16 ついに発覚!彼のヒ・ミ・ツ!
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ついに発覚!彼のヒ・ミ・ツ!
九月十日 月曜日
かれこれ二週間と二日ぶりの、スーパーだった。正直、彼と会うのはしんどいけれど・・・・・・。理由をつけるならば、パイの実を食べたかったから。なんだかいいわけがましくて嫌だけれど。
「はーあ」ため息混じりの、むなしさ混じりの、失恋混じりの、たくさんの思いが混じった息だった。わたしは、もの思いにふけって、ぼうっとしていた。まわりが見えていなかった。ドンっ。
「あ、いてっ」「あ、いたっ」
同時だった。
男は、急いでいたらしく、わたしと、ガチでぶつかった。
「痛いじゃんか、もう」
わたしが、ガチでキレて、男を見ると、目があった。
「大丈夫ですか?」
そこには、何とイケメンの、水野さん。・・・・・・どうしよう。何も思いつかないよ。ドキっとした。胸がしめつけられるくらいキュンとなった。
「はい。大丈夫です」
わたしがとっさにだした言葉だった。すると彼が、なぜかとまどいながら、こう言った。
「あっ、いつものパイの実の子じゃん!」
えっ。わたし、知られてるじゃん。意識されてるじゃん。うれしい!
「はい・・・・・・(はいっ、て何だ、わたし)」
「久しぶりだね」
「はい」
「最近、見かけなかったから」
「はい」
「どうしたのかなあーって」
「はい」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ってか、何かしゃべれよ、わたし。「はい」以外言えないのか!ってか、緊張して、言葉が出てこない・・・・・・。
「ワリい、おれ、急いでるんだ。またなっ!」
と、言って、急いで走り去っていった。背中にせおうギターケースが水野さんの、後ろ姿を隠す。しかも何故か、帰るところ。バイト早引き?早退?それは、いいとして、彼の、私服姿。ってか、制服姿!っつうか、ってか……わたしと同じ学園の制服じゃん。わたしと同じ学園生なんだ。えっ?・・・・・・えー!そうなのー。もしかしてわたしの学園のってことは、先輩。一個上?二個上?二年生?それとも三年生かな?それにしても・・・・・・「またなっ!」って・・・・・・。
「うれしいっつうの!」
スーパーの出入り口で、一人興奮して叫ぶわたしを、不思議そうに見る買い物客。わたしは、もちろん、そんなことなどお構いなし。ただの、店員と客からはじまったわたしたちの出会い。わたしは、ついに、めでたく、彼と知り合いになれたのである。
彼と話すきっかけを得たわたしは、あの日、拾ったタオルを彼に渡すことになる。そして彼は今、親戚の家に居候しているということを知ることになる。それはもちろん後日談ではあるが……。
九月十日 月曜日 くもり、でも、二人にとっては、のち晴れ。




