テスト
1月10日レナの容態は良くならない。やはりもうこのまま逝ってしまうのか不安でならなかった。
翔が学校帰りに病室へ来た。算数のテストの結果だろうか、レナに見せていた。
「ねぇ、レナちゃん、30点だったんだけどさ。分数って難しいね。分数って大人になっても使うの?」
レナは俺の方を指差した。
「使うか使わないかって言ったら、1/2と2/3,1/3ぐらいしか使わないかな」
「じぁなんで分数なんて勉強するの?」
「それはね、テストなんてのは努力と才能を、測ってるだけでそれ自体にはきっと意味はないんだよ。本当に自分の好きな勉強だったらそれに集中すれば良い。でもね、翔、テストは良い点数取らないとダメなんだ」
「何だか難しいんだね」
「どんなことでもさ、点数つけられちゃうんだよ。仕事でもそう、なんでもつけられちゃう。通信簿だってさ、生活態度でもABCつけられるだろ」
「うん、ぼくBだった」
「何かしらで点数や評価をしないといけない動物なんだよ、人間って」
「へぇ、じぁ歩くんは何点かな?」
「何のことで?」
「彼氏として」
突然なんて事を聞いてきやがると思った。
「ねぇ、レナちゃん、何点?」
翔の耳元で何かレナがささやいた。
翔は赤鉛筆と紙を渡した。
レナはその紙にいびつで大きな花マルを書いた。そしてそのとなりに
<よくできました>と添えられた。
「おめでとう、歩くん、合格です」
溢れ出る涙を翔に見られまいと、お菓子でも買ってくると言って売店に向かった。