すずめ閑話
ある晴れた空のもと、二羽のすずめが電線に止まっていました。
「ああ、今日はとってもいい天気だね。」一羽のすずめが言いました。
「ほんとだねぇ、真っ青な空だね。」もう一羽も言いました。
そこへランドセルを背負った男の子が通りかかりました。男の子はすずめを見つけると、石を拾って投げつけました。しかし、石は大きくそれて電柱に当たって、跳ね返り男の子の頭に当たりました。
「痛っ!」男の子は頭に手をやり、その痛さに泣きながら帰りました。
すずめが言いました。
「人間はバカだね。誰かに悪意を向けると、めぐり巡って自分に帰って来るってのが分からないのかねぇ。今のは極端なれいだけどね。」
「そうだよね。」
そう言ったすずめが、別の方に目をやりました。
「こっちの子は何をしてるんだろう?」
そう言って、見たのは用水路の近くにいる男の子でした。 その子は笹船を作っていました。そしてアリを捕まえると笹船に乗せ用水路に流しました。
驚いたのはアリです。小さな用水路ですが、アリにとっては大河とも言えます。笹船がひっくり返ったら終わりです。アリは上下に揺られながら必死に笹船につかまっています。
「あ~あ、あんな事をしたら、自分に水難の相が出来るのになあ。」すずめが言いました。
アリがふわりと浮く感覚にとらわれました。男の子が先回りして笹船を拾い上げたのでした。男の子はアリを地面に降ろしました。アリはホッとして巣に向かいました。
「まあ、ましだね。水難の相は消えた。」
「子供特有の好奇心ってやつだね。」
すずめは言いながら別の男の子に目をやりました。
「あのバス停にいる子はどうだい?」
「あの子はいいね。」
「どうしてだい?」
「前についてった事があるけど、毎日病院に入院してるお母さんの見舞いに行ってるんだよ。」
「誰かに愛情を注ぐ者は、誰かに愛情を注がれる、だね。」
「そうそう。」
「ところで僕らは正しく生きているかねえ?」
「僕らはしょせん、すずめさ。エサを探して食べ、巣を作り子を育て空を飛び回る。それだけさ。」
「あっ、いつもの女の子が公園に入って行くよ。」
「僕らにパンをくれる子だね。閑話はこれくらいにして、僕らもごちそうにありつこうか。」
二羽のすずめは公園に向かいました。公園では、ベンチに座ってパンを投げる女の子に数羽のすずめが群がってました。
女の子は、時間が気になるのか腕時計をみています。何か用事でもあるのでしょうか。パンがなくなると、女の子は立ち上がりました。
すずめは女の子の顔を見て思いました。
(いかん、死相が出てる。)
女の子は公園の外へと駆け出しました。
すずめは後を追いかけました。
走って行く女の子がブロック塀の角まで来た時、すずめは女の子の前を横切りました。女の子はびっくりして立ち止まりました。
すると女の子の目の前を自動車が通り過ぎました。そのまま飛び出してれば、跳ね飛ばされていたでしょう。
電線に戻ったすずめは、待っていたすずめに言われました。
「いい事をしたね。」
「あんな優しい子はほっとけないよ。」
「さて、閑話を続けるか。次はどの子だい?」
(了)