僕は大丈夫
掲載日:2020/02/01
「あれ?おかしいですね」
私はPCの画面を確認する。
「どうしたの?」
「先輩、ここ、計算が合わないんです」
「まさか」
先輩が私のパソコン画面を覗き込む。
その距離に心臓が跳ね、頬が火照る。
もう21時。
このフロアで、残っているのは私と先輩だけ。
実は会計担当が数日欠勤している。仕方なく残って代行中。
あくまで仕方なく、だ。
ここ重要!
決して先輩が残っているからという不純な動機ではない。
「あ、分かりました。ここだけ関数が抜け落ちてます」
「本当だ。よく気が付いたね」
「このイベント興味があったので。じゃあ、サクサク入力して帰りましょう!」
「出来る?」
「任せてください!」
褒められて心が躍る。
「あれ?余計に合わなくなっちゃった」
「え?」
「先輩、これ変です。お金の流れが…」
手が震える。
「まさか横領?会計の青田さんが無断欠勤なの、このせい?」
証拠は?
立ち上がり、彼女の机を探る。
そしてロッカーで見つける。
縛られ、冷たく動かなくなった彼女を。
此処にいたら殺される。
「先輩、逃げましょう!ここは危ない」
「僕は大丈夫だよ」
先輩は笑って私の首をネクタイで締め上げる。
薄れゆく意識の中、イベントの担当者が先輩だったのを思い出した。




