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誓い
それから1週間程度会社を定時に上がり、レナの病室に行く生活をした。
別に何かするわけでもなくただレナの寝るベッドの横に座ってずっとレナを見つめていた。目覚める事はもうないのかもしれないが、レナの温もりだけは感じられた。
レナの担当医が毎日18時すぎに状況確認にやってくる。毎日「安定してます。目覚めるのを待ちましょう。」と定型句のように言う。俺自身覚悟はしていたが、もう一度レナの声が聞きたかった。
一方的な会話ではあるが、一緒に過ごした思い出を話すようにした。
「レナ、覚えてるかな。四谷から新宿まで歩いた道のり。靖国通りを真っ直ぐに3キロ。いつも1時間近く歩いてたね。何気ないあの時間が今では凄く懐かしい。今思えばなんであんなに歩いたんだろうなぁ。レナ、あんなに歩くから足太くなったんだよ。」
<それが原因じゃないわ>そう答えて欲しくて、でも目の前にいるレナは管に繋がれてただ息をしているにすぎなかった。
溢れ起きそうになる涙を拭き、
「俺は諦めない」と心に誓ったんだ。