離職
支店に着いた。ここ2日間まともに寝れていなかったせいか、異様に疲労がたまっていた。周りから「目の下のクマが凄い」「体調が悪そう」言われたが真実は話せなかった。
ふと思ったんだ。俺のすべきことはここで仕事することなのか。愛するアイツがいつ死ぬかわからない時に仕事しててよいのか。少なくともこの銀行に俺がいなくなっても変わりはいくらでもいる。何なら居なくなった方が喜ばれるくらいだ。だがレナは違う。俺を求めてくれているはずだ。微かな望みだが目覚めた瞬間に俺が側にいたい。そんな衝動に駆られていた。
いっそのこと、この銀行を辞めてしまおうと思った。今まで会社が求めてられてきたことをすべてやってきたし、それなりに結果も出してきたつもりだ。今辞めるという選択肢を選んだとしても、誰にも迷惑をかけたくない。ただレナに時間がないこともハッキリしていた。
上司に話をした。
「申し訳ありません。一身上の都合で辞めさせて頂きたいです。」迷いませず俺は上司の増田に伝えた。
「何かの冗談か、と言いたいところだが、しっかり考えた上での結論なら引き留めることはない。理由を聞かせてくれないか。」いつもながら冷静でクレバーな言い方だ。
「家族と同じくらい大切な人が病に侵されていて、少しでも側に居てやりたいと思ってます。」
「そうか、それなら仕事が嫌になったわけではないんだな。一旦有休消化してみないか?その後でもその判断は遅くないと思うが。」
特段辞めることを焦っているわけではないし、レナの元にいれることに間違いわけだから、俺は了承した。
今週1週間は定時で帰してもらい、来週から休みに入ることになった。