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辞める
結局俺は仕事を辞めた。辞めることに後悔はなかったが、上司の増田が
「辞めるとは思っとったけど、実際、そう言われると寂しいもんやな」
と力無さげに言った。
「何か次の仕事考えとるんか?」
「仕事は決めてないですけど、やりたいことは見つかりました」
「そら、ええこっちゃ。誰しもな、お前みたいにやりたいことやりたいねん。でもな、色んなこと言い訳にしてやらへんのよ。年齢がどうだの、体力がどうだの、家族がどうだのと。だから大滝、そのやりたいこと、誰になんて言われても自分で納得できるまでやりきってこい。俺にできることがあればなんでも言ってくれてええで」
増田は俺の背中をしっかりと押してくれた。