかったもん、多分、居るじゃん)
私はそう思いながらも、
(居るんなら、持って来てって頼めばよくね)
と思ってしまった物の、直ぐに正気を取り戻し、
(流石に、流石の私もそれは駄目だ、恥ずかしいし、何か、社会的に死ぬ気がする)
こう心の中で呟き、
「マリーちゃん、そこに居るのは分っています、早く帰って下さい」
扉の前で待っているだろうから言うと返事が返ってくることは無かった。
(あれ、マジで居ない感じ)
私がそう思いながらも、少しだけ、ほんの少し扉を開け、外を見ると、本当に居なかった。
(恥ずかし、マジで、恥ずかしい、自意識が、過剰すぎるんだ、うわぁああぁあぁぁぁwぁゎ)
取り敢えず、現状の気持ちとを思い、叫んだ後、私は、
「よし、着替えるか」
と小さく、低く呟いた。
…………
「決まりましたか」
私は、トイレから自分の部屋の前に帰ってきて、そう言葉を掛けると、
「決まりましたよ、お嬢様、教えてあげましょう」
アースベルトがそう言った。
「あっ、そう言えば、マリーちゃん何処行ったんですか」
その話しも気になりはするが、気になってしまったので問いかけると、
「あぁ、お茶を取ってくると言っていましたよ」
『それ、誰だ』ていう感じのアースベルトとは違い、ロナルド君がそうはっきりと答えた。
(知らんのか、アースベルトは・・・あぁ、地味にそれが普通か、多分、従者も少ないだろうし)
私はそう考えながらも、
「そうですか、・・・それじゃあ、例の話しを教えてください」
とアースベルト達に言うと、
「いやぁ、少し大きい声で言えるようなことではないのですが」
そう言いながら、アースベルトは私に近づいてきて、耳に口を寄せてきた。
(何か、思い出すなぁ~~、あぁ、ASMRか、なんで思い出したんやろうな)
そう思いつつも、私が耳に意識を割くと、話しが始まった。
「今、来ている貴族の中にチャール・ユーレン伯爵という、きな臭い噂が立っている貴族様がいるんですよ」
アースベルトは警戒したような声でそう言った。
「きな臭い噂、ですかぁ」
私は、
(きな臭い噂って、何したんだ)
と思いながら、
「その噂というのは」
小さい声でアースベルトの耳元で問いかけると、
「敵国と繋がっているって噂があるんですよ、それに、親ゴッ」
二つ目を言おうとするところで、ロナルド君が何故か、アースベルトを叩いた。
(えっ、なに、怖いんだけど、暴力的)
私が心の中で唖然としながら、両者を見ていると、
「まぁ、兎に角、色々と怪しい貴族様が来ているんですよ」
アースベルトは何も無かったように、私にそう言い、離れていこうとした。
(おい、おいおいおい、重要な言葉まだだろ)
そう思った私は、アースベルトの手を掴み、引き寄せようとしたが、動かなかったので、自分から動き、
「それで、『もしかしたら』ってどういう意味なのでしょうか」
耳元に寄せ、そう質問を投げかけた。
本当に忘れていたように、思い出した顔をした後、
「アハハァ、すいません、お嬢様、忘れていました」
アースベルトはヘラヘラした様子でそう言った。
(おい、さっき、っ、大丈夫か、何て言うか、何か、普通に心配するんだけど)
私がガチのマジで心の中で心配をしていると、
「えぇと、『もしかしたら』というのは、例の貴族がお嬢様に擦り寄る可能性があるからです」
と私の心配とは裏腹にアースベルトは説明した。
(あぁ、あぁ、了解、了解、そう言うことね、純粋に気持ちが悪い事情ね)
私は心の中で、そう思いつつも、
「その貴族様というのはどのような容姿で」
ばったり会ったりしても、直ぐに逃げれるように聞くと、
「聞く話によると、『少し橙色が混じった茶色髪、それと、顔がかなりの美形』らしいです」
アースベルトはすぐに答えてくれた。
「ありがとうございます」
私は御礼を言いつつも、
(橙って事は、オレンジだよな、それで、美形か・・・・・何か、見たことあるなぁ、気のせいかなぁ、何か、マリーちゃんの特徴に似てるなぁ)
こう思ってしまったが、取り敢えず、考えないようにし、廊下の先を見ると、お茶を持ってきて貰っているマリーちゃんが見えた。
その後、私とマリーちゃんは、部屋の中に入り、お茶を淹れて貰いました。
紅茶って美味しいですね、私は珈琲と同じくらいに好きです。
マリーちゃんと一緒に居たとしても、まぁ、会話が永遠に続くわけがないので暇なため私が、
「本を取ってきますね」
こう言うと、
「あっ、私が取って参ります、お嬢様は、この部屋にてお待ちください」
とマリーちゃんに言われてしまうのでした。
前々回の補足
創造魔法の禁則事項を書いたと思いますが、あれは他の魔法に対し機能しません。
理由は、創造魔法使いを縛り、魔法としての地位や格を上げないためです。




