アイツの病気
「レナは3年前からガンに侵されてました。初めは乳がん。その後色んな場所に転移してた。ずっと戦ってたわ。あなたの事、ずっとレナから聞かされてた。多分あの子の人生の中で一番、いやきっと唯一深く愛していたんだと思う。いつもあなたの思い出を話していたわ。」
香澄はゆっくりとただしっかりと俺の方を見て語った。どうして言ってくれなかったんだろう。いや伝える義務もなければ、俺は知る権利もないのは重々分かっていた。
「レナの余命はとっくに過ぎてるの。もしかしたら、自分で自分の命を終わらそうと思ったのかもしれない。3日間の外泊許可を勝手にとって自分のアパートに戻ったみたいね。たぶん体力も限界だったろうに。」
救命士が言ってた手術痕、注射針の痕がレナの身体に生々しく残っていた。
「レナはきっとあなたに会いたかったのよ、最後に。でもね、、、、もしかしたら勇気がなかったのよ。」香澄は続けた。
「あなた方2人がどうして別れたか、私は知らない。決してレナは教えてくれなかった。今更聞こうとも思わないんだけど、歩さんはどう思ってるの?」
「どうって。。。私自身いつも心の何処かでレナを探してたんです。別れてからもずっと。」
「ありがとう。その気持ちを聞けただけで十分よ。今日は私があとは付いてます。明日会社でしょ?」
「はい、でも。。」
「今日はとにかく帰ってください。レナの父親もこちらへ向かってますし、鉢合わせすると面倒くさいでしょ」
いや、父親にも会って謝罪したいと思ったが、また明日来る約束をして一旦家路についた。