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姉妹①
少しの沈黙が2人に流れた。
「今更って言われちゃうけど聞いてね。10年前の夜、歩と別れた日。実はね家にいたの。来るのわかってたから。何回もドアを開けようか迷った。でもどうしても開けられなかった。
私、あなたの子供諦められなかったの。だから歩に会ってしまったらそれがわかちゃうでしょ。だからね、開けられなかったの」
「えっ、レナ、何言ってるんだよ」
明らかに動揺している自分がいた。この1ヶ月子供のことなんて一切話しがなかったというのもあるが、俺自身突然すぎて言葉が見つからなかった。
「中絶の手術する日、お姉ちゃんに付いてきてもらった。手術に向かうその瞬間まで悩んだの。その時ね、お姉ちゃんが止めてくれたの。堕ろす決心がないならやめなさいって。生む勇気と堕ろす覚悟、どっちも無いなら、生む勇気だけはお姉ちゃんが半分持ってあげるって」
少しだけ声を震わせながらレナは語った。