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家族②
この1ヶ月に起こったことを洗いざらい父親に伝えた。父親はただ憮然とした表情で俺をじっと見て、
「今時間をもらって休ませてもらえてるんだから、辞める必要ないだろ。お前には酷なことを言うかもしれないが、いずれその子は死んでしまう。それからのお前の人生はずっと長いんだぞ」
確かに父親の言う事はもっともだ。少しの沈黙が長いように感じた。
「お父さんの言う事は間違ってない。ただ、、」俺は躊躇した。
「いまはその女に全てを捧げようと思ってる」
2人の沈黙がそこから続いた。兄貴の子供達が騒がしく遊んでいる。その騒がしさがこの場の雰囲気をなんとか保っているような気がした。
2時間くらいが経っただろうか、そろそろ病院に向かいたいと思い、母親に今日は帰る旨を伝えた。玄関口で靴を履いている時、父親に呼び止められた。
「お前がこうやって長い時間休んでいるってことは銀行での出世は無くなってる事はわかってるな」