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11 言わなきゃならん。うごけ、彩穂
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言わなきゃならん。うごけ、彩穂
七月十九日 木曜日
放課後。
わたしは兵藤さんを屋上に呼び出した。
屋上へと続く階段を上がった。扉を無造作に押し開ける。そして辺りを見まわす。そこには・・・・・・いた。兵藤さんが。後ろ向きでフェンス越しに景色を見ているけど、間違いない。兵藤さんだ。わたしは近づいて声をかけた。彼女は振り向く。
「あら、藤堂さん話って何?」
「竜のボールペンって本当に戸田くんのなのかな」かんぱつ入れず、わたしはそう言った。彼女はびっくりして目を見開いた。そして言う。
「どうしてそのことを?」言えるわけがない。
「とにかく竜のボールペンは、戸田くんのものじゃない。誰か別の人のものよ。ちゃんと確かめてみることね。兵藤さん、あなた自分のこと、もっと大事にしなきゃだめなんだから、ね!」
早口に言って、その場を去った。彼女の反応を確かめることもせずに・・・・・・。