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リル・ファーナが愛した悪魔  作者: 瀬河 柊
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追放


 昼間の雨が嘘のように、夜空には雲の切れ間に星と三日月が浮かんでいる。アライズはいつもより何処となく言葉少ななように契架には見えたが、そもそもあまりしゃべるタイプでもないので気のせいかもしれない。

 少し前に眠りに落ちたリルを寝室へ運んだので、広間にはアライズと契架の二人きりだった。相変わらず窓辺に腰掛け、その向こうに広がる夜空を言葉もなく見つめているアライズに、契架は話しかけるのを躊躇した。しかし聞くなら今しかないのもまた事実であり、意を決するとそっと呼び掛けた。

「アライズ様。」

「…何だ?」

 アライズは契架の方を向こうとはしなかったが、とりあえず答えてくれたことに僅かに安堵し、我知らず詰めていた息を吐き出した。

「その…お聞きしたいことが。」

 今度は答えなかったが、アライズの首が小さく動き先を促す。

「…何故、叔父上はアライズ様を追放なされたのですか…?」

 その言葉が空気を震わせアライズの耳にあるいは頭に届いた瞬間、まるで射殺しそうなほどの鋭い視線が恐ろしいほどの速さで契架に向けられる。思わずビクッと首をすくめた契架の様子に、アライズは自嘲的な溜め息をついた。

「セルリアに聞いたのか。」

 その冷え切った声音は昼間セルリアに向けられたものと同種の冷たさを孕んでおり、その一言には契架があの場所にいて二人の会話を聞き、その後セルリア自身と接触を図った事までの全てを見透かしている。

「すみません…。」

 しゅんとうな垂れて謝罪すると、アライズは再び窓の向こうへ顔を向けてしまう。

「いや…。」

 しかし小さな呟きからは先程の冷たさは抜け落ちており、静寂が広がる広間にただ力なく響いた。それっきりアライズは窓の向こうを見たまま黙り込んでしまい、契架はどうしたらいいかうろたえた。

さらに重ねて尋ねるべきか、不自然極まりないが別の話題を振るか、もういっそ立ち去ってしまうか。いずれの行動を起こすにもとりあえず何か言わねばと息を吸い込んだ時。

「何故…というなら、当主の座が欲しかったからだろう。」

 ぽつりと夜の闇に溶けていきそうな声が空気を震わせた。

「どうして…追放される理由なんて、アライズ様には無いのに…?」

 これ以上聞けば更に怒らせるかもしれないと思いつつも契架は恐る恐る尋ねたが、しかし先程のように冷たい視線や声は飛んでは来なかった。

「誰にも話すつもりはなかったのだがな…。」

 アライズは契架の方を見ることなく話し始めた。


 ディスカナン。その名を魔界で知らぬ者はいない、魔界でも一、二を争う名家。当然、七名家の一角でありその名が持つ影響力は計り知れない。そんなディスカナン家の前当主リザルド・イーヴェル・ライ・ディスカナンとその妻ミーティアの一人息子、それがアライズ・トレスフィア・リズラヴァーゼ・ディスカナンである。

 現当主である叔父ヴィハイドはリザルドの腹違いの弟にあたる。魔界では原則的に長子が後を継ぐ。従ってリザルドがいる限り、ヴィハイドにディスカナンの継承権は存在しない。しかしヴィハイドはその継承権が自分の物にほぼ間違いなくなると信じていた。

 理由はいたって簡単。リザルドが非常に短命だったからだ。

 悪魔は生まれてすぐ、寿命を知る。そのような術式が存在し、生後まもなく術式を用いてその子供が何歳まで生きるのか見るのが当たり前なのだ。

 リザルドの寿命は僅か百五十年だった。その数字だけ聞くと途方もなく思えるが、悪魔の寿命は人間の約十倍。百五十歳は人間で言えば十五歳ほどのことである。この事はリザルド本人もそしてヴィハイドも知っていた。寿命が何年であろうとそれを本人に伝えるのは魔界では当然のことで、いかなる悪魔も自分の寿命を知った上で生きている。

 後を継ぐべき長男は百五十年で死ぬ。しかし本妻との間に第二子が出来なかったリザルドの父は、愛人の子を連れてきた。。従ってリザルドの死後、継承権は次男である自分に降りてくる。ヴィハイドはそう教えられディスカナンの屋敷へとやってきた。

 しかし当主となるべき教育はリザルドにのみ施された。これも当然の事で、一族の秘密は血縁者だろうと何だろうと、現当主とその跡継ぎしか知ってはならないからであり、リザルドが死んだ後はヴィハイドに教育が施されるがそれまではリザルドしか知ってはならないのだ。

 しかしどうせ死んでしまうのなら、教えても無駄ではないのか?そうではないのだ。悪魔には唯一つだけ寿命を延ばす方法がある。

 それは「結婚」することである。悪魔は結婚するときに初めて口付けを交わす。すると二人の残りの寿命はきっちり二等分され結婚した相手と死ぬ瞬間を共にする。それゆえ、結婚する相手以外とは決して唇が触れてはならないのだ。

 従ってリザルドが寿命を迎えるまでに十分な寿命のある者と結婚すれば、そのまま当主になることが出来る。だからこそ実際に死んでしまうまでは次期当主の教育を施すことになるのだ。とは言え、この場合の結婚は決して簡単なことではない。短命の者と結婚すれば結婚した側は間違いなく自らの寿命を縮めてしまうだけなのだから。

 それを承知している為か、リザルドは積極的に結婚相手を探したりはしなかった。当主としての教育や秘術の継承を誰もが舌を巻くほどの才能を見せつけあっという間に物にして以来、何処か浮世離れした空気を持つリザルドはフラフラと街中を歩き回っていたとか。そんな最中、ひょんなことからミーティアと出会い、信じられないことに結婚するに至った。実にリザルド百四十九歳の時のことだったと言う。


 周囲は大いに祝福した。リザルドの寿命がほとんど残っていなかったゆえに、ミーティアの寿命をほぼ半分貰う形になってしまった為、二人の寿命自体も決して長いとはいえなくなってしまったが、それでもディスカナンを継承し世継ぎを残すには十分とまで言えずとも、可能だと言えるだけの時間は出来たのだ。

 しかし満ちるお祝いムードの中、一人憎しみを抱く者がいた。言わずもがなヴィハイドである。もうあと一年ほどで我が物になるはずだった次期当主の夢が霧散してしまった絶望と言えば言葉になるものではない。

 だがヴィハイドはしばしの後、思い直す。このまま二人に子が出来ず寿命を迎えれば、やはり自分の手に当主の座は落ちてくる。ほんの少し、先延ばしになっただけだ、と。

 ヴィハイドは数いる結婚相手の中から、自分より更に寿命の長い女性を選んだ。何が何でも当主の座を得て、少しでも長く居座る為には長く生きることが必要だったからだ。リザルドたちになかなか子供が出来ないことにほくそ笑みながら、来るべき日を想像した。


 しかしまたもヴィハイドの黒い野望は打ち砕かれる。アライズが生まれたのだ。子を為すまでにやや時間の掛かったリザルドたちは教育や秘術の継承が間に合うかと焦っていたが、アライズは父似の類まれなる才能を発揮し幼いうちにそれらを次々吸収していった。

 事ここにきて、ヴィハイドの憎しみは限界まで募った。アライズが生まれたからにはいよいよ持って、自分に継承権が来る可能性が潰えてしまったのだ。アライズはリザルドのように短命でもない。先に寿命を迎えるのはどうあがいても自分である。それでは一体何のためにディスカナンへと連れてこられたのだろうか。

 そして黒々とした憎しみはリザルドたちが亡くなった頃、一つの答えに行き着いてしまう。

 アライズを「追放」してしまえばいいと。


「…魔界においてディスカナンの当主という肩書きは絶大だ。それを己が物に出来ると言われ連れてこられたのだ。何がなんでも欲しかっただろう。」

 アライズの声は淡々としていて、感情を窺わせない。

「そんな…何の罪もないのに、当主になりたいからなんて理由で、簡単に追放できるんですか…?」

 契架が問うが、アライズは一度たりともこちらを見ることはしない。窓の向こう、あるいは此処ではない何処かを見つめたままただ言葉を接ぐ。


 両親が亡くなり、アライズが正式にディスカナン当主の座に着く日が迫ってきたある日。ヴィハイドが不意に訪ねて来た。結婚してからは郊外にディスカナンの権力を行使して立てた大きすぎる屋敷に住んでいたので、こうして直接アライズを訪ねてくるのは初めての事だった。

「何か御用ですか。」

 アライズが感情なく尋ねると、ヴィハイドは取ってつけたようなニヤニヤした笑みのまま話し出す。

「いや、この度は兄上が亡くなられて大変だったね。」

 その言葉が本心から出た物ではないことくらい、火を見るより明らかでアライズは露骨にうんざりとした表情を見せる。しかしヴィハイドは特に気にする風もない。

「それでだね、アライズ君は子供とは思えぬほど大人びているが、やはりこういうのは大人のほうがいいと思ってね。」

 そして嫌味ったらしい笑みをますます深めた。

「私が次期当主になってあげようと思うのだよ。」

 アライズは露骨に眉を寄せ、侮蔑の視線を送った。

「何を思って…。貴方は当主としての教育も秘術の会得もされていないと聞いています。それでは当主にはなれまい。」

 アライズが無遠慮に言うと、さすがのヴィハイドも眉間の辺りに皺を寄せ、苛立ちを見せた。

「だが魔界を統べる七名家のディスカナン、その当主が子供というのもね。」

「父より全てを習っているので、問題は何もないでしょう。」

 話はそれだけだと言わんばかりに背を向け、アライズが立ち去ろうとする。

「待ちたまえ!」

 その背に鋭い苛立ちを含んだ声が飛ばされる。鬱陶しそうに振り返るとヴィハイドは怪しい笑みを浮かべていた。

「問題はあるのだよ。」

 アライズがピクリと眉を動かすのを、獲物をいたぶるかの表情で見つめてくる。

「お前は当主になれない事が既に決まっているのさ。」

「…何だって?」

 アライズの顔に苛立ちが浮かぶと、尚も面白そうにニヤニヤと笑う。

「お前の追放が決定したんだ!」

 そう叫ぶように言うと、懐から一枚の書状を取り出してこちらへ突き出して見せた。アライズは受け取ることはせず、突き出されたままにそこに並ぶ文字を目で追う。

 それは確かに七名家のみが発行できる追放決定の書状で、七名家中五名家の証印が押されている。もちろん押されていない二名家のうち片方はディスカナンの印であり、ディスカナンの証印は現在アライズの部屋に保管されている。過半数の証印を持って可決に至る魔界の規則に則れば、この書状は有効な物だと言える。追放者名は、紛れもなく自分。

「…どのように他の名家に証印させた?」

 怒りが胸の内に生まれるのを感じながら聞くと、ヴィハイドは得意げに答える。

「少々お前の両親の話を持ち出したのさ。」

「父上と母上の…?」

「お前の親は人界にいるハーフの援助なんかに積極的だったからな。」

 悪魔の中には今も根強く人間や、悪魔と人のハーフを毛嫌いする風潮が残っている。魔力を持つ自分たちこそが優れていると言う巨大な自尊心が多くの悪魔の中にあるのだ。それはこの叔父も例外ではない。

 しかしアライズの両親は、ハーフはもちろん人間でさえ共存できると考え、その手始めとし人界で迫害されたり生活に困窮するハーフたちへの援助を積極的に行っていた。それを快く思わない連中がいることも重々承知の上で。

「だからお前はその意志を受け継いで、当主になったらその権力に物を言わせこの魔界にハーフを入れようとしているようだ…と言ったら、ほとんどの名家が信じてくれたのさ。」

「…父上と母上の行動を愚弄した挙句、そんな真っ赤な嘘を!」

 アライズは両親の行動は立派だと思っていたし、悪魔だの人間だのハーフだのと線引くのは下らない考えだとは思っていたが、意志を継ぐだとか権力を盾にハーフを招き入れるなどとは考えたことさえない。

 ついに怒鳴ったアライズにヴィハイドはいたく勝ち誇ったように口の端を上げた。

「あぁ、嘘さ。だけどお前にそれを証明する術も時間も無い。何せ、もう決定したことだ。」

 そう言ってアライズの目の前に差し出した書状を得意げに揺らす。

 ギリギリと音がしそうなほど奥歯を噛み締め、書状の向こう側のヴィハイドを射殺さんばかりに睨みつける。しかしもう手の打ちようが無い事も分かっていた。

「さぁ、これを持って魔界を出て行くがいい。」

 アライズは突き出された書状を乱暴にヴィハイドの手から引ったくると、そのままの勢いで部屋の扉へ向かう。

「貴様だけは決して許さない…!」

 扉を開けたところで振り返らずにそう言うと、ヴィハイドが笑いを噛み締める声が響く。

「何とでも言うがいいさ!勝ったのは私だ!」

 ヴィハイドの言葉が終わるより早く、乱暴に扉を閉め自室へ向かった。


 アライズらしくないほどの荒い歩きように、すれ違った使用人たちが驚き廊下の端へ飛び退くのも構わず通り過ぎ、バンッと手荒く自室の扉を開けた。

「アライズ様!?どうされたのですか?叔父上とのお話は御済に…?」

 部屋の中を片していたセルリアが驚いた表情でアライズに駆け寄ってくる。アライズは何も答えずに力いっぱい握り締めぐちゃっとなった書状をぐいっとセルリアに押し付け、部屋の奥に据え付けられたクローゼットへ向かう。

「これは…?」

 押し付けられた書状を不思議そうに見つめ、デスクの上で丁寧に皺を伸ばしながら内容に目を通してセルリアは驚愕した。

「どういうことですか!?」

 しかしアライズは答えずにクローゼットの中から一枚のローブを取り出した。母が作り、父が着ていた二人の遺品。息子のアライズの眼から見てもぽやーっとした雰囲気の父は、いまいち名家の当主と言う威厳に欠け、同じことを思ったのであろう母が「人前に出る時はコレを着なさい!少しは威厳が出るでしょ!?」と仕立てた、フードの着いた濃紺色のローブはまだアライズにはやや大きいが、これを置いていくわけにはいかない。

「どういうことも何も、そこに書いてある通りだ。詳細が知りたければ次期当主に聞け。」

 ローブに袖を通し、ようやく少しだけ怒りの波が収まる。乱暴に開けたクローゼットをそっと閉めた。

「わ…私も行きます!」

 セルリアが言うと、今度はアライズが驚きセルリアを見つめた。

「私はアライズ様の付き人です。アライズ様が出て行かれるなら、私も…!」

「それは少し違うな。」

 だがアライズはセルリアの言葉を遮った。

「セルリアは『ディスカナン次期当主』の付き人だ。…我ではなく、叔父上のな。」

「っ…!」

 言葉に詰まりうな垂れるセルリアの様子に、アライズはほんの少しだけ口元に笑みを浮かべた。

「お前なら心配ない。ディスカナンを頼む。」

 そう言って、セルリアが皺を伸ばした書状をデスクから拾い上げると、ポンと一度セルリアの頭を軽く撫でその脇を通り過ぎる。

「な…、何かお役に立てることがあれば呼んでください!私はいつでもお手伝いいたしますからっ…。」

 その言葉に、扉に手を掛けたまま首だけで振り返るが、セルリアはこちらに背を向けている。その肩が小さく震えていた。

「…ありがとう。」

 小さく呟くようにその背へ声をかけ、アライズは屋敷を後にした。


 魔界から外へ繋がる唯一の門が視界に入ったところで、アライズは翼を畳み地面へ降り立った。そこを守る守衛は門に向かって真っ直ぐ歩いてくるアライズに気付き姿勢を正した。

「ディスカナン様、どのようなご用向きでしょうか?」

 はきはきとした声で問う守衛に、皺の後が残る書状をセルリアにしたのと同じように押し付ける。慌てて受け取った守衛が目を通す間にも、アライズは足を止めず門に向かって歩いた。

「あ、あのっ!?これは一体…!?」

 名家の者が追放になるなど類を見ないことに守衛は驚愕とともに説明を求めるが、アライズは一瞥すらせず足を止めると右手を真っ直ぐに門に向けて突き出す。

「早く開けろ。開けねば壊す。」

 一言そう言って、突き出した右の手のひらにキィィンと空気を切り裂く音を放ちながら魔力を集中させていく。その様子に守衛はギョッとして慌てて門の手前に設置された小屋へ駆けて行く。

「す、すぐに!」

 その言葉通り守衛が素早く開閉のレバーを引くと、基本的に開くことのない大門はギィギィと軋みながらゆっくりと開き始める。アライズは魔力を集めかけた右手を乱雑にパッと払って魔力を拡散させると、門が開ききるより早くその向こうへ飛び出した。


「今では姑息な策を弄した叔父上がディスカナンの当主だ。」

 アライズは長い話をそう締め括ると、黙り込んでしまった。契架は初めて聞いたとんでもない話を理解するのに必死だった。

「ご両親がハーフに援助をしていたことを引き合いに出されて、追放されたってことですか…?」

 契架が独り言のように言う。

「…そうだな。だが、母上にも父上にも非は無い。」

 アライズも独り言のようなトーンだが、後半はやや力強く言い切った。

「そんな嘘にさえ印を押してしまうくらい、悪魔は人間やハーフが嫌いなんですか…?」

「…無論全ての悪魔が、というわけではない。しかし基本的に悪魔は人間を嫌うし、人間も悪魔を嫌っている。だからこそ世界は人界と魔界に分かれているのだから。」

 そういえばあの青騎士の少女も悪魔が嫌いなようだった。そして此処が悪魔の森だから人は入って来ない。人が当たり前のように悪魔を嫌うのと同じく、悪魔も人を嫌っている。

「それなら、なんでハーフなんて生まれるんですか…?」

 契架自身見たことも無い両親だが、悪魔と人間が愛し合った結果生まれた存在のはずだ。するとアライズはようやく契架の方へ首を向けた。

「…追放になった悪魔は別に我だけではない。様々な理由で追放となった悪魔が人界で暮らすうちに人と結ばれることもある。また稀ではあるが魔界の者も必要に応じて人界に出向いたりする。そんな折に人と心通わす者がいることもまた事実だ。だからこそ追放という罰が存在する。」

 人と悪魔の接点は、契架が知らなかっただけで意外と存在するものだという事だ。

「悪魔は純血であることにこだわる、…人と愛し合った悪魔も追放の対象だからな。」

 つまり契架の両親もそういう風に出会ったのだろう、とアライズは言っているのだ。

「…よく分かりません。」

 契架はぽつりと呟く。

「僕はここでアライズ様とリルと生活して、これが当たり前だから種族が違うからって理由で嫌ったり、追い出したり…って、よく分からないです…。」

 人界の片隅で生活を共にする悪魔と人間とハーフ。それが契架にとって今は全てだ。確かに過去には人界で酷い目に合わされたこともあったけれど。

「いきなり聞かされた話だ、分からなくても当然だろう、…正直、我にもよく分からぬ。」

 とりあえずこの長い話と絡まった憎み合う関係は、すぐに本質を理解することは難しそうだった。


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