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流星仮面  作者: 矢部 さとし
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1-6【スーツの素体】

 オジサンから『見せたいものがある』と連絡が来たので、

朝食を終えた僕は早速オジサンの家へと向かった


 今日は祝日だから、学校も無し。


 仮に1日中オジサンの家にいても、問題は無いだろう。


 自転車に乗って走ること、10数分あまり。


 再びオジサンの家に来た僕はチャイムを鳴らした。


哲「あー隆政、こっちだ、こっち」


 すると、ガレージのところからオジサンが顔を出しながら僕を呼んだ。


 自転車ごとガレージの中に入ると、

そこには大きなバンが停められていた。


 確か仕事用に使っている車で、

機材や道具やらを積んでいるらしい。


 技術者であるオジサンは時々遠方へと仕事に出かけることもあるから、

そんな時に役立つそうである。


隆政「それで、手に入ったの?」


哲「まぁな。

  それと、面白い物も手に入ってな」


隆政「面白い物?」


哲「あぁ、中を見てみろ」


 ニヤニヤと笑うオジサンに指示されて、

バンの荷台を覗き込んだ。


隆政「…な、なに、これ…?」


 そこにあったのは、まるで日本の甲冑を模したような鎧だった。


 …いや、違う…これって…。


隆政「ロボットスーツか何か?」


哲「おしいな!

  正確には戦闘用の、タクティカルアーマーさ」


隆政「タクティカルアーマー?」


哲「昔で言う鎧だよ。

  それをより戦闘向けに改良したのが、

  タクティカルアーマーってやつさ」


隆政「へー…」


 オジサンが言うように、

鎧にしては凄くスタイリッシュなデザインだ。


 ただところどころに傷があり、

正直言うとかなりボロボロ。


 オマケに胸部には鋭利な刃物か何かでつけられた、

大きな傷跡さえあった。


隆政「で、どうしたの、これ?」


哲「ほら、隆政がスーパーヒーローになりたいって言うから、

  会社の倉庫から拝借してきたんだよ」


隆政「拝借…て…!?

   大丈夫なの、そんなことして!?」


 ただでさえ、人工筋肉の試作品を取ってくることでさえ大事(おおごと)なのに、

こんな御大層な物まで持ってくるとなると、

大問題に発展しかねない。


哲「…あぁ多分、大丈夫だろう」


隆政「多分…!?」


哲「こいつの出所はよくわからんが、

  データによると作られたのは20年くらい前なんだよ」


隆政「20年前? そんな昔?」


 このような装備はロボットスーツの開発などで近年たまに見かけるようになったけれど、

20年前にこんな代物があったとは、正直驚いた。


哲「ただ量産には至らなかったらしい。

  何せ20年前と今じゃ、技術とそれに伴う資金があまりにも膨大過ぎたんだ。

  …まぁそれもあってか、この1体に惜しみない技術と資金をつぎ込んだらしい」


隆政「そんな代物なら、ますます問題じゃ…」


哲「確かに会社の所有物だけど管理者の話しによれば、

  とっくの昔にデータの解析は終わっていて、

  状態も状態だからスクラップ行きが確定していたんだと。

  …けど、元の持ち主か誰かが、

  とりあえず残しておいてくれ、て頼んだそうだ。

  そういう経緯もあって、こいつの存在を知る者はほとんどいないよ」


 恐らく近年における技術力の向上に伴い、

新しい装備品の開発のためにこのスーツを研究材料としたのだろう。


 …で、大方データも取れたことだし、

もう古い代物だから捨ててしまおうと。


 そういう点では車やパソコンと同じように、

わざわざ修理してしまうよりかは新しいものに変えた方が安上がりな時もある。


 …にも関わらず、廃棄を寸前で止めて残しておくよう指示が入った。


 これだけボロボロな状態なのに残しておいて欲しいとは…

その人も、随分変わり者なんだな。


隆政「それで、これを持ってきたってことは…」


 何となく想像はできたけれど、一応質問してみた。


哲「あぁ、これを素体にしてスーパーヒーローのスーツを作ってやる」


 そしてオジサンは親指を立てるとハリウッドスターよろしく、

ニヤリと笑ってみせた。


隆政「ほんとに!?」


哲「あぁ任せろ、可愛いい甥っ子の頼みだ。

  最高にカッコいいヒーロースーツを作ってやるよ」


 これは何とも頼もしいオジサンだ。


 やっぱりオジサンに頼んで正解だった。


哲「…けど、このデザインをまんま使うと、

  さすがに会社にバレ兼ねないからな。

  あくまで素体として使って、

  大がかりなデザイン変更は必要になるだろう。


隆政「あ、じゃあさ…」


 僕は急に閃き、提案した。


隆政「シューティングスターを助ける…というか、

   一緒に戦うヒーローになりたいから、

   どこかに星形のデザインを取り入れたいな」


哲「お、なるほどな。

  じゃー胸部に…いや、

  そうすると…どこかのキャプテンと被るな」


隆政「キャプテン?」


哲「いや、こっちの話しだ。

  …そうだなー…元のデザインを誤魔化すためにも、

  頭部のバイザー部分がいいだろう。


 そう言ってオジサンはバイザーに手を触れた。


 すると、反応したのかバイザーが中央で割れて、

外側へとスライド可動した。


隆政「す、すご!?」


哲「あーそうだろう!

  20年前の代物とは思えない、

  超ハイスペックなやつだからな」


 バイザーが開いたことでロックが解除されたらしく、

オジサンはそのままヘルメット部を外した。


哲「こいつのハイテク装置は全て頭部のヘルメットに凝縮されている。

  データによれば赤外線、暗視装置等の各種機能に加え、

  衛星ともリンクしていたらしい。

  …一体、どんな奴がこんなハイテク装備を使っていたんだか…」


 中の状態を確認しつつも、関心したような呆れたような感じで呟いた。


哲「あと一説によると、脳波で色々とコントロールしていたそうだ」


隆政「脳波?」


哲「脳ってのは電気信号で動く、コンピューターのようなもんだ。

  その電気信号から一種のパルス信号が発せられていて、

  それを読み取ることができれば、脳波を用いて機械を動かすことも可能なんだ。

  このアーマーも脳波を使ってシステムや機能の操作の他、

  身体機能の調整までしていたらしい」


隆政「す…すごいね…。 

   ほんとにこれ、20年前の代物?」


哲「疑いたくなるよな、技術が進歩した今と比べたら。

  だけど、残されたデータには確かにそう書いてある」


隆政「じゃあ僕がこれを着る時も、脳波を使って制御するの?」


哲「うーん…既存のシステムは使うつもりだけど、

  あまり複雑過ぎても隆政の負担が大きくなりそうだし…」


隆政「いや、やるよ、僕。 

   シューティングスターと戦うヒーローになるんだから、

   それくらいの努力はしないと…!」


哲「…そうか、わかった。 

  そう言うところが、兄貴そっくりだよ」


隆政「オジサンに言われたくはないなー」


哲「お、言うじゃねえか?

  …よし、そこまで言うなら、やってやろうじゃないか」


 僕の熱意に応えるかのように、

オジサンもよりやる気を出してきた。


哲「ただし、完成までにはさすがに時間がかかるから、

  それだけは了承してくれ」


 さすがに今すぐ、とまでいかないのはご尤も。


 できるだけ完成は急いで欲しいけれどオジサンも働いてる身だから、

そんな何時間も作業に徹せれるわけでもない。


隆政「…わかった」


哲「とりあえず、1週間はみてくれ。 

  逐一進行状況とかは連絡しておくからよ」


隆政「うん、じゃあよろしくね」


哲「おう、わざわざ来てもらってすまんな」


隆政「いいよ、お願いしたのは僕の方なんだし」


 軽く挨拶を交わすと、作業の邪魔にならないよう引き上げることにした。


 …さて、一体どんなスーツができるのだろうか?


 今から楽しみで仕方が無い。

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