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×嘘×

嘘…それはときに人を悲しませるもの。


嘘…それはときに憎しみをうむもの。


嘘…それはときに幸せをうむもの。



そう…僕があのときであった嘘は…







−×嘘×−







空が赤から黒に変わりはじめた午後。人々は急ぎ足で家へと向かっていた。

今日はクリスマス…


そんな日なだけあって歩いている人達の手にはキレイにラッピングされたプレゼント箱や、袋があった。


俺はそんな人達の流れをみながら深くため息をついた。

自分のポケットに手を入れる。すると指先に何にかがあたった。

赤いリボンが結ばれた小さい箱…

俺はそれをチラリと見てまた深くため息をついた。



−−僕の代わりに妹に会ってくれないか?−−


あの人の言葉が頭の中で回りだす。


−−大丈夫、おまえの声は、僕にそっくりだし、それに僕の妹は目が見えないから−−


−−たのみましたよ…杉崎 葵…−−


「聖也先輩…」


あの人…聖也先輩は、3日前に亡くなった…

重い病気だったらしい。先輩とは、仲がよかったから、すごくショックだった。


そして、そんな俺の大好きな先輩の頼みで俺は今ここにいる。




先輩の妹と会うために…




しばらくすると向こうの方から白い杖おついた少女がやってきた。


「天音!」


俺はその少女に声をかける。


「おにぃさま!」


そう言いながらその少女は、俺の居るところに歩みよる。


そう、この少女こそが聖也先輩の妹…風上カザカミ 天音アマネだ。




「おにぃさま。私すごく会いたかったです!」


天音はそういいながら、俺にギュッと抱きついた。「俺もだよ。天音。」


そう言いながら天音の頭を優しく撫でてやる。すると天音は、気持ち良さそうに笑った。

しかし、それもほんの数秒。はっと我に帰り、 少し顔を赤くしながら俺から離れた

「おにぃさま…」


まだ少し赤い顔で天音は俺を見た。


「何?」


俺がそう言うと、天音はニッコリ笑いながら俺に言う。


「お帰りなさい。」

僕わ嬉しそうな天音を見ながら、ニッコリ笑い


「ただいま。」


といった。



「お兄様!あの…あのわたくし行きたい場所があるのですが…」


「うん?いいよ。何処に行きたいの?」


僕がそう言うと、天音は僕の手を握ってさっき以上にニッコリ笑い


「ひみつです!」


と言って、僕の手をぐいぐい引っ張り歩きだした。






数十分くらい歩いた。


天音は相変わらず僕の腕を握ったまま歩いている

いったい何処に行くんだろう?

それにしても天音は目が見えないのに歩くの速いなぁ…

慣れてるのか?


「つきました!」


そうこう考えてるうちに目的地に着いたみたいだ。それにしても…ここは…


「イルミネーションかぁ…」


そこには、白や青の光でキレイに飾られた木々が立ち並ぶ通りだった。

中心の所には大きなクリスマスツリーが、キラキラと輝いている。


「キレイでしょ!」


天音は僕の方を向いてニッコリ笑った。


「あぁ。」


僕もニッコリ笑って答える。

本当にキレイだ…

キレイな物なんていくらでも見てきたつもりだったけど、やっぱりキレイだと思う。


「二日前程に見つけたんです。ここすごくキレイだと評判で、お兄様に絶対見せようと思ったんです。」


天音は、イルミネーションの方に顔向けながら言った。


「見えているのか?」


不意に思った疑問だった。

さっきから天音はまるで見えているようなそぶりを見せることがあった。


「いえ…ただ明るい暗いは解るんで…なんていうか…その場のふいんき…ですかね?それで解るんです。」


天音は少し困ったような笑顔で笑いながら言った。

「そっか。」


見えてるのかと思ったけど、やっぱりきのせいか…


そんなことを考えていると、ふと頬に冷たいものが触れた。


「雪だ。」


僕の言葉に反応して天音も空を向く。

雪なんて久しぶりに見たな。

最後に見たのはいつだったかな…

そうだ、2年前の…あの時も、たしかクリスマスで…それで、たしか一緒にいたのは…


そこでふとポケットに手をいれた。


そう…あの時一緒にいたのは、聖也先輩だった。


僕はポケットの中身を掴んだ。


そうだ、僕はコレを渡しに来たんだ。

ちゃんと渡さなきゃ。


「天音…」


「なんですか?


ニッコリと笑って天音がこっちを向く。


「あのさ…」


そこで僕はふと思った。コレを僕が渡してしまってはたして本当にいいのだろうか?

確かに、今の僕は天音にとっては聖也先輩だ。

だから僕がコレを渡したってなんら問題はない。

でも本当にこれでいいのだろうか?

きっと天音は、遅かれ早かれ、聖也先輩の死を知るだろう。

天音の最後の聖也先輩の姿がはたして本当に僕でいいのだろうか?


「お兄…さま?」


気がつくと僕は天音を抱きしめていた。


「あっ!ご、ゴメン!」


僕は、慌てて天音から離れた。


「あー…えっと…天音。寒くないか?」


「えぇ。大じょ…ぶ…」


「天音?」


天音は、俯いて何か考えこんでしまった。

さっきのが、まずかったか…


「あま…

「お兄様!!」


天音はいきなり顔を上げると辺りに響くような声でいった。


「ど、どうした?」


あまりに突然のことで言葉がどもってしまう。


「お兄様…いえ、聖也さん。」


「あま…ね…?」


「私、私あなたに謝らなきゃいけないことがあります!」


天音は、いきなりどうしたんだ?


「私…あなたに…聖也さんに嘘ついてました。」


「え?」


「私…私、天音じゃないんです!」


「ど…どういうことだ?」


天音が天音じゃない…?

じゃぁ僕は何の為に…?


「どうして…」

「実は、天音は先日亡くなりました。」


「え?」


亡くなった?

天音も?


「なんか重い病気だったみたいで…」


おい…ちょっとまて…天音が死んでて…聖也先輩も死んでて…なんか出来過ぎてないか?


「信じられないですよね…あんなに元気だったのに…本当に…なかなか言い出せなくてすみません。聖也さん。」


聖也…違う…僕は…


「謝らないで…謝らなきゃいけないのは僕のほうだ…」


「え?」


「聖也先輩もすでに亡くなってる…」


「それじゃ…貴方は…?」


「僕は聖也先輩ではありません…」


「うそ…」


「僕は聖也先輩と仲のいい後輩の杉崎 葵です…」

そう僕が言うと、目の前えの女の子は凄く驚いた顔をした。


「え…杉崎?え?なんで?葵?え?うそ?」


「どうか…しました?」


何にこの子は戸惑っているのだろうか?


「あっ、あの!葵さんはもしかして、妹っていますか?」


「いるけど…」


「もっ、もしかして、その妹さんとは生き別れていますか!?」


え?なっ…何でそのことを…

この子…まさか!?


「もしかして…美沙兎?」


杉崎すぎさき 美沙兎みさと…僕が9才のときに親が離婚し、離れ離れになった2こ下の僕の妹…

どこにいったかわからず僕らは親が離婚して以来会ったことはなかった…


「やっぱり…お兄ちゃん…だよね?」


「あぁ…」


「お兄ちゃん!」


美沙兎は僕に勢いよく抱きつくと嬉しさの余り泣き出した。

僕はそんな美沙兎の背中にそっと…だが、しかっりと手をまわす。


「お兄ちゃん…会いたかった…会いたかったよ…お兄ちゃん…」


「僕もだよ…美沙兎…」


僕はわんわん泣く美沙兎の背中を優しく摩る。

その間も泣くことを止めない美沙兎を僕は優しく優しく撫でた。




どれくらい、こうしていただろう?

美沙兎は落ち着いたが、まだ啜り泣きをしている。


−パチパチパチ−


ふと、横から拍手の音が聞こえた…

そこに目を向けるとそこにいたのは…


「聖也…先輩?」

「天音…!」


にこにこ笑ってこっちを見ていたのは聖也先輩と天音だった。


「葵。よかったですね。」


「聖也先輩…?うそ…生きてる?」


そう僕が言うと、あっ!っという顔をして苦笑いをしながら聖也先輩が僕に言った。


「そうでしたね。俺は葵に嘘をつきました。本当にすいません。」


「ごめんなさい。美沙兎。」


そう言うと、聖也先輩と天音は僕らに頭を下げた。


「やめてください。先輩。」


「そうそう。だから、ね?謝らないで。天音。」


「いや…謝らせてください…もっと考えるべきだった…そしたら、あんなに葵を悲しませずにすんだんですから…」


「いいんですよ。それに、ほら、聖也先輩は妹には会いたいけど、どう会ぅたかったらいいかわかんなくて、会うのが怖くなってきた僕にきおつかってくれたんでしょ?」


「しかし…」


「そんだけ聖也先輩が僕のこと考えてくれただけでうれしいですよ。」


「すまないな…」


そう言うと、聖也先輩は僕のすぐ近くまで寄ってきて、僕の耳元で

「これ、あけて。」と囁きながらポンポンっと僕のポケットを叩いた。

僕はポケットの中に手を入れる。

すると手に何かが触れた。


「あ…!」


赤いリボンに結ばれた小さなプレゼント箱。

それを僕はポケットから出し、それをあける。

するとその中には写真を中に入れるタイプのネックレスが入っていた。

そこにうつっていたのは…


「これは…」


「まだ小さい葵と美沙兎ですよ。」


そう言いながら聖也先輩はニッコリ笑う。

美沙兎も驚いた様子で、写真を覗き込んでいる。


「何故これを…?」


「本当はこれでネタばらしのつもりだったんだけどね…なかなか上手くいかないものだ。」


そう言って先輩は困ったように笑った。

そして先輩は僕が握っているネックレスをとって、僕の首につけた。


「MerryChristmas!葵。美沙兎ちゃん。」




嘘…それはときに人を悲しませるもの。


嘘…それはときに憎しみをうむもの。


嘘…それはときに人を幸せにするもの。




あぁ…

今日もどこかで嘘が渦巻く。

それは、悲しみか、憎しみか、それとも幸せか…

僕は知らない。

知るよしもない。


でも僕がであった嘘はとっておきの幸せでした。



「MerryChristmas。聖也先輩!天音ちゃん!」




どうかあなたが出会う嘘も幸せでありますように。

なんか下手くそですみません…

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