クリスマス②
純子が帰ると、もう17時を回っていた。流石にレナも疲れたようでよく寝ている。
一応クリスマスだからプレゼントを用意しておいた。プロポーズ用に買っておいた婚約指輪だ。あまりサプライズを与えるようなプレゼントの仕方が思いつかない。
寝ているレナに今の気持ちを率直に伝えようと思った。
「今、実は俺、凄い幸せなんだと思う。よくさ、幸せになりたいとか、幸せになりなさいって言うけどさ。別に幸せって得るものとか、待つものでもないんだと思う。なんて言ったらいいかな。幸せって気づくものなんだよ、きっと。ただそこにあることに。レナと一緒に居られる瞬間が俺にとっては幸せだってことに気づいたんだ」俺はレナの左手の薬指に指輪をはめた。その瞬間レナは軽く俺の手を握りしめた。
「なんだ、起きてたのか」少し照れてしまう自分に気付かされた。
「ありがとう、歩。指輪大切にします」
「ねぇ、結婚しない?」
「ダメよ。もうすぐ死んじゃうんだから」
「そんなこと言うなよ。もうレナを失いたくないんだ」
「じぁ退院したらね。婚姻届は2人で出しに行くものだから」
レナの大人の回答に俺はその後言葉が続かなかった。今この時が幸せな瞬間であると同時に、永遠の別れが近いことも感じていた。