8/8
8秒目はもう来ない。
雨が止んだ。
指が七を数え終えたときだった。
最後まで私は消費者だった。8秒だけ毎日幸せを享受して、そのたびに彼を枯らしていった。
枯れきった巨人にはもう雨を降らすことはなく、その顔は枯れるまでみたことのなかった穏やかな表情だった。
残された私はわからなくなった。確かに通じ合えていたと思ったものが崩れたように思えた。
なぜこのような表情になっているのか。彼は私に何を求めたのか。わかればもっと返せたかもしれないのに。
私は徒花ではないと胸を張れたかもしれないのに。彼は何も語ることなく、私は何も知ることなく彼は、枯れてしまっていた
私はなにも残せない。私はなにも返せなかった。
けれどもし、かなうなら。彼が私に価値を見ていたなら私の価値がなんだったのかだけ、知りたいと思った。
夜明けの光が私と彼を少しだけ差す。それは夢からさめるような。悲しい色をしていた。
私がそれから8秒を数えることは永遠になかった。