第12話 お師匠のご高説
(本当に大丈夫なのか、コイツ)
不安に思い不信の目を、目の前で鎮座している猫の姿をしている自称神に向け続けていると、
奴は私の視線に気付いたのか、気付いてないのか分からんが、
「大丈夫だよ、信じたまえよ。僕、神様だよ。魔法がすっごい得意なんだよ」
信じるにたる根拠を一個も出さず信用しろ、と要求された。
(無理でしょ。誰も信用しないでしょ)
と思いつつも、この猫野郎しか教われる人間?は、猫野郎曰く居ないらしいので、信じたくない話が事実だったとして、機嫌を損ねるのはまずいかな、と思い、
「分かりましたよ。分かりました、信じれば良いんでしょ」
不貞腐れたように言うと、
「君、顔と違って気が強いんだね。内見と外面が歪だね」
面白い玩具を見る子供っぽい表情、それを猫の顔でしていた。
(私、そんなに気が弱いような顔してたかな)
と思いつつも近くにあった鏡を覗いてみる。
そこには、なんとびっくりすっごい美人、寝間着の幸薄そうな美少女が立っていた。
(・・・何か自分で自分を褒める、ってナルシストっぽいな)
先程考えたことに自嘲気味に思い、
(これからは、自分で自分の容姿を褒めるの出来る限り止めよう)
と自重することにした。
私的には、なんだかナルシストというのは、とんでもなくダサいように感じたし、自惚れていると足を掬われるかも知れないな、と思ってしまったからだ。
(何か、自画自賛を続けたらすっごい悪い未来になる予感がビンビンする。不思議だ)
と一通りふざけた後、わざと待たせてる猫に向き直った。
「それで、最初は、何の魔法教えてくれんの」
一番重要な事を聞いた。ぶっきら棒に。
そして、それに奴は、
「教えるわけ無いよ」
きっぱりと言いやがった。
「どうしてですか」
怒りそうになったが、どうにか耐え、冷静な少女のかわいらしい声で問いかけてた。
どれくらい可愛げのある声かと言うと、前世の声優さんを思い出すくらいだ。
「そんなの君の魔力の量程度の微量さで、魔法なんて使ったら『死ぬ』に決まってるからね」
怖いことを言い出した。
(そんなわけ無いだろ。私の愛読書にもそんな事一節も書いてなかったし)
こう思い反論をしようとすると
「魔法書は、一般的には大人、中でも地位が高く、魔法に対する造詣のある成人した男、を対象にしているからだよ」
思考を読んだであろう猫は言い出した。
(そんな事も一言も書いてなかったぞ)
不信感とともに考えたが、直ぐにその考えを捨てることにした。
(そう言えば、魔法って一五歳以上からだったわ。・・・それに、此処はもう前世の『日本』じゃ無いのだから、男尊女卑の国家の可能性も存在する、と言うよりその可能性が高いだろう。もしかしたら、この世界全体に男尊女卑の考えが根を張っている可能性もある日本でも多少は、残り続けてたしね。まぁ、しょうが無いか)
と思ったからだ。
前世の、比較的平和な世界の常識ではいけないのだな、考えを改めねば、と思う。
「それじゃ、貴方に何を教われば良いんですか、猫さん」
魔法が教われないのならば何を教えてくれるんだ、と気になったので聞いてみた。
「君は、魔力を知っているだろ」
「はい」
「それじゃあ、魔力の成長のさせ方も知ってるかな」
「知ってはいるつもりですが、微妙です」
(本で得た情報が正しいとは限らないしね)
「じゃあ、君が知っている事を取りあえず言ってみてくれないか」
すると今まで歩き続けていた猫は、座って毛繕いをし始めた。
(これって、私の話聞くつもりなくね。言わすだけ言わして、無視するって、ひどいな。泣くぞさすがに私でも)
と毛繕いをしている猫にジト目を向けつつ、本の内容を思い出し始めた。
本の内容を暗記する、前世の私なら出来なかっただろう。
だが、何故かこの今世の私は、不思議なことに一度見たことをほとんど忘れないのだ。
(この能力、本当に前世で欲しかった。そうしたらもっと受験も簡単だったのに)
悔しがりながらも、口を開いた。
「まず、魔力の総量をあげる方法は、使い切る事これが必要で、使い切る事によって魔力は、回復の際満タンの魔力保有量を超え回復する、それにより魔力が増える。だが、この方法は、頭痛、吐き気、目眩、幻覚、幻聴等の様々な症状が魔力結合症によって起こる。魔力結合症とは、魔力が減ってしまった際に身体に残った魔力が生命の維持のために魔力が血液と混ざっていく物である・・・」
(あれ、あとはなんだっけ・・・)
「え〜と、あの、えーと・・あ~そうだ、あれだ。え~と、魔素が多いところだと増える量が多い」
多少うろ覚えの所もあったが、だいぶ自信満々に言い切る。
(何か、やっぱり知ってる物を説明するの、面白いわ。蘊蓄を話す快感やめられねぇ)
ふざけて目の前で鎮座してる奴の反応を待つ。
「君、結構記憶力いいんだね」
ちょっと圧巻したように、どこかバカにしたように言ってきた。
(何か、この反応、陽キャに専門知識をベラベラ話し続けた時みたいだな)
前世で感じたような雰囲気を感じてちょっと、と言うより大分恥ずかしさが湧き始めてしまった。
「何だよ。何か、その反応傷つくから止めてよ。てか、貴方が話せたんでしょ。それに、そこまで長くない事を私が覚えられない、とバカにしてたんですか。他にも────」
文句を返していると、
「魔力の量を増やす方法はあってるけど、純度を上げる方法が無いね。どうしてだい」
と言葉を遮られて言われた。
(・・・はて、そんな事、本に書いてあっただろうか)
きょとんとしていると笑いながら
「知らないのかい」
馬鹿にするように言われてしまった。
何かちょっとウザく感じてしまったが
「はい、知りません」
正直に聞くことにする事にした。
(知ったか振りして教えて貰えなかったらやばいからね、前世でもやったし)
そう思いながら、猫が話すのを待っていると猫は、今度は口を開かず話し始めた。
(これ、どうやってんだまぁ、いいや)
「魔力の純度それを上げる方法はね・・・」
若干出てきた主人公のチート能力的なものについて。
『大抵の事は忘れない能力』です。
簡単に言うと、ちょっとだけ記憶力がいいだけです。
なので、忘れるときは忘れます。
2023年3月27日、12:09
加筆、表現の変更、修正
2023/09/02、1:09
上記と同文




