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アパート
葬儀が終わり数日が経った。香澄から遺品の整理を手伝って欲しいと誘いの電話があった。もちろん断る理由もなかったので、日にちを合わせて登戸のアパートへ直接待ち合わせをした。
登戸のアパートに着くと、すでに香澄と翔は色々と片付けを始めていた。レナの部屋らしく整理整頓が行き届いていた。
「歩さん、いらっしゃい。私たちも10分くらい前に来たところ。大人の男性がいればきっとすぐ終わるわね」
「へぇー、子供の男も役に立つところを見せますよ」
翔が膨れっ面をしている。
「まぁまぁ。ちゃっちゃとお片付けしましょう」
ほんの1時間くらいだろうか、あっという間に片付けは終わったが、最後にクローゼットの中だけが残った。
俺がクローゼットを勢いよく開けるとどさっとたくさんの封筒が落ちてきた。
「なんだろ、こんなにいっぱい」
よく見ると、俺宛の手紙だった。
おそらく数百はあるだろうか、出さずにいた手紙たちが部屋に飛び散っていた。
香澄はそれを見るなり、
「愛されてるわね、歩さん」
「そうだねぇ、ママ」