天体観測①
「ねぇ歩、ワガママ言っていい?」突然レナが声をかけた。22時過ぎた頃、俺たち以外3人は就寝しているだろう。
「何なりとどうぞ!」
「天体観測しない?願い事ひとつだけ叶えて欲しいの」
この寒さでもし体調が悪化させてはまずいという気持ちもあったが、身体が空気に触れる場所を無くせば良いかと判断した。
「うん、行こう!でも15分だけだよ。あまり長い時間は身体に毒だから」
「ありがとう」にっこりとしたいつも通りのレナの笑顔があった。
レナも俺も何重にも服を重ね着した。
「雪だるまみたいだね」
レナはそう言いながら、最後にニット帽を頭に被った。
レナの家は高台に建っているが、天体観測がしやすいスポットは、家の裏手の山道を登る必要があった。
「もうひとつワガママ言って良い?」
「なんだよ?」
「おんぶして」
「お安い御用です」
レナを背負って玄関口に辿り着いた。外に出る時、車椅子を使うか悩んだが、このまま背負って行く事にした。
「歩、大丈夫?明日筋肉痛だよ」
「意外に力持ちですから。気にしなくてよし」
「ではお言葉に甘えます」
外に出ると思った以上に寒かったが、レナの両腕はしっかり俺の首元に回され、背中にはしっかりとレナの温もりを感じられた。
外は晴れて雲一つなかった。眼前に広がる星空を俺は忘れる事は無いだろう。