5 七のレジェンド。そして、いのり
5 七のレジェンド。そして、いのり
七月七日 土曜日
わたしはこの日、母にコンビニに行ってくる、と告げて夜のメタセコイヤの木に向かう。そして……。もちろん人だかりは、すごい。恋する乙女たちの多きこととわたしは感心するばかり―。って感心してる場合ではない。わたしもその目的を遂行するためにきた一人だっつうのっ!
利き手の腕時計を見る。七時五分。よし、あと二分と七秒。わたしは、人だかりのなかに隙間を探す―。
よし、見つけた。所定の場所につく。そして目をつむる。
わたしの近所のスーパーには、イケメンのお兄さんがいる。わたしの名前は、藤堂 彩穂。十五歳。好きな食べ物は甘いもの全般。特にその中でもパイの実が好き。わたしにとって神お菓子だ。学校帰りに買って帰っては、家で食べていつも癒やされる。彼氏いない歴十五年。・・・・・・彼氏がほしい。でも思っていても叶うわけでもなく、何かが起きるわけでもなく・・・・・・。そんなわたしに、突然、奇跡が起きた。わたしは、今、恋をしている。運命を感じた。「仲よくなりたい。」「お近づきになりたい。」そのお相手とは、スーパーの店員の水野さん。わたしの好きな人。彼との出会いは、衝撃的でドラマチック。まさに運命だと、わたしはそのとき、そう思った。「あー、好きなんだってば!この気持ちおさえられない。どうか彼と結ばれますように。」
そう思って、わたしは、利き手のタオルを強く、ギュっとにぎり締めた。
それは、わたしの心からの胸の中での心底の、いのりだった。