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生きて生きる  作者: ファンセバスチャンなおき
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アイツと俺の15年間

いつか思い出すのだろう、アイツといた日々のことを。今思えば、そこにあったのかもしれない。俺にとって生きることの意味と死ぬことの答えが。

2018年冬、もう10年も会ってない元カノからの連絡があった。携帯メールなんてこのご時世あまり見る習慣がなかったせいか、気がついたのは2日後だった。内容は「久しぶりに会って話したいことがある。」とのことだった。別れて10年以上も経つのに、そしてお互い別々の暮らしをしてるはずなのに、何を今更と軽い憤りはあったものの、心の何処か待っていたのかもしれない。いや、ずっと会いたかったんだ。10年経った今でも、、、、。。。。彼女への返信する内容はあれこれ考えたが、「わかった!いつにする?」だった。そのほうが俺らしいと思ったからだ。アイツと会う日が決まった。12月9日。その日が待ち遠しいという気持ちと、どんな顔して会えばいいんだと不安とある意味恐怖感とも思える複雑な気持ちが交錯した。

アイツと付き合い始めた時のこと、別れた日のこと。楽しかった時、辛かった時、もう終わりなんだと悟った日のことも。この10年アイツがどんな生活をし、誰と共に歩んできたんだろう。そしてアイツに別れてからの10年をどう伝えようか。少なくともまだ気持ちがアイツにあることを伝えるべきなのだろうか。それはアイツが幸せかどうかで決めよう。男というのはいつも弱く、やはり優柔不断なものだ。

12月9日アイツと会う日。会う場所に指定されたのは10年前もアイツが住んでたアパート。なぜ家なんだ?という気持ちもあったが、料理が得意だったアイツらしいといえばそれまでだが。何を持って行こうか、いつも一緒に行ったカフェのケーキを買って、約束した12時よりも10分早くアイツの家に着いた。少し早い気もするが、いつも予定時刻より早く来る俺だから、きっとそのこともわかっているだろうと思い、チャイムを鳴らした。

チャイムを鳴らしたが、アイツの応答はない。もう一度鳴らしても。ドアノブは何故か鍵が掛かっていなかったので、回して開けてみた。

目の前にあった光景は、首を吊ったアイツだった。訳もわからず逃げ出すことも出来ず、咄嗟にアイツの腰を抱え、なんとか首に掛かった縄を解いた。まだアイツの温もりが残ってるものの、息はない。とにかく救急車を呼び、それまで心臓マッサージを繰り返した。

信じられない出来事とこのままアイツに死んでもらっては困る、訳はなんだ、気持ちの整理もつかず、ただただ無力な自分と意識のないアイツの温もりだけを感じていた。

救急車が到着し、救急隊員にアイツを搬送してもらい、もちろん救急車に同乗した。AEDをつけ、心肺蘇生が繰り返された。俺はただ帰って来い、こっちの世界に帰って来い、声を掛け続けた。それはきっと俺のためにって身勝手な前置きを付け加えるべき感情なんだろう。



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