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スーパーの店員の水野さん  作者: 開墾路花壇
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10 こうみょう


こうみょう


 七月十八日 水曜日


 翌日の二子桜美川学園。

 昼休み―。

 わたしは、芦田あしださんのグループに混ぜって弁当を食べている。以前、兵藤さんと昼を食べたかったわたしは声をかけたが、残念ながらグループの何人かから断られてしまった。そして、もう一度、わたしは勇気を振り絞って他のグループに声をかけ、こうしてその恩恵を受けている。この学園で。わたしが、屋上で独りでなく、誰かとこうして喋りながら昼を共にするなんて一体誰が想像しただろう。その想像が実現したのだ。

「藤堂さんて何か変わったよね?」

「えっ、そうかな」

「そうだよ。だって朝だってわたしに、おはようっ、て、声かけてくるし・・・・・・」

「そうそう。数学の授業だって率先して手上げて答えちゃってるし」とは別の女子。遠藤えんどうさん。

「今だって、こうやって、お昼ご一緒してもいいかな、何て声かけてきてるしね」

 芦田さんは満面の笑みで言う。わたしは何だかうれしくなった。

「バスケなんて、やばくない。めっちゃリーダーシップ発揮してるし」

 再び芦田さんは言う。わたしは何と返してよいかわからず、ただ笑みを返す。

「あっ、わかった!好きな人ができたってやつでしょ。その人に振り向いてもらうために頑張るってやつ。ありゃありゃ、純情な乙女心が満開」

 遠藤さんの言葉にわたしも思わず声に出す。

「ちょっと、な、何を言い出すのよ」

 明らかにわたしは動揺を隠せないでいた。

「そうか。そういうことならわたしも応援しないとね」

 芦田さんが言う。何だかうれしいようなうれしくないようなわたしの感情。


 下校時、下駄箱で出会うクラスメートの女子たちに別れの挨拶をしながら、帰る方向が一緒だと言う芦田さんと一緒に家路に向かう。――下駄箱で擦れ違うクラスメートに挨拶をする自分。こうやって誰かと下校を共にする自分。今までだったらありえなかった日々をわたしは今、送っている。夏の新緑は、太陽の陽射しを一身に浴びてその葉を輝かせている。まるでこれから何かがはじまるんじゃないか。そんな予感を感じさせるまばゆい光。

 そう思って上を見上げた。とてもよくんだ清々(すがすが)しい青がそこには広がっていた。

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