サプライズ
無事挙式が終わり、披露宴会場に参列者を誘導した。長くこの仕事をしてきたから分かるが、参列者の顔ぶれを見れば新郎新婦がどんな人柄なのかわかる。誰しも心の底から祝福したい気持ちでいっぱいなのだろうと感じられた。翔はきっと俺が思っている以上に周りから愛されているのだろうと思った。
「翔、もうすぐ披露宴だぞ。スピーチの準備は大丈夫か?」
「もういい大人なんだから、大丈夫だよ。笑いも取りにいけるんだから」
「そうか、なら良いんだが、なんか心配でな」
緊張しているのは何故か俺の方だった。
いよいよ披露宴の時間となり、会場内からは
「新郎新婦入場です」
と聞こえた。
「よし、開けるぞ!」
眩いスポットライトが2人に向けられた。
<翔、おめでとう!>心の中で叫んだ。
すると、俺の後方から同僚の杉山から
「ここから先は私たちがエスコートします、御安心下さい」と言われた。
俺はキョトンとしてしまったが、すかさず近くにいた別のスタッフから、
「大滝さん、翔さんから席をご用意いただいています。あちらへ」
と案内されたが、その先は香澄の隣の席だった。
訳もわからず席に着くと、香澄が笑いながら言った。
「サプライズみたいね。翔が事前にスタッフの皆様と念入りに企画してたみたいよ。今日は何が起きるかわからないわね」
座った席にはメッセージカードが添えられていた。
<親愛なるマブダチ歩さんへ、いつも見守っていてくれてありがとう。今日一日だけで良いので僕の父親でいて下さい>