別れの予感
2007年春、レナも社会人になった。俺は変わらず東京で銀行マン、レナは都内有名ホテルで働く事になった。昔からレナはウエディングプランナーになりたかったので、そのホテルのブライダル部門を希望していた。
ホテル勤務と銀行員。お互いの休みも違えば、働く時間も違う。すれ違いが起きて当然の環境だった。また俺自身まだまだバンカーとしてまだまだ未熟だったし、仕事上の失敗も続き、休みなく、また深夜まで働く日々が続いた。レナと会わないことが普通になっていた。そしてそういう状況になっていることについてレナは何も言わなかった。
ただ2人で暗黙の決め事があった。
月に一度は会うということだ。
といってもレナの住む登戸のアパートで一夜を過ごす、ただそれだけのことなのだが。会わなかった1ヶ月お互いの仕事、生活でどんな事があったか、たわいも無い会話をして夜を過ごした。
ある日の夜、俺は一緒に住まないかと持ち掛けた事がある。レナは断らないだろうと思ったが、あっさり断られた。
「今はお互い仕事を覚えなきゃいけない時期だから、やめときましょ。一緒に住むのはいつだってできるじゃない。少しだけ我慢しましょ」もちろん俺も無理強するつもりもなかったし、このぐらいのタイミングで会う方が今はお互いにとって良いとさえ感じてた。