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「ネカマの鈴屋さん」Ni:氏著

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　本作の主人公は、ゲームの世界に転移したプレイヤーで、ネカマは同じくプレーしていた仲間だ。つまりネカマはヒロインなのだ。

　序盤は特にラブコメ要素が強いので、転移した忍者プレイヤーとネカマのエルフの恋愛話？と思うかもしれないが、主人公がその世界で過ごし、関わるキャラクターが増えるとともに、巧妙に主人公が置かれた状況の「謎」が見え隠れする。

　私は挿絵やイメージイラストという形で本作に関わらせてもらっているが、作者が前書きでいう「さくっと楽しんで」読むには奥が深いトリッキーさと、魅力的なキャラクターに惹かれてファンアートを送りつけたのがきっかけである。

　絵描きで商業アシも経験した私は、読みながら脳内で漫画やアニメが展開する物語が好きなのだが、これも、元ネタ(ゲームとファンタジー)を知らなくても映像展開して楽しめる。自分が読者として楽しむ補完要素として絵を描かせてもらっている側面もあるが、ゲームに詳しい方は本文だけでも十分楽しめるだろう。

　難解すぎず、読みやすい文章と軽妙なやり取りが主体なので、話を追いながら自然とキャラの成長や変化が感じられるという、長編ならではの楽しみ方も提供してくれる。

　そして、鈴屋さんは本当に「ネカマ」なのか。この部分があるからこそ、ただのラブコメ・ハーレム展開にならないのだ。

　長編だからと序盤で諦めず、ぜひご一読を。そしてもしよろしければ、私以外の方が描いたファンアート含め、絵も併せてまるごと楽しんで下さい。