ソフィア奮闘
家畜ー
豚、牛、羊、鶏。
この時代にもちゃんと存在している
モンスターがはびこる世の中で、なぜ捕食されずに無事だったのか?
当然長い歴史の中では疫病もあったはずだ
食糧難だって
だが人と共に生き延びた
「っても、理由はちゃんとあるんだけどな」
「さすがですご主人……お兄ちゃん!」
「あのなアイ、無理なら呼び方変えてもいいんだぞ?」
「何のことですかお兄ちゃん」
まあいいか
食料プラントの地上部分ではかなりの頭数の家畜を飼育している
これもケンジ自身ががうまい飯を食べたいからやっている事であって、世のためにとかはまったく考えていない
「要はモンスターの弱肉強食って、魔力があるかないかなんだよ。具体的に言えば、魔石を持つモンスターほど美味いし、栄養となる」
「流石です」
「いやアイ、お前はちゃんとわかってんだろ……相づちはいいよ」
てへぺろとアイは舌を伸ばす
今は商人のソフィアと、すっかりシムシティしてる考古学者のケインに話しているのだ
「確かに、家畜は襲われたって話あまり聞かないですね」
ソフィアはふんふんとメモをとっている
「なかには例外もありますよ、たしか寄生するやつなんかは最後に食べてしまうと聞いた事があります」
ケインは色々知っていそうだな、後で聞いてみるかとケンジは思った
「まあ、牛、豚、鶏の大規模飼育についてはこれでもんだいないって事が分かってくれたと思う」
それでも、家畜は数を飼育しているとモンスターがイタズラしにきたりするらしいが、その原因はと言うと
「では何故人は襲われるんでしょう?魔石なんて無いのに」
そう、人は襲われる。そのついでに家畜も襲われたりするのだ
「人の細胞…まあ、体の中には魔石に似た物があるからだよ。だからこそ、魔力があり魔法が使えるんだよ。それにモンスターの肉だって食べていただろう?それも少なからず魔力を取り込んでいるしな」
ソフィアとケインは顔を見合わせる
それはそうだろう、魔力があることが当たり前の世代だし、一部のモンスターの肉は美味として食されている事が分かった
ただモンスターは養殖できないが…
「ひとまずは家畜の数を確保だな…まあ、何も産み育つまで待つのもアレだ、野良になっているのを集める様にしよう」
「ケンジさん、それは冒険者に依頼をだせます?商人としては採算を考えたいんですが」
健司は頷くと
「アイ、予測試算たのむわ。あとケインは後で畜産場の図面をおこそう。それでファンにも相談して建築に移ろうか」
[ソフィアのお仕事]
さて、ケンジから依頼された仕事は商会から冒険者ギルドへの依頼である
普段は魔石や貴重な植物の収集、荷馬車の護衛などを依頼している
冒険者ギルドとその街の商会は切っても切れない、持ちつ持たれつの間柄
「ほれ、マウェルのおっさん。依頼だよ」
ソフィアはふんぞり返って依頼をギルドに持ち込んだ
「なあ、ソフィアちゃんよ…最近思うんだが態度大きくなったよな?」
ギルドの筋肉こと、ギルマスのマウェルは無表情のまま言った
「あら、お客様よ?私、神様なの!いいじゃないですかぁ!これくらい」
「はあ、ま、接客してたらそんな客もいるわな」
ソフィアはどうやら酷い客にあたったらしいな
マウェルははあ、とため息をついて
筋肉マウェルはソフィアにお茶を用意した
「そうなのよ!やってらんねーのよ!こっちが下手にでればあの青だぬき!!」
「なんだ、グランの旦那と商談してきたのか」
グランとは最近この街にきた元貴族だ
元とは言え、グランは金持ちだ
この街に来た理由は追い出されたから、である
青だぬきと言うのはただグランが青の装飾品を好んでいることからつけたあだ名だ
「まあいいわ。これ、よろしくね」
ソフィアは紙を一枚マウェルに渡す
「おいおいマジか、また期限無制限の依頼かよ…しかもこんな人数…まったく、ケンジのせいでギルドは人手不足になっちまった」
いい事じゃないかとソフィアは思う
今までは仕事待ちの冒険者がギルドで昼間から酒をのんだりしていたのだ
それを思えば人手不足など喜んでいいじゃない
元々この街に居たのは冒険者や商人ばかりだった
それは防衛都市としての機能からそうなっていたし、食料事情もあった
しかしケンジが来てから一変する
まず食料事情は現在進行形で改善していっている
中央の食料生産地帯からの輸入に頼らなくなったのだ
それどころか、この街の食事はたいそう美味い
商人達は離れた街にいた家族を呼び寄せた
それが始まりだ
そして農業が盛んになりしかも人手不足
これで冒険者が家族を呼び寄せて、働き口もあり一気に人口が増えた
さらにケンジのこういった依頼で他の街の冒険者ギルドに応援をかけると、その冒険者が家族を呼び寄せた
人口が増えればさらに商人も増える
この繰り返しでこの街は一気に人口が増えたのだ
普通であれば住居が足りないなど問題が出るのだが、ケンジとケインがそれを一気に解消して行くのだからまるで砂漠が水を吸うように人口が爆発的に増えてしまったのだ
「そもそも安全だしな、ここは。防衛都市としての機能も申し分ないし、ただ北にあるこのシンジクがまさか最大の防衛都市になるとは思わなかったよ」
「私もよ、ウチの家族代々商人の家系なんだけど子供は防衛都市で修行させられるの知ってるわよね?もちろんここは防衛都市だから色々な需要はあるけど大して儲からない、忙しいだけの街…ところがよ、先週ついに五大都市の兄さんの売り上げを抜いたわ……」
「お、おいそれってあの天才の兄貴か!?こんな小さな街の売り上げがあの合計500万人はいる街の売り上げを抜くだと!?」
「シャレにならない、凄い金額よ…まあ今や調味料は五大都市どころか首都にまで届いているから当然なんだけどね」
たしかにここ最近のギルドの会計担当が1人から5人に増えていたりと大所帯になってきたと感じていたが、ソフィアの所はそれどころじゃ無さそうだった
「ま、とりあえずそれお願いしますね。後はいつものように連絡して」
それだけ言うと、出された茶を一気に飲み、ダンっと音を立ててコップを置いて出て行った
「アイツも疲れてんなぁ…」
筋肉マウェルは今受けた依頼をこなす人員要請を五大都市に向けて流すのだった
次回はケイン




