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6. 女王の決闘(1)

広大な草地、王国の兵訓練場では、二人の女が模擬決闘を始めようとしていた。



一人は、全身紺のタイツに身を包み、端正な顔立ちに真剣そのものの表情を浮かべている。衣服は単色の地味なものであっても、放たれるそのオーラは覆い隠せていない。むしろ、ドレス以上身体にフィットしたその服装は、彼女のメリハリのきいた女性的な健康美を強調していた。艶やかな髪をポニーテールにまとめたアリアは、まさに活力にあふれた18歳の美しき少女の姿であった。



相対するのは、24歳の若さで王国の親衛隊を率いる、エリート隊長のレカリアである。こちらは緋色のマントを着ていて、その内側には黒のボトムスに白のブラウスのようなものが見え隠れしている。印象的なのは、彼女の表情であった。驚いたことに、彼女は模擬ではあるが決闘を前にして、その相手であるアリアにほとんど微笑むような表情を見せているのだ。それは緊張した面持ちをしたアリアとは対照的だった。



そもそも、この模擬決闘を申し込んだのはレカリアの方であった。会議の後、彼女はおもむろに女王に決闘を持ちかけたのだ。彼女は理由を言わなかったが、アリアはこれを好機と捉えた。ここで兵士たちの前で自分の力を示すことができれば、部隊の信頼を勝ち取ることができるかもしれない。もしかしたら、レカリアも親衛隊の結束を固めようとしてくれているのではないか。そう考えて、アリアはその場で申し入れを受け入れた。



しかし、いざ決闘の場に立つと、レカリアの微笑は不気味でさえあった。彼女は何を目論んでいるのだろう。それを考える時間は、アリアにはなかった。



二人の決闘が行われることはすでに部隊に知れ渡っており、ほとんどの兵士が観戦に来ていた。この二人であれば名勝負が見られるに違いない。ほとんどの者はそう期待し、また確信していた。



この模擬決闘を取り仕切るのは、親衛隊の副隊長だ。


彼女が笛を吹いて開始の合図をする…



 ピイィッッッ!



決闘開始だ。



しかし、両者とも動く気配はない。アリアは相手の様子をじっと観察し、レカリアは相変わらず口元に微笑を浮かべていた。



相手方から仕掛けてくることはないと見たアリアは、腰の左右に据え付けた鞘から双剣を抜き、抜いた勢いそのままに、目にも止まらぬ速さで2本の剣先から2発魔法を放つ。



 バシュ、バシュ、



しかしそれを見たレカリアもとっさに杖を取り出し、盾状の魔法障壁を作り出してその攻撃を受け止める。彼女の反応速度もなかなかのものである。



観客はアリアが連続で2発の魔法を放ったことに驚いたが、彼女が手に持っているのが杖ではなく双剣だとわかると、アリアをよく知らなかった者の間でざわめきはますます大きくなった。



しかしそんな外野のざわめきもアリアの耳にはまったく入らない。彼女は手に馴染む双剣をもったことですっかり緊張がほぐれていた。



私は何を緊張していたんだ!模擬決闘なんて数えきれないほどやってきたじゃないか。確かに久しぶりだったけど、それで緊張するなんて私らしくもない!どうせ王国に私に勝てる者などいないのだからいつも通り楽しくやればいいだけじゃないか!



今度はアリアが笑みを浮かべる番だった。アリアがにっこりと笑いかけると、レカリアは驚いたのか恐怖したのか、少し引き攣った顔で笑おうとしてしくじった。



アリアが駆け出す…



 ダダダダダダッ…



アリアは素早く移動しながら途切れなく魔法攻撃を繰り出す。双剣から繰り出される魔法は上下左右から縦横無尽にレカリアを襲う。



レカリアはすぐに受け止めきれないと判断し、盾を人一人分ガードできるほどに大きく展開して、その攻撃にじっと耐える。しかしアリアの動きは速く、盾の向きに注意しなければ今にも脇腹から打ち込まれてもおかしくない状況である。アリアの攻撃が轟音をたてて巨大な盾を震わせる…



突然、レカリアの身体が横っ飛びに跳び、バランスを崩し地面に転がった。観客はついに魔法があたったか!とざわめいたが、次に後ろの壁からゴッと鈍い音が聞こえて、小さなナイフが壁際に落ちた。



アリアは魔法を撃ち続ける隙に暗殺用の小刀、匕首を投げたのだ。彼女が作り出した魔法盾は魔法しかガードできず、レカリアは身をかわすしかなかったのだ。一部の状況を理解した観客は、あれだけ素早く連続で魔法を繰り出すのさえ人間離れしているのに、その上匕首を投げる余裕まであるのかと驚愕した。



アリアはレカリアが匕首を避けたことに



 「よく見ているな。」



と感心したが、手加減はしない。すぐに倒れたレカリアの方へと駆ける…



 カキィィーン!



双剣と両手剣がけたたましい音をたてて衝突する。レカリアは苦しい体勢でありながらも、なんとかアリアの双剣を受け止めた。



 ピイィッッッ!



副隊長の笛が鳴る。仕切り直しの合図だ。


読んでいただきありがとうございます。

前回の真面目なシーンとはうってかわって今回は爽快アクション回です!

といっても今のところは一方的にいたぶってるだけですね…笑



ついにアリア、リナに続く3人目の名前が出てきましたね。

なんとなく察しがついているかもしれませんが、この小説では読者の混同を避けるために名前は最小限しか出しません。

逆に言えば名前が出るということはそれなりに重要な人物だと思ってください。



そしてついに魔法が登場しましたね!

今回はあまり説明がなかったのでわかりづらかったかもしれません。


明日スペシャルゲストをお招きして少し解説しようと思います。

お楽しみに!



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