第99話 やってしまったよ、私、やってしまったよ
「おい、糞野郎、何で何も伝えてなかったんだ」
俺が優雅に何かを飲んでいる野郎にそう言うと
「何のことかな、いや、どれのことかな」
野郎はしらばっくれるのが無理だと気付いたのかそう言ってきた。
「茶会のことだ、糞野郎」
俺が野郎に対して怒鳴る
「ハハハ、それのことか」
野郎は笑って返してきた。
「馬鹿かお前、笑い事では済ませれないぞ、最悪不敬罪でお前とお前の娘、妻、全員の頭が飛ぶかも知れないんだぞ」
俺がそう野郎に怒鳴ると
「僕は、と言うより、僕達の首が飛ぶはずが無いよ、皇帝にはそんな甲斐性も無ければ、それをする必要性も存在しない、それに僕は信用しているんだよ、僕の娘を」
不敬罪になりそうなことを言ってきた。
「信用ね~それでもし婚約が破断したらどうするんだ」
俺が野郎にそう問いかけると
「もし婚約が破断したら僕も万々歳だよ、まぁ、でも多分この婚約は直ぐに破断するよ」
信じられないことを言ってきた。
「根拠はあるのか」
俺がそう問いかけると
「貴族院は許さないよ、僕達が更に政界に影響力を伸ばすことを」
野郎はそう言ってきた。
「何故、お前の貴族院の影響力を恐れる必要性があるんだ」
俺がそう気になった事を問いかけると
「貴族は保守的だ、知らない物を恐れる、それに僕は少し前まで貴族院で発言権が無かった人間だ、屈辱的だろうさ」
コロコロと笑うように返された。
「だからって婚約が破断するとは限らないだろう、皇帝が望んでいるんだから、貴族連中も邪魔できないだろ」
俺が言うと
「隊長は皇帝の馬鹿が本当に婚約が望んでいると思うのか」
野郎は嗤うようにそう問いかけてきた。
「違うのか、相手側が望んできたんだろ」
俺がそう答えると
「あいつは別に望んでないよ」
野郎は信じられないことを言い出した。
___________
(え~、ウェ~、
私って名前で呼ばれてたっけかな、
呼ばれてないよね、私の事名前で呼ぶ人って、
この家の人だけだよね、そうだよね)
そう思っていると
「エミリー嬢、おい、
エミリー嬢、聞いているのか」
こう私に呼びかける声がどんどんと鮮明に聞こえ始めていた。
(あっ、やべ、無視してた、
これ不敬罪かな、大丈夫かな、
アウトだよな、
黒か白かと言われた凄い真っ黒だよな)
私がもう何か、
まともに、思考が回せない状況でそう考えていると
「エミリー嬢、聞こえないのか」
そう少しだけ寂しそうな声を出された。
(あっ、やばい、また無視してた、
これはヤバいな、寝た方が良いな、
まぁ、寝れないけど、ははは)
と心の中で無意味に笑った後に
「申し訳ありません、殿下」
そう謝って返した。
(私、地味に何回無視したんだ、
この殿下のことを)
そう思いながら殿下の方を見ると
『何故無視をしたのかを説明をしろ』
と言わんばかりの視線を向けられていた。
(えぇ、そんな目向けられても説明なんて無理だよ、
そのままの答えを言えば良いのか、
眠かった、ぼーとしていた、
この答えは流石に駄目だよね、
はぁああ、どうしようかな、打開策なんて思い付かんよ、
面倒くさい事になったな、ふぅうう、
よし、はい、よし、やるか、言い訳するか)
と心の中で文句を叫ぶように言った後に
「その、・・・」
言おうとしたところで
『コンコンコン』
と扉が叩かれる音が響いてきた。
(よし、名も知らぬメイドさん、
ありがとう、ガチでありがとう)
と心の中で呟いた後に
「おっ・・」
私が、
『お茶会の準備が終わったようなので、
通しても構いませんでしょうか』
と失態を無かったことにするための発言をしようとしたところで
「構わん、入れ」
皇族さんが怒ったような声でそう入室を促した。
(うっわ、怖、ヤバいな、
だいぶ怖いな、私、ガチで怒られてね、
これ、ヤバクネ、こっわ)
と心の中でビビって様な言葉を、
ていうか、普通にビビリ心中で言葉を呟くと、
一瞬、ほんの一瞬だけ、恨む、
いや、少し違うかな、まぁ、よく分らないが、
憎悪に近いような感じの悪寒を私は感じとった。
(えっt、なに、
こわ、へっ、怖、
私、恨まれるようなことしたっけ、・・・
したな、全然してたわ、
皇族さんのこと余裕で無視してたわ、
てか、公爵のおじさんも無視してたわ、
そりゃあ、恨まれるわな、
えぇ、誠に申し訳ありませんでした)
と心の中で自分の行動を振り返った後に、
私は、謝罪をした。
「しっ、失礼します、
お嬢様、お客様、お茶会の準備が終わりました」
メイドさん、
メイド長と呼ばれていた方の人は、
そう怖がったような声で言いながら扉を開けた。
(分るよ~、
怖いよね、怒らせた張本人が言うようなことじゃないけど)
そう心の中で呟きつつも私は、
「殿下、お手数をお掛けしますが、
お茶会をする場所まで移動をお願いしても構いませんでしょうか」
こう確認を取ると
「構わない」
拗ねたような怒ったような声で言ってきた。
(怖、私、殺されないよね、
不敬罪でしょっ引かれたりしないよね、
怖いんだけど、私が怒らせたことは悪いと思ってるけど、
流石にそんな事しないよね、しないよね)
心の中でそう呟きつつも私は、
膝をついた姿勢から立ち上がり
「えと、あの、
殿下、この、メイドに着いていって、
先にお茶会の場所に行って貰っても構いませんでしょうか」
私は、無責任だな、これは、
そう思いつつも言うと
「構わない、だが、
何故、エミリー嬢は一緒に来ないのだ」
と質問をしてきた。
「それは、その、
お花を摘みに行きたいのです」
私は、咄嗟に考えた言い訳をすると、
本当に行きたくなってしまった。
(あぁ、これ、ヤバいかもな)
そう思っていると
「すっ、すまない、
セバス、アウル、行くぞ、
それと、メイドよ頼むぞ」
と恥ずかしい様な声で言うと
「承知しました」
そうメイドさんが返答をする声が聞こえた。
私がチラッとメイドさんを見ると
『何で私一人で』
『お嬢様、どうして』
等々悲痛な声が聞こえそうな表情をしていた。




